アメリカ社会 独裁者の国が支配するSNS

TikTok、国家安全保障とアメリカ憲法をめぐる新法案に挑む

2024/05/01 更新: 2024/05/01

 

バイデン米大統領がTikTokに対する新法案に署名し、売却または禁止の選択を迫る中、TikTokはアメリカ憲法修正第1条を根拠に反発している。議会は、国家安全保障の観点から新法案を守るために対策を進めているが、TikTokは法廷での戦いを宣言した。国家安全保障と憲法の権利が交錯するこの法的対決は、アメリカ議会と中国企業の激しい対立を予感させる。

4月24日、アメリカはTikTokに関する法案を迅速に成立させ、TikTokの中国の母体企業であるバイトダンスに売却を求め、それがなければアメリカ国内での活動を禁止する方針を示した。

しかし、バイデン大統領が法案に署名したその日に、TikTokは声明を発表し、新法案を「違憲」と批判し、「法廷で法的争いを行う」と述べた。

TikTokのCEOである周受資氏はビデオメッセージで、「法廷での権利を主張し続ける」と宣言し、アメリカにとどまる決意を示した。「私たちはどこにも行かない」と彼は言った。

アメリカ議会とTikTok、法廷での激しい戦いに備える

アメリカ議会は、迫り来る法廷での激しい戦いに備えている。法案に関する上院の投票が行われる数時間前に、法案推進のキーパーソンである2人の上院議員が壇上に立ち、17分間の質疑応答セッションを行った。彼らは、原告が提起する可能性のある異議に備え、TikTokがもたらす国家安全保障上のリスクを説明して、理解を求めた。

ワシントン州のマリア・カントウェル上院議員とバージニア州のマーク・ワーナー上院議員が行ったこのリハーサルは、TikTokを巡る法案に関する緊迫感を明らかにするものだった。

TikTokとアメリカ議会の論争の焦点は、新法案がアメリカ憲法修正第1条に違反しているかどうかである。この修正条項は、政府が言論の自由を制限する法律の制定を禁じていた。

1965年、アメリカ最高裁判所は、政府が外国製のプロパガンダを禁止できないとの判断を下す。この判断には中国共産党のプロパガンダも含まれる。1962年の「郵便サービス及び連邦職員給与法」の第305(a)条では、郵便局に対し、共産主義に関する政治的プロパガンダを含む郵便物の配達を保留し、受取人の要求があった場合にのみ配達することを義務付けていた。しかし「ラモント対郵政長官」の裁判で、郵便局がこの法律に基づき受取人に通知カードを送り、プロパガンダの受領意思を確認する行為は、最高裁によって憲法違反とされた。これは受取人に積極的な行動を求めることで、修正第1条で保障された権利を侵害していたからである。

そのため、TikTokが中国共産党のプロパガンダであるという証拠が多くあったとしても、最高裁がこれをTikTokの禁止理由として受け入れる可能性は低いと見られる。

しかし、一部の学者は、TikTokのプロパガンダがアメリカの国家安全保障に対して深刻な脅威をもたらしている場合、状況が変わるとの見解を示している。

TikTokの禁止は国家安全保障に関連している

ミネソタ大学の法学副教授アラン・Z・ローゼンスタイン氏によると、政府は裁判所でTikTokの禁止が、国家の安全保障に不可欠だと主張する見込みが高いという。中国共産党はアメリカにとって敵対的存在であり、将来的にはTikTokを含むメディアやインターネットを支配し、アメリカの政治に影響を与えるため、議会はこれを防ぐために、迅速な対応が必要だと言われている。

中国共産党にとって、TikTokは特に重要なプロパガンダツールである。

TikTokは2018年にアメリカ市場へ進出し、2020年から2022年にかけてアメリカ国内および世界で最もダウンロードされたアプリの1つである。現在、約1億7千万人のアメリカ人がTikTokを使用しており、これはアメリカの人口のほぼ半分に相当する。

