コロナウイルス 12月11日のPREP法改正により、コロナワクチン関連の傷被害に対する責任追及をめぐる議論が巻き起こっている。

バイデン政権 コロナワクチン関係者の免責措置を2029年に延長

2024/12/17 更新: 2024/12/17

バイデン政権は、新型コロナウイルスワクチン製造者、医療提供者や関係者に対する免責措置を2029年まで延長した。この決定は、ワクチンによる健康被害の責任問題や公衆衛生政策のあり方をめぐる議論を引き起こした。一方で、ワワクチンや公衆衛生対策に関わる関係者には、大半の訴訟からの免責が保証される。

この5年間の延長は、12月11日に米保健福祉省(HHS)のザビエル・ベセラ長官が署名し、パンデミック中に当時のトランプ政権下で初めて導入された政策を継続するものとなった。公衆衛生準備および緊急事態対応法では、過去最長級の免責措置とされている。支持者はこの措置がイノベーション促進と公衆衛生の備えに必要だと主張する一方、批判者はワクチン被害者が救済を受ける手段を失うと反発しており、今後の政権が大幅な政策変更を実施する能力を制限する可能性も指摘している。

2023年5月11日にコロナの公衆衛生緊急事態は公式に終了したが、新たな宣言では「将来的な公衆衛生緊急事態の確実なリスク」が存在すると警告している。

PREP法の概要と適用範囲

公衆緊急事態準備法 (PREP法)は2005年に制定され、公衆衛生上の緊急事態において、ワクチンや治療薬などの医療対策の迅速な開発と供給を促進するため、関係者に対する免責措置を提供するものだ。こうした保護がなければ、製造者や提供者は予測不可能な副作用をめぐる訴訟を恐れ、ワクチンや治療薬の生産・供給に慎重にならざるを得ない。

この法律は2020年3月、新型コロナウイルスに対して初めて発動され、ワクチン、抗ウイルス治療薬、診断ツール、防護機器などが対象とされた。

パンデミック中のPREP法の改正により、その適用範囲は遠隔医療提供者や薬剤師技術者にも拡大され、緊急時におけるワクチンの迅速な供給を可能にした。米国薬剤師協会によると、こうした変更により、地域の薬局が唯一の医療提供者となることが多い医療過疎地域や地方でのアクセス改善が進んだという。アメリカ国民の90%以上が、自宅から5マイル(1マイルは、約1.6キロメートル)以内に薬局があるとされる。

米国薬剤師協会のマイケル・ホーグ最高経営責任者(CEO)はプレスリリースで「HHSの今回の必要な措置は、特に地方や医療サービスが不足する地域において、人命を救い、医療コストを削減するだろう」と述べている。

ユタ大学法学教授のダニエル・アーロン博士は、ワクチンは依然として進化しており、PREP法の延長は論理的な措置だと指摘する。同氏は、「ワクチンは他の医薬品に比べて開発コストが高い一方で、長期的な利益が見込めないことが多い。そのため、公衆衛生緊急事態に必要な製品に対して、過度な責任を課すべきではない」と述べている。

免責措置に対する懸念

PREP法の支持者は、この法律が医療製品のイノベーション促進と公衆衛生の保護に欠かせないと主張している。しかし、批判者は、その広範な免責措置が「ワクチンや医療対策で被害を受けた人々の救済手段を奪っている」と懸念を示す。

ワクチン被害者を支援する弁護士のアーロン・シリ氏は、「PREP法は、製造者が製品による健康被害の責任を顧みずに市場に出す要因となる」と指摘する。

同氏は大紀元へのメールで「健康被害を引き起こす可能性がある製品に対し、法的責任免除が必要だという考え方自体が非合理的だ。安全でない製品を急いで市場に出すことは、結果的に多くの人々を危険にさらす」と述べた。

免責措置の延長は、コロナワクチンの安全性について繰り返し保証されてきた現状とも矛盾するという指摘もある。「4年以上もコロナワクチンは『安全だ』と繰り返されているのに、なぜ免責が今も必要なのか?」とシリ氏は疑問を呈した。

PREP法の改革と廃止を求める動き

PREP法に対する抜本的な改革、もしくは廃止を求める声が高まっている。3月5日、テキサス州のチップ・ロイ下院議員は「LIABLE法案(ワクチン被害者に訴訟の権利を与える法案)」を提出した。この法案が成立すれば、コロナワクチン製造者への免責措置が撤廃され、被害を受けた人々がファイザーやモデルナなどの企業を訴えることが可能になる。

ロイ議員は「多くの人々がワクチンで健康被害を受けながら、救済の手が差し伸べられていない。実際、約700億回のワクチン接種が行われた中で、被害が認定されて補償された件数はわずか11件だ。アメリカ国民には医療の自由を守る正義が必要であり、健康被害を受けた人々には適切な賠償が求められる」と述べた。

