2024年G7保健大臣会合が開催 「ワンヘルス・アプローチ」含むコミュニケ」が採択

2024/10/16 更新: 2024/10/16

G7保健大臣会合が10〜11日にイタリア・アンコーナで開催された。主要7か国(G7)のほか、世界保健機関(WHO)や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関が参加した。

G7やインド、ブラジル、南アフリカ、サウジアラビアなどの招待国に加え、WHOや国連食糧農業機関(FAO)、OECDが国際保健分野の課題について協議。日本からは迫井正深医務技監が出席した。

「G7保健大臣コミュニケ」が採択されるとともに、「AIに関するG7ポリシーブリーフ:保健医療セクターへの機会と課題」が公表された。

「G7保健大臣コミュニケ」では、「グローバル・ヘルス・アーキテクチャー(GHA)と将来のパンデミックへの予防・備え・対応(PPR)の強化」「生涯にわたる疾病予防を通じた健康的でアクティブな高齢化とイノベーション」「ワンヘルス・アプローチ」といった内容がまとめられた。

1.「グローバル・ヘルス・アーキテクチャー(GHA)と将来のパンデミックへの予防・備え・対応(PPR)の強化」の内容としては、PPRに関して、いわゆる「パンデミック条約」の交渉が妥結するよう、政府間交渉会議における議論に貢献していくほか、 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を推進し、世界的なパンデミックに対するPPRを強化し、アフリカにおける医薬品製造能⼒の強化に向けた取組を引き続き⽀援するとした。

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての人がニーズに応じて、基礎的な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられる状態を指す。日本の後押しによりSDGs目標にも導入されている。

2.「生涯にわたる疾病予防を通じた健康的でアクティブな高齢化とイノベーション」では、女性、子供、高齢者、障がい者等を含むすべての人が必要なケアを受けられる医療システムを構築する。そのために科学的根拠に基づく研究や政策、医療従事者の雇用環境の改善、AI等のイノベーションの活用の重要性を強調するとした。

3.「ワンヘルス・アプローチ」では、会合の参加国および国際機関は、AMR及び気候変動、汚染、生物多様性の損失の3つの危機が人・動物・植物・環境に及ぼす複雑な課題に対処するため、様々なセクターによるワンヘルス・アプローチの重要性を認識する。抗菌薬の慎重かつ責任ある使用の重要性を再確認するとともに、特に低中所得国において、既存および新規の必須抗菌薬と効率的な診断への持続可能かつ公平なアクセスを促進する。また、「気候と健康に関する変⾰的行動のための同盟(ATACH)」などのイニシアティブを通じて、学際的な研究、部⾨間の連携、ベストプラクティスの共有を強化することの重要性を認識する」としている。

WHOが謳うワンヘルス・アプローチとは、人間、動物、生態系の健康のバランスを持続的に保ち、最適化することを目的とした統合的なアプローチを指し、賛否両論を呼んでいる。

「AIに関するG7ポリシーブリーフ:保健医療セクターへの機会と課題」の概要は、以下の通り。

• 医療分野における人工知能(AI)の導⼊は、医療従事者、患者、政策立案者、その他の関係者にとって、業務効率と医療の成果を向上させる大きな機会。

• 医療における AI の使用を、その可能性を最大限に促進し、個人・集団・公衆衛生における質と成果を改善し、ケアの時間と医療従事者らの交流を確保し、ケアへのアクセスにおける不平等と格差を減らし、医療従事者の負担を軽減させるための決意を表明。

• AI を安全かつ確実に、信頼して使用できるようにするために、オープンデータイニシアティブや、FAIR原則 (検索可能、アクセス可能、相互運用可能、再利用可能なデータ) に基づくイニシアティブを通じて、研究者が大規模なデータセットにアクセスして AIモデルをトレーニング、調整、テストできるようにし、応用研究を推進して研究者と開発者の間のイノベーションとコラボレーションを促進することが必要。

• 「広島AIプロセス包括的政策枠組み」の更なる推進のため、2023年のG7首脳のコミットメントを改めて表明。

• 医療におけるAIの潜在能⼒を最大限に活用できるよう、様々なレベルの医療専⾨家(データ保護責任者(DPO)を含む)と規制当局間の対話を積極的に奨励することにコミット。

• 倫理的配慮はAIの使用にとって極めて重要であり、G7デジタル・テクノロジー作業部会が作成した「公共部⾨における人工知能のためのG7ツールキット」を歓迎。

会合では、迫井氏は、各議題に関する日本の取組について紹介するとともに、PPR強化のためには平時からの保健システムの強化を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成が重要であることや、世界の中でも先行している日本の高齢化における取組や経験の共有を含め、日本として、2025年に設置が予定されている「UHCナレッジハブ」が国際的に先進的な拠点となるよう準備を進め、各国とも連携しつつUHC推進に引き続き取り組んでいくことを訴えた。

保健大臣会合と併せて、G7財務大臣・保健大臣合同会合も開催された。この合同会議で、イタリアは、新たな抗生物質の開発を支援する世界的な非営利パートナーシップであるCARB-Xに今後3年間で2100万ドルの資金提供を行うと発表した。

大紀元日本 STAFF
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