アメリカ人は音楽の嗜好や映画選び、信じる思想、使用する製品、支持する著名人など、日常生活の様々な側面でTikTokの影響を受けている。

さらに、バイデン大統領の選挙キャンペーンチームも、今年の2月からTikTokを活用し始めている。

中国共産党のTikTokを通じたアメリカ政治への影響

2020年6月20日、トランプ大統領の再選運動が活発に行われている中、TikTokが仕掛けた「罠」に陥る出来事があった。その日、オクラホマ州タルサで予定されていた集会について、キャンペーンチームは事前に100万人がチケットを予約したと報告していた。しかし実際にはたった6200人の参加者で、この出来事はトランプの選挙キャンペーンの士気に大打撃を与えた。

この失敗はTikTokユーザーが、数十万枚のトランプの集会チケットを予約し、わざと参加しなかったことが原因だった。

2年が経過し、アメリカの中間選挙が近づくと、TikTokは新たな動きを見せ、「選挙センター」という新機能を開始した。この機能により、利用者は州ごとの選挙情報にアクセスし、投票登録の方法や郵便による投票の手順、地元の投票場所の見つけ方などの情報を入手できる。TikTokは、国家公務員協会(NASS)、アメリカ政治百科事典(Ballotpedia)、アメリカ聴覚障害民主センター、連邦投票支援プログラム、キャンパス投票プロジェクトなど、信頼できる複数の団体と提携し、より多くの有権者の関心を集めることを狙った。

TikTokは「選挙センター」の宣伝において、ユーザーが45以上の言語(英語やスペイン語を含む)で提供される信頼性のある情報とソースに繋がると明言した。この大胆な取り組みは、アメリカ政治界に大きな波紋を投じた。

その年の8月、アメリカ下院議員ジム・バンクス氏とマイケル・ワルツ氏は、外国政治干渉を監視する責任者ジェフリー・ウィッチマン宛に、情報機関に手紙を送った。

その手紙の中で「TikTokは中国の企業バイトダンスの海外子会社であり、その取締役会には中国共産党のメンバーがいる。このアプリはアメリカの政治的発言を監視し、数百万のアメリカ人有権者のデータを保持している可能性がある」と指摘した。

さらに手紙には、「新設された『Election Center』が中国共産党という我々の最大の敵に、前例のない政治的監視と選挙介入の手段を与える恐れがある」とも記載している。

今年3月、アメリカ国家情報長官室が年次脅威評価報告を発表し、中国共産党が人気のアプリTikTokを通じて、最近のアメリカ選挙に影響を与えようと試みた。報告書によれば、「中国の宣伝機関が運営するTikTokアカウントが、2022年のアメリカ中間選挙において、民主党と共和党の両方の候補者を標的にしていた」としている。

さらに、中国共産党が2024年のアメリカ大統領選挙に何らかの影響を与えようとする可能性についても警告している。その背景には、中国共産党が自らの批判者を排斥し、アメリカの社会的な亀裂を拡大させたいという意図がある。

2023年9月にアメリカ国務省が発表した報告書によれば、中国共産党は、欺まんや脅迫などを用いて国際的な情報環境に影響を与え、世界の情報体系を変革しようとしている。各国が、自国の経済や安全保障において中国の利益に沿うような決定を下すよう促している。

ローゼンスタイン氏は、TikTokに関する法案について政府が行う主張の中で、「国家安全保障の脅威」が最高裁判所の注目を集める可能性は高いと述べた。

ペンシルベニア大学のグス・ハーウィッツ上級研究員は、TikTokを巡る法的争いが、最高裁判所に持ち込まれることもあり得ると見ており、現時点での最高裁判所の保守派と自由派の力関係を踏まえると、法案が支持される見込みは強いと考えている。

ハーウィッツ氏は、「国家安全はしばしば最終的な裁定に大きな影響を与える」と指摘する。

 

江楓
関連特集: アメリカ社会