米バーモント州気候変動法案、石油会社が「気候変動」の代金を支払うことに

2024/05/15 更新: 2024/05/16

地球温暖化による損害賠償を民間企業に義務付けるバーモント州の法案が、ビジネス環境を悪化させ、すでに資金繰りに窮している州民のエネルギー価格を上昇させるのではないかという懸念を呼んでいる。

物議を醸しているバーモント州気候スーパーファンド法案が承認されれば、シェル、エクソンモービル、シェブロンなどの石油・ガス大手は、気候変動の浄化と気候変動に関連した健康管理のために、州に数十億ドルを支払わなければならない。「気候スーパーファンド法」の罰則は、当局が決定した「異常気象」の州への影響の程度に基づいて計算する。

この法律では、罰金は1995年から2024年までの各企業の排出量に基づきさかのぼって課される。

法案は、「2000年1月1日から2019年12月31日までの間で化石燃料の採掘または原油精製の取引または事業に従事している企業またはその後継者に、10億トン以上の温室効果ガス排出量に対して料金を課す」と規定している。

さらに、この資金はバーモント州天然資源庁に再配分され、インフラ整備、公共施設の耐候性向上、「気候変動の影響による病気や怪我を治療するための予防医療プログラムや医療サービスの提供」に使われる。

法案によると、各企業が支払わなければならない気候変動賠償請求の訴訟には、世界最大の石油、ガス、石炭、セメント生産者122社の過去の生産データを分析したカーボン・メジャーズ・データベース(Carbon Majors database)のデータを使用する。

同法案が可決されれば、バーモント州は気候変動への影響に対して民間企業に罰則を科す米国初の州となり、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州、メリーランド州も同様の政策を導入しようとしている。

バーモント州選出のラス・インガルス上院議員は、法案に反対した3票のうちの1票を投じた。彼はエポックタイムズに対し、法案が可決されればエネルギー価格の上昇につながり、州のビジネス環境と住民に壊滅的な打撃を与えると語った。

インガルス氏は、「エネルギー価格がさらに上昇することは間違いない」と述べた。また、今年7月に実施される14.4%の増税により、住民はすでに耐え忍ぶことを強いられているとも付け加えた。

さらに、「人はすでに州への高額な負担に不信感を抱いており、多くの人が救済を切実に求めている」と述べた。

インガルス氏は、重い罰則によって企業が州から撤退する可能性もあるとし、「このことが企業をよりビジネスがしやすい他州に流出させることになるに違いない」と語った。

昨年10月のプレスリリースで、世界保健機関(WHO)は、人間の行動が炭素排出を増加させ、気候変動につながっており、それが「山火事、洪水、熱帯暴風雨、ハリケーンなどの人道的緊急事態に直接的に寄与しており、これらの災害の規模、頻度、強度が増加している」と主張した。

プレスリリースはまた、「36億人がすでに気候変動に対して非常に脆弱な地域に住んでいることを示している。2030年から2050年の間に、気候変動により、主に栄養失調、マラリア、下痢、熱ストレスが原因で、年間約25万人が死亡すると予測している」と付け加えた。

しかし、批評家たちは、過去に気候活動家たちが懸念を表明するために使用したモデルが、時間の経過とともに繰り返し間違っていることが明らかになったと指摘し、気候科学の憂慮論者たちが使用する方法論には重大な欠陥がある。特に炭素排出量と気温の因果関係を立証することに重大な欠陥があると主張した。

コロラド大学ボルダー校が2021年に発表した論文には、「Clouds Warm, Earth Cools」(雲は暖かく、地球は冷える)と題され、「Precipitation-related 『feedback』 loops mean models may overestimate warming」(降水関連の「フィードバック」ループは、モデルが温暖化を過大評価する可能性を意味する)という副題が付けられているが、現在のモデリングシステムにさらなる疑念を投げかけている。

論文の共著者でCIRESの研究者であるコロラド大学ボルダー校のジェニファー・ケイ准教授(大気海洋科学)は、「我々の研究は、前世代の気候モデルは慎重に検討すべきことを示唆している」と述べた。

インガルス氏は、この法案が国の気候にどのような影響を与えるかはまだわからないが、法案が可決されれば、少なくとも短期的には政権に利益をもたらすことに違いないと述べた。

「これは純粋に金儲けのためだ」とインガルス氏は言った。「しかし、この法案を望んでいる人たちは、州の70%が『月収をその月のうちに全部使い果たす若者』であることなど気にしていない。住民なんてクソくらえという態度だ。彼らが望んでいることだから、やり続けるだろう」と付け加えた。

「私たちは化石燃料の利用によって繁栄してきた。化石燃料はこの国を偉大にしている重要な要素だ」とインガルス氏は言った。「隣人をいじめるのはやめよう」

バーモント州上下両院で圧倒的多数で可決されたこの法案は、現在、共和党のフィル・スコット知事に送られている。インガルス氏によれば、知事はこの法案に拒否権を発動する見込みだという。法案が11票を獲得すれば、拒否権は無効となり、法案は成立する。投票はかなり接戦になることが予想される。

しかし、インガルス氏によれば、あと数か月もすれば、州民の声を反映させるチャンスが訪れるという。

「このようなふざけた状況にうんざりしている多くの人々にとって、11月の総選挙が楽しみで仕方がない」とインガルス氏は語った。

米国のジャーナリスト。著書に『Newtown: An American Tragedy 』『Breakthrough: How One Teen Innovator Is Changing the World 』『The Drudge Revolution』など。自身の家族の物語が主題となったドラマシリース『レポーター・ガール』が、2020年にApple TV+オリジナル作品として全世界に配信された。
関連特集: アメリカ社会