中国漁船の違法操業、海上民兵の役目も 韓国、国家安全保障の観点から対応

2024/04/15 更新: 2024/04/15

中国漁船は、南太平洋、韓国との係争地域である黄海で長年にわたり違法操業を行ってきた。 最近、尹錫悅(ユン・ソクヨル)韓国大統領は国家安全保障の観点から韓国海洋警察に中国漁船への強い対応を求めた。

中国の漁船は「海上民兵」として行動し、中国海軍や海洋警察と協力して世界の違法漁業のグレーゾーン戦術を駆使して領土紛争をあおることで、各国に警戒感を与えている。

韓国の尹錫悅大統領は9日、仁川で韓国海洋警察西海五島特別警察隊の3005哨戒艦に乗り込み、カニ漁の最盛期における中国漁船の違法操業の取締状況を視察した。中国漁船の違法操業に対しては、「韓国の水産資源を守るだけでなく、国家安全保障の観点からも強力に対応すべきだ」と強調した。

尹氏は今年3月中旬に行われた民生討論会で、漁民から「中国の漁船が韓国の沿岸近海に侵入し、魚を根こそぎ獲ってしまう」という訴えを受け、政府に対し厳しい監視と取り締まりを指示した。

韓国沿岸警備隊と海洋水産部は3月下旬、黄海の境界海域と済州島周辺の排他的経済水域(EEZ)で、違法に漁業を行ったとして中国漁船5隻を拿捕し、中国人船長1人を拘留し、船員5人を国外退去させ、さらに他の58隻の違法漁船を追放した。

韓国海洋警察庁によると、通常3月頃は1日平均で300隻以上の中国漁船が韓国の海域で違法に活動しているが、今回の取り締まりにより、その数は1日平均140隻程度にまで減少したという。

2023年、与党・国民の力の議員としての任期中、申源湜(シンウォンシク)氏は違法漁業に従事する中国漁船による被害は、韓国の水産資源を枯渇させる「だけ」の問題ではないと指摘した。 中国共産党は、主権争いのある南シナ海に漁船を派遣する「グレーゾーン戦略」を採用している。グレーゾーン戦略とは、長い時間をかけて敵を弱体化させること。

申氏は、「これらの漁船は海上民兵の一部であり、中国海軍や海洋警察の代わりにパトロールや情報収集活動を行っている」と述べた。中国漁船の違法操業に対する取締りの強化を求めた。

民兵、グレーゾーンで事を進め、多国を脅かす

米海軍大学校中国海事研究所(CMSI)の調査結果によると、「海上民兵」は独立した軍種ではなく、地方政府や省政府が設立した国防組織で、地方の管理下にあるが、その活動は軍の承認が必要だ。

「海上民兵」には二つのタイプがある。一つは多数存在する一般的な漁船隊で、時々中国共産党の海軍の仕事を行う。もう一つはフルタイムで活動する海上民兵で、専門性が高く、優れた装備を持ち、直接任務を遂行する。これらは海軍の補助艦隊として機能し、海上での先駆けとなる部隊で、その目的は漁業ではない。

韓国政府は、中国共産党支配下の中国漁船が違法漁業を通じて大量の水産資源を盗み続けている一方で、「グレーゾーン戦略」を用いて黄海を一歩一歩自国の内海に変えようとしていることを懸念しており、これを中共の「黄海プロジェクト」とみなしている。

2021年に米海軍大学のアンドリュー・エリクソン教授が発表した論文では、中国共産党がいわゆる「グレーゾーン戦略」や「低強度の海上権益争い」で海上民兵を活用していることが指摘された。これは、他の関係者が効果的に対応するのを阻止することを目的としている。中国共産党は、特に南シナ海での国際的な海上紛争において、自らの主張する領有権を前進させるためにこの手法を用いている。

中国メディアは、海上民兵がグレーゾーンでどのような役割を果たしているのかを自ら暴露している。 中国本土のポータルサイト「網易」の2018年の記事によると、海上民兵は中国共産党の職業海軍ではないものの、重要な役割を果たしている。名目上は漁民だが、彼らはさまざまな軍事訓練を受けており、中国共産党の海上警察と交流し、船舶の位置を監視・伝達し、海上情報を収集・報告し、後方支援戦線としての役割を果たすことができる高度な装備を備えている。

昨年、当時米海軍作戦部長だったジョン・リチャードソン上将は、中国の沈金龍中将に「米海軍は民兵漁船団を利用した南シナ海での中国の挑発に脅かされることはない」と警告し、同艦の攻撃を軍隊とみなして、対応すると述べた。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。
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