シリ氏もまたPREP法の廃止を主張し、「PREP法は完全に廃止すべきだ。それはもう何の価値も提供していない」と述べる。また、「安全で効果的な医療製品を開発する仕組みを整えれば、そもそも免責措置は必要ない」と提案している。

第12次修正のタイミングに対する疑問

免責措置の延長は2025年1月1日に発効する予定だ。このタイミングは、次期大統領政権の発足直前であり、次の政権が新たな方針を打ち出す柔軟性を制限する可能性がある。

特に、次期政権の厚生長官をめぐる動きと重なっている。ケネディ・ジュニア氏は、ワクチン安全性の監視強化や製造者に対する法的責任の縮小を長年訴えてきた。こうした姿勢は、今回の免責措置の延長と対立する可能性が高い。

免責措置が2029年まで延長されることで、政治的不確実性が高まる中でも公衆衛生の安定が優先される形となった。しかし、次期政権が免責措置の方針を見直す余地は限られており、短期的には政策変更が困難になる可能性がある。

理論上、厚生長官はこの措置を修正または撤回することができるものの、今回の延長のタイミングが新政権の柔軟な対応を妨げる可能性が指摘されている。

ワクチン被害補償制度における構造的な問題

PREP法による免責措置の延長は、米国のワクチン被害補償制度が抱える継続的な課題を浮き彫りにしている。特にコロナワクチンによる副反応を経験した人々にとって、その影響は深刻だ。

ユタ州のブリアン・ドレッセンさんにとって、今回の免責措置の延長は、正義や補償を求める人々の苦しみを軽視するものに感じられる。同氏はアストラゼネカのコロナワクチン治験に参加後、重度の神経系合併症を発症した。現在はワクチン被害者の支援活動に取り組んでいる。ドレッセンさんは、今回の免責措置の延長について次のように語る。
「私たちは何年も保健福祉省に、コロナワクチンで被害を受けた人々への救済を求めてきた。今の政権が示したメッセージは明確だ。『ワクチンで被害を受けても、私たちは助けない』と」

ベセラ厚生長官は、ワクチン被害者救済の主要な手段として「対策被害補償プログラム(CICP)」を挙げている。この制度はPREP法の下で設立され、ワクチンや医療対策で健康被害を受けた人々に救済の道を提供するものとされている。

しかし、批判者はCICPが本来の目的を果たしていないと主張している。ワクチン被害者を支援するアーロン・シリ弁護士は、「CICPは被害者を十分に救済しない不正なシステムだ」と非難した。

CICPの問題点

  • 低い補償率と複雑な申請手続き
    CICPは申請手続きが煩雑で、多くの人にとって利用しづらい制度となっている。
    2023年8月1日時点で、保健資源サービス局(HRSA)は1万226件の申請が審査待ちまたは審査中と報告しており、新型コロナウイルス特別委員会の報告では「このバックログを解消するには大規模な改革がなければ約10年かかる」と指摘されている。
  • 補償実績の低さ
    React19の調査によると、CICPには約1万4千件の申請が提出されているが、補償が認定されたのはわずか48件であり、総額は100万ドル未満にとどまっている。

ドレッセンさんが率いるReact19は、こうした制度的課題に直面する被害者の支援を行っている。「政府のプログラムはただのごまかしだ。同氏は保健福祉省は消費者を守るのではなく、製薬会社と企業の利益を保護することに注力している」と批判した。

React19は「政府よりもはるかに効果的に被害者を支援できる」と主張している。

準備と説明責任のバランス

PREP法の免責措置をめぐる議論は、公衆衛生への備えと個々の責任追及のバランスをどのように取るかという難題を浮き彫りにしている。

一部の議員は、CICPによる補償請求をより包括的な「国家ワクチン被害補償プログラム(VICP)」へ移行することを提案している。専門家によると、この移行により透明性が高まり、補償額の増額や法的枠組みの明確化が期待できるという。新型コロナ特別委員会の報告書で、ブラッド・ウェンストラップ下院議員は「CICPはVICPよりも適用範囲が狭く、ワクチンを含む『対象対策』に対してのみ補償を提供している」と述べた。

さらに、React19のような支援団体は、コロナワクチンによって健康被害を受けた人々への政府支援拡充を求め続けており、公平性と説明責任を優先するプログラムの必要性を強調している。

 

10年にわたる執筆キャリアを持つベテラン看護師。ミドルべリー大学とジョンズ・ホプキンス大学を卒業。専門知識を取り入れたインパクトのある記事を執筆している。バーモント州在住。3人の子を持つ親でもある。
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