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米政府 中国製ルーターの販売禁止を検討

2024/12/20 更新: 2024/12/20

アメリカ政府は、国家安全を理由に中国製のTP-Linkルーター販売禁止を検討している。政府は、これらのルーターに安全上の脆弱性があり、中国共産党のハッカーがネットワーク攻撃に利用する恐れがあると懸念しているという。

調査の背景

アメリカの商務省、国防省、司法省の調査員がTP-Linkに対する調査を開始し、来年にはアメリカでのTP-Linkルーターの販売が禁止される可能性がある。

この調査は8月に、米議会下院の中国共産党問題特別委員会の共同議長2人から送られた書簡に応じて始まった。議員たちは、TP-Linkのアメリカ市場での主導的地位が引き起こす「明らかな国家安全問題」を調査するよう関連機関に求めた。

セキュリティ上の脆弱性

TP-Linkのルーターには、頻繁にセキュリティ上の脆弱性が存在し、中国共産党政府が支援するハッカーが利用する可能性が指摘されている。特に、中国のAPTグループ「Volt Typhoon(ボルトタイフーン)」が米国の重要インフラに対するサイバー攻撃を、ホームルーターやオフィスルーターを介して行っていることが明らかになった。

2024年11月には、TP-Linkの複数のルーター製品に影響を及ぼす深刻な脆弱性(CVE-2024-53375)が発見され、リモートコード実行が可能になる可能性がある。この脆弱性は、HomeShield機能を有効にしていても悪用が可能である。

市場での影響

TP-Linkは、アメリカの家庭や中小企業のルーターマーケットで約65%のシェアを占めており、Amazon.comではトップブランドとして知られる。また、アメリカ国防省や他の連邦政府機関にもネットワーク通信サービスを提供している。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック中、人々が自宅で働く状況で、TP-Linkはアメリカの家庭と中小企業のルーターマーケットシェアを2019年の約20%から今年の約65%に引き上げた。

価格と独占の疑い

TP-Linkのルーターは通常、競合他社の製品よりも半分以上安いとされており、司法省はこれらの価格差が連邦法に違反しているかどうかを調査している。TP-Linkの広報担当者は、同社はコストを下回る価格で製品を販売していないとし、アメリカの法律、特に反独占法を遵守していることを強調した。

政府の対応

アメリカ商務省の審査は、トランプ政権の最初の任期中に設立された、情報および通信技術サービス事務所が主導している。この事務所は、国家安全上の理由から特定の国の企業が、アメリカに技術を販売することを禁止する権限を持つ。初回の措置として、この事務所は6月にロシアのソフトウェア会社カバースキーがアメリカで製品を販売することを禁止した。

バイデン政権は、最近の中国共産党に関連する一連のネットワーク攻撃に対処するために、TP-Linkに対する措置を検討している。その一環として、政府は中国電信のアメリカ子会社を、アメリカの通信インフラ事業から完全に排除することを推進するという。

中共政府の関与

中国共産党の法律は、企業に対し、政府の軍事および情報目標を支援することを求めている。中共政府が支援するネットワーク攻撃が、ルーターを頻繁に利用していることが指摘されている。特に、カマロ・ドラゴンというハッキンググループはTP-Linkルーターを利用して、欧州の外交機関に攻撃を行っている。

もしTP-Linkのルーターがアメリカで禁止されることになれば、これはトランプ政権が2019年に国内の基盤施設からファーウェイを排除して以来、中国の電信機器が、アメリカで直面する最大の撤去事例となる。アメリカ政府のこの措置は、中国製ネットワーク機器に対する米国の警戒感が新たな段階に入ったことを示すものとなり、グローバルなサプライチェーンとサイバーセキュリティの未来に、大きな影響を与える可能性がある。

李言
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