中国経済の後退に伴い、地方政府は借金問題に直面し、給与の未払いや削減が中国で広がっている状況だ。各地の公務員は報道機関に対し、給与が減額されたり、支払いが滞ったりしている実態や、退職者の年金が遅配されたり、減額されている事実を訴えている。ネット上では、「公務員の安定した仕事(鉄の飯碗)は名ばかりで、実際には中身が伴っていない」と皮肉交じりにコメントされている。
北京の学者、吳梓境(ごしきょう)氏:「公務員の仕事は安定しているとされているが、実際には『茶碗はあってもご飯がない』というのが現実だ。多くの地方で公務員の給与が支払われていないのだ」
中国の公務員は通常、どのような状況下でも、安定した収入が保証されていると考えられている。しかし、地方政府の財政支出の約10%が、公務員の給与に充てられており、地域によってその状況は異なる。不動産業界の連鎖的な倒産が、地方政府の財政を圧迫し、公務員の給与削減や未払いが日常化しているのだ。
北京の公務員、吳氏:「中国経済は給与未払いが、顕著な問題となっており、国有企業では未払いや即時解雇が厳しい状況だ。地方政府も給与を支払えず、公務員の給与も滞っている」
河南省の公務員である楊氏は、地方政府が公務員の給与を支払わないだけでなく、一般市民からも、収入を奪っていると述べた。
河南の公務員、楊氏:「地域の公共サービス、バス会社、その他公的機関の資金支払いに遅れが生じている。資金不足のため、罰金を増額し、市民からは、強制的に徴収している状況だ」
近年、中国各地で不正な料金や罰金を徴収して、収入を増やす事例が絶えない。今年の第1四半期には、中共による罰金収入が1兆元に達した。
財政危機に対応するため、江蘇省、上海市、浙江省、福建省、深圳市などでは公務員の給与が昨年削減され、一般的に15~20%の範囲のカットが行われた。
中国の財経分野で活躍する女性ライブストリーマー(動画の生配信で収益を得ている人):「皆さんもご存知の通り、高収入とされる金融業界でも給与カットが進んでおり、減少幅は大きく、最大で40%にも達している」
最近発表された証券会社25社の2023年度の年次報告によると、大手証券会社の給与水準が全般にわたって下降していることが明らかになった。中でも「中金公司」の従業員は、平均年収が40%減少したと報告されている。
甘粛省蘭州市の公務員、陳さん:「経済の先行きが不透明で、ショッピングモールは閑散としており、多くの店舗が閉店に追い込まれた。全体的に見ても、状況は決して良いとは言えない。公務員は給料の支払いが遅れることが多く、時には2〜3か月も待たされることがある。私の家庭は比較的経済的に恵まれているが、家計に苦しむ家庭や、住宅ローンや自動車ローンを抱える家庭にとっては、非常に厳しい状況だ」
中国経済の減速に伴い、地方政府は債務危機に直面しており、未払いや給与削減の問題が各業界に広がっている。
福建省福州市の警備員、溫さん:「最近、街中は静かで、業界を問わず給料の支払いが遅れている。給料を受け取りに行った際には、銀行からお金を引き出せない事態に直面している。銀行も資金が不足しているのだ。現在、多くの人々が失業し、自宅で過ごしながら、限られた予算で何とか生活をやりくりしている」
経済危機のため、多くの中国の若者たちが節約を余儀なくされ、「貧乏人のセットメニュー」を選んだり、ディスカウントストアで買い物をしたり、余った食品を詰め合わせた「サプライズボックス」を探したりしている。
若者だけでなく、退職者や高齢者も同様に苦境に立たされている。昨年以降、退職した教員や医師の年金が削減されたり、支払いが遅れるケースが、各地で起こっている。
遼寧省瀋陽市の退職者、李さん:「現在の中国の経済状況は非常に厳しく、大きなシステムも機能不全に陥っている。地方政府は資金不足で、お金の支払いが数か月遅れており、2か月以上の遅延が発生している。私たち退職者は、手持ちの資金がほとんどなく、わずか数千元しかないのに、退職者に対する手当も支払わず、私たちは生きるために借金をしている。国内の状況はどこも似たようなもので、資金がどこに消えたのか全く分からない。莫大な資金を海外に支援している一方で、国民の給与の支払いが滞っている。政府部門の人々は仕事をしておらず、市民が彼らを支えているが、どうにもできない状況だ」
中共の統計によれば、体制内の公務員は約700万人、準公務員は約1300万人、事業編成の人員は約3100万人、臨時職員は約4000万人にのぼり、合計で8000万人を超えている。
瀋陽市の退職者、徐さん:「現在、多くの都市では、体制内の職員への給与支払いが滞っている。私たちのコミュニティは体制内の公務員ではないが、昨年11月時点で2か月分の給与が未払いであると聞いている。瀋陽では、個人経営の店舗が全て外部に賃貸され、結果として全店が閉店した」
徐さんによると、経済状況が悪化する中で、彼らの医療保険の給付も大幅に削減されたそうだ。
徐さんはさらに:「私たちの医療保険カードは、通常の体制内労働者や企業員のものと同じで、以前は毎月260元の給付があったが、現在は80元にまで減額された。薬局の薬の価格が高騰しており、軽い病気でも病院に行けず、薬を購入するのが精一杯だ。病院に行けば、800元や1000元がなければ、治療を受けられない状況だ」
最後に、徐さんは「普通の公務員も生活が厳しく、軽い病気は我慢し、重い病気になると、死を待つしかない状況だ。どうしようもないのだ」と悲痛な声をあげた。
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