社会問題 月餅は、中国経済のバロメーター

今年も中国で「月餅」は売れない なぜ?

2024/09/13 更新: 2024/09/13

今年の「中秋の名月(十五夜)」は9月17日、火曜日である。

中国では、この日を「中秋節」と呼ぶ。家族団らんで夜空の月を見ながら、満月をかたどった焼き菓子の月餅(げっぺい)を食べるのが慣わしとなっている。

ところが今年「も」、「月餅」の売れ行きが、非常に芳しくない。「も」と言ったのは、去年も売れなかったからだ。

最近、「月餅はなぜ売れなくなったのか」のハッシュタグが中国のネット上で話題になっている。

「甘くて高カロリーであるため若者は好まない」

「金欠企業は昔のように従業員に無料で月餅を配れる余力がなくなったため」

「景気が悪く、月餅を取引先に贈ろうにも、送る相手もいない」

「単純にお金がないから買わない」

「月餅の安全性に関するニュース見過ぎて、とても食べる気になれない」といった意見などが主流である。

 

「工場もヒマ」

例年ではピーク時(中秋節の半月前)には夜通しで出荷作業を行ってきた深センのある月餅工場では、今年はあまりにも暇すぎたのか、「3日操業したら1日休む」ようになっている。

中国メディア「藍鯨新聞(9日付)」は、複数の月餅販売を行う店のスタッフの話を引用して報じたところによると、今年の月餅の販売数は、昨年よりも2~5割も少ないばかりか、販売価格を去年より半額近く下げても尚、あまり売れないという。

「団体購入はほとんどなく、個人からの買い上げも本当に悲惨な状況であるため、そもそも例年のようには仕入れなくなった」そうだ。
 

「自業自得」

昔は「季節もの商品」の月餅は、主に企業による団体購入が主力だったため、月餅は、中国経済のバロメーターとも言われていた。

しかし、近年の経済悪化の影響で多くの業界が低迷し、企業は相次いで倒産したり、人員削減を余儀なくされている。

かろうじて生き残っている企業でも、会社の経営維持のために、支出削減を余儀なくされている。そのため、月餅をまとめ買いして取引先に贈る「購買力」が激減しているのだ。日本で言えば、取引先に贈る「お中元」や「お歳暮」を買う企業の資金が底をついたことになる。

企業からの団体購入の激減に加え、一般客に向けた小売の販売数も大幅に減少している。一般市民があまり月餅を買わない理由は「お金がない」「高すぎて買えない」などである。

中国の月餅が売れなくなった背景には、中国経済の全般的な苦境のほかに、近年相次いだ「月餅にまつわる安全性の問題」が原因でもある。

毎年のことだが、「中秋節」が近づくと、華人圏では「市場に大量流通している偽物や、体に悪い危険な中国産月餅」に対する注意の呼びかけが必ず起こる。

「中秋財」という言葉があるほど、月餅の季節になると、あの手この手を使って儲けようとする悪徳業者が絶えないという。

「多くの中国産月餅の餡が、人工的に作られた偽物で、非衛生的な工場で作られる場合もあるし、とにかく化学物質が大量に含まれている」という情報に、多くの関係者が注意喚起している。

実際、中国の食品安全基準は、欧米諸国の基準よりはるかにハードルが低い。中国製の月餅についても、欧米では禁止されている添加物を含めて、中国政府は百種類以上の化学添加物を許可している。

月餅を買う人がどんどん少なくなったのは、経済的な面は避けられないにしても、利益追求至上主義で食品安全を疎かにしてきた売り手側の、いわば自業自得ともいえるのではないか?

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
関連特集: 社会問題