中国の病院の「インターン制度」は医学生を搾取していると非難されて久しい。
つい最近も、北京の複数の病院でインターン生が指導医をナイフで刺す事件が起きたという噂が流れている。
指導医が刺されたと噂されている病院「北京協和医院」では、「学生に背を向けないよう」医師に警告しているようだ。なお、同病院は優れた医療技術を誇り、多くの著名人や政府・共産党の幹部も利用することで有名だ。
ネット上に流れている「北京協和医院」の学生たちのグループチャットには、スクリーンショットのなかに、次のようなチャット記録があった。
ある学生「学生がその先生を刺すのをこの目で見た」
別の学生「警察に通報した、警察がもう来ている」
「全国医学(急診)交流グループ」という名の別のチャットグループのスクリーンショットでも「北京協和医院で事件が起きたらしい」と噂になっている。
「北京協和医院」が13日に出した内部向けの「緊急通知」も、ネットに流出している。同院の教職員向けに出されたその通達のなかには、「この頃、中国国内で学生が教職員を刺殺、刺して負傷させる事件が相次いでいるため、教職員は学生による悪意な攻撃に遭わないよう、指導過程では警戒心を持ち、学生に背を向けるな」と書かれている。
デマ? 真実?
ネット上に流れる「噂」をうけ、「北京協和医院」は17日夜、「ネット上に流れている学生が指導医を刺したという噂はデマだ」とする「厳粛声明」を発表している。
この公式の「デマ消し」、多くのネットユーザーは不服としている。「やはり『デマ消し』に乗り出した。これが(噂は真実であるという)答えだ」といったコメントが圧倒的だった。
要するに、躍起になって否定するほど、その「デマ」が本当である可能性が高い。日本で生活する読者には、理解し難い感覚ではあるが、「デマはたいてい真実」ということで、中国人たちは、これまでの多くの経験から知っているのだ。
誰もが知る「感染の始まり警鐘した者」の一例として、2020年2月7日に亡くなった李文亮医師がいる。
中国における新型コロナ発生の最も初期の段階で、中国政府の発表前から「原因不明の肺炎の存在」をいち早く察知し、同僚の医師たちに警告を発したのが、武漢の眼科医・李文亮医師(33)だった。
李医師は「デマを散布した」として、武漢の公安当局に呼び出され、訓戒処分を受けた。当局の処分に服する旨に、署名をさせられるとともに、国営の中国中央テレビ(CCTV)の報道番組でも、連日のように「デマ散布者」として伝えられた。その後、李医師は自らも中共ウイルス(新型コロナウイルス)に感染し、妻子を残したまま死亡する。
誠実な医師・李文亮氏の死から3年半以上が経つ現在、真実を語って弾圧された李医師の無念を想起するとともに、いつでも「デマ消し」に躍起になる中国当局の愚かさを感じた人は少なくない。
搾取
「すずめの涙ほどの安い給料をもらって、死ぬほど働かされる」と不満を漏らす医学生も多い。
これまでにも中国各地で「インターン中の医学生たちが仕事量の減少、待遇アップ」を求める権利擁護事件がしばしば起きている。
病院や指導医は、学生が「インターンに合格できるかどうか」を決める絶対的権力を持っているため、医学生たちは搾取される不利な立場に置かれているのだ。
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