米政府のEV普及政策で最も得をするのは中国共産党

2024/05/12 更新: 2024/06/28

元第8空軍司令官のE・G・バック・シューラー氏は、「Defense post」に掲載された最近の記事で、米国の自動車メーカーにガソリン車の販売を中止させ、電気自動車(EV)への切り替えを強制することを目的としたEPAの新しい排ガス規制は、米国を中国の言いなりにするだろう」と警告した。

シューラー退役中将はまったく正しい。 中国はEVの製造に必要な原材料と製造品のほとんどを支配している。 中国はまた、バイデン政権がEVに必要な電力を供給する重要な再生可能エネルギーとして大々的に推進しているソーラーパネルの世界市場も支配している。

中国がレアアースの採掘と精製、そして防衛に不可欠なレアアース永久磁石の製造を「支配」しているように、米国下院エネルギー・商業委員会は、「中国が電気自動車のサプライチェーンの90%を支配している」とし、「電気自動車を市場の主流にしようとする動きは、事実上、アメリカの自動車の未来への鍵を中国に渡すことになる」と報告した。

当然のことながら、中国は温室効果ガス排出を抑制するために西側諸国が取った効果性のない対策に注目している。 狡猾にも、電気自動車関連の製造業に巨額の政府補助投資を行い、電気自動車分野の取り組みにおいて世界のリーダーとなっている。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、バイデン大統領の新しい大統領令は、2030年までにアメリカの自動車販売台数の50%を電気自動車にするよう求めるもので、中国共産党の思うつぼだという。

これらの要求は非現実的で達成不可能であるだけでなく、それを実現しようとすることはわが国経済にとって災難であり、中国が名目GDPで大きく前進し、購買力平価GDPでリードを広げることにつながる。 こうした要求の正当性は、科学的というよりもイデオロギー的なものであるようだ。

バイデン大統領の新しい大統領令は、電気自動車の生産でアメリカのメーカーがすでに失っている数十億ドルに、年間数百億ドルを上乗せすることになる。

例えば、フォード・モーターは最近、2024年第1四半期に13億ドル(約2025億750万円)の損失を出し、通年では電気自動車販売で50億ドル(約7788億7500万 円)の損失を出す見込みであることを明らかにした。 バイデン政権の政策では、補助金なしの電気自動車の生産と販売を短期・中期的に採算に乗せることができないため、アメリカの自動車メーカーは、このような気分は良いが実際には悲惨な義務付けが続く限り、年間数百億ドルの損失を出し続けることになる。

存在しない気候変動の緊急事態に対応するために経済を麻痺させ、さらに有害なことに、電気自動車は結局、環境にやさしくない。

実のところ、バッテリーの小さいハイブリッド車とは異なり、電気自動車のバッテリーはかさばり、製造時に多くの二酸化炭素を発生させるため、それにおける二酸化炭素排出量は、ほとんどのガソリン車よりも大きくなる。バッテリーを作る際にコバルトを採掘するために児童労働などの手段を使うことによる環境破壊を考えれば、かさばり、危険性の高い電気自動車は、通常のガソリン車よりもはるかに環境に有害であることは明らかだ。

電気自動車は同じ大きさのガソリン車より30%重く、道路へのダメージが大きく、その維持に多くのエネルギーを必要とする。 電気自動車はタイヤの消耗が早く、大気中に多くの有害物質を排出するため、二酸化炭素排出量も多くなる。

電気自動車を導入するには、発電量を大幅に増やす必要がある。 カリフォルニア州だけでも、2035年までに電気自動車100%を達成するには、発電量を3倍に増やす必要があるとCALMattersは見積もっている。 この発電量を「再生可能エネルギー」で賄うとすれば、カリフォルニア州は過去10年間の5倍のペースで風力発電と太陽光発電を導入しなければならないことになる。

再生可能エネルギーには、送電網に接続するための高価な送電線と、環境に優しい天然ガスや原子力発電所の信頼性に匹敵する大きなバッテリーパックが必要だ。

さらに、有毒なソーラーパネルや風車のブレード、使用済みバッテリーの廃棄やリサイクルにかかるコストと労力も加わると、「クリーンな自動車とトラック」を推進するバイデン大統領の大統領令は、まさに汚れたものに見えてくる。

同時にバイデン政権は、すでに非現実的な目標を達成することをさらに難しくするために、中国製のバッテリー部品を使用する米国車への補助金を削減することを 「さりげなく 」提案しているようだ。

意思と資金があるとして、電気自動車の主要部品の代替ルートと供給源を開発するには、10年以上かかる可能性がある。 加えて、中国はメキシコにEV関連工場を建設中であり、バイデン政策が中国共産党政権による米国車向けEV部品の支配を制限する影響を受けることはないだろう。

中国共産党の脅威に対抗するため、武力による威嚇や国防費の増額を求めるパニック的な声があふれているのに、なぜバイデン大統領は、アメリカの消費者に欲しくもない車を買わせることで、中国共産党政権を助け、国家安全保障を損なうような政策をとるのだろうか。

関連特集: アメリカ社会