中国 遅すぎて傷口が塞がらない

不動産危機は北京が考えているよりも複雑で深刻

2024/07/23 更新: 2024/07/23

中国不動産危機に対して、北京政府は一貫して効果的な対応をしてこなかった。まず、中国共産党(中共)の指導部はこの問題を愚かにも無視していた。

2021年に危機が発生してから2年間、中共はそれを軽視し、倒産寸前の不動産開発業者エバーグランデやその顧客、そして中国の金融市場を保護するための措置を一切取らなかった。このため、問題は中国経済と金融全体に広がり、他の開発業者も次々と倒産していった。

昨年になってようやく問題の深刻さを認識した北京政府は、小さな一歩を踏み出した。しかし、現在北京が、大きな対応を取っているように見えても、その措置ではこの問題を解決するには不十分であるという。

最新の対策として、北京は1兆元(約1400億ドル)の超長期債務を発行し、約5千億元を空き家の購入と手頃な価格の住宅への転用に充てることを提案している。

このいわゆる再購入計画は、三つの方法で中国の不動産投資に対する信頼を回復させることを目指している。

①北京政府が最後の買い手として行動することを全国に知らせること。

②間接的に困窮している不動産開発業者に財政資源を提供すること。

③既存の物件を使用することで、新たに建設するよりもコストを節約すること。

この取り組みは、以前の何もしないというアプローチに比べれば歓迎すべきものだが、当面のニーズには不十分であり、計画の野心的な目標には到底及ばない。エバーグランデの初期の3千億ドルの倒産に比べれば、その規模は遥かに小さい。

北京の努力はこれだけでは及ばず、その後に起こった巨大なカントリーガーデンの倒産を含む他の失敗を見ればわかるように対策は見劣りする。状況に詳しい人々は、効果的な対策には数兆元の公的資金が必要だと示唆している。

さらに大きな問題は、余剰住宅が手頃な価格の住宅需要がある場所に存在しないことである。北京が手頃な価格の住宅に転用するために住宅を購入しても、それは手頃な価格の住宅の需要がない都市や地域で行われる可能性が高い。

手頃な価格の住宅の問題が最も深刻なのは、一級および二級都市だが、空き家の大部分は小都市にある。購入した住宅をどれだけ改装しても、需要がないために依然として空き家のままである、一方で大都市では多くの住宅が依然として、手頃な価格ではないのである。

この問題を示すのが、低い賃貸利回りの影響である。手頃な価格の問題が最も深刻な一級および二級都市では、住宅不足が価格を押し上げ、今年5月までに不動産エージェンシーによれば、賃貸利回りはわずか1.64%にまで低下した。

これは再販物件の融資にかかる金利よりも低くなっており、そのため、誰も北京の計画に参加するインセンティブを持たない。

この問題は中国人民銀行(PBOC)が実施した以前のパイロットプログラムでも明らかであった。初期の1千億元の目標額のうち、これまでに使用されたのはわずか20億元に過ぎない。北京の大規模なプログラムの潜在力をさらに削ぐのは、銀行自身がこのプログラムへの関与に消極的であることだ。その主な理由の一つは、不良債権が増加しているからだ。

このような状態では、北京の新プログラムにとって、大きな障害となるのは間違いないであろう。地方政府も関与に消極的である。北京は長年にわたり地方政府に一連のインフラプロジェクトの資金調達を強制してきたが、そのすべてが期待通りの成果を上げているわけではなかった。

多くの地方政府は重い債務負担を抱えており、一部は地元住民に基本的なサービスを提供することさえ難しくなっている。この問題のためにプログラムの初期資金は、中央政府の信用を通じて提供しているが、それでも地方当局が新たな債務を伴うプログラムに関与したいと思わないのは容易に理解できる。

結論として、北京政府は不動産危機の負担から、中国経済を解放するためにもっと多くのことをしなければならないというだけでなく、最良の対策でも、この深刻な危機を記憶から消し去るには、北京が望む以上に長い時間がかかるだろうということだ。

ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。
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