1月の台湾総統選で勝利した与党・民進党の頼清徳氏(64)が20日、台北市の総統府で就任宣誓を行い、蔡英文氏(67)の後任として中華民国第16代総統に就任した。1996年の直接選挙導入後、同一政党が3期連続で政権を担うのは初めて。
中国共産党による圧力に直面する台湾だが、頼氏は就任演説で「統一」でも「独立」でもない「現状維持」を表明。同党が武力行使を放棄していない現状について「幻想を抱いてはいけない」と警鐘を鳴らし、たとえ中国共産党の主張をすべて受け入れたとしても「統一」への野心は消えないと強調した。
対中関係について、中華民国の存在の事実を正視すること、台湾人民の選択を尊重すること、対等と尊厳の原則の下で対話を行うこと、対話によって対立を取り除くことを掲げる「四つの堅持」を表明した。
さらに、中国共産党の脅威と浸透に対抗するため、国防力の強化、経済安全保障の構築、世界の民主主義国家と連携し平和共同体を形成、実力によって平和を達成するといった方針「平和の四本柱行動計画」を打ちたてた。
「私たちは引き続き民主国家と民主共同体を形成し、各分野の発展経験を交流し、偽情報と戦い、民主主義のレジリエンスを強化する。様々な課題に対応し、台湾を民主世界のMVPにする」と訴えた。
1月の総統選では、蔡政権路線を継承する方針を示していた頼氏。しかし就任演説では、中国共産党に対して対立回避策を見せつつも、断固とした態度で武力行使といった強硬姿勢に臨む方針を鮮明にした。
副総統には、米国に幅広い人脈を持つ台北駐米経済文化代表処代表(駐米大使に相当)の蕭美琴氏(52)が就任。兵庫県神戸市生まれ。
中国共産党は台湾社会への揺さぶりを強めている。4月には国民党の馬英九元総統を北京に招き、習近平と会談させ影響工作を試みた。また、「台湾独立」を支持するものとして頼氏を敵視している。
頼氏は総統選で過半数に届かず、民進党は立法院(国会)の与党の座を国民党に明け渡した。ねじれ議会での重要法案の審議が滞る懸念がある。頼氏は野党の協力を仰ぎ、対中関係と内政の難題に取り組むことを強調している。
就任式には台湾との外交を結ぶ11か国を含む、英国、米国、日本、オーストラリアなど主要国から600人以上の来賓が出席。米国からは、ブリンケン国務長官が祝辞を寄せ、「台湾の強靭で弾力性のある民主主義の力を再び示した台湾国民を祝福する」と述べた。またポンペオ前国務長官らが来賓として列席した。
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