社会 「情報封鎖」「熱度操作」…何が起ころうと「安定維持」が一番!

【動画あり】容疑者は「事件現場へ下見に来ていた」 死者は35人以上 中国・珠海市の「社会報復事件」

2024/11/14 更新: 2024/11/14

【閲覧注意】本記事には、残虐な映像や画像があります。ご注意ください。

11日午後8時ごろ、広東省珠海市のスポーツ施設の敷地内でスポーツ用途の多目的車(SUV)が暴走し、散歩やランニングをしていた市民を次から次へと轢き飛ばす「社会報復事件」が起きた。

今のところ、日本人が巻き込まれたとの情報はない。

地元警察は少なくとも35人が死亡、43人がケガをしたと発表しているが、「その場で50人以上は死んでいる」「少なくとも100人以上轢かれた」「約200人が轢かれた」などの目撃者による証言も様々で、ネット上では「当局は死傷者数を過少報告しているのではないか」と指摘する声は多い。

 

現場の様子(動画よりスクリーンショット)

 

車を運転していた男、樊(62歳)は犯行後、逃走したが逮捕されている。

現場となった体育館は同市の「中級裁判所」と隣接していることや、事件後、地元公安当局による「謎の動き」から、容疑者は、何らかの司法上の不公平な仕打ちを受けたため、あえて裁判所のすぐ隣の人が多く集まる体育館を選んだのではないかと推測する人は多い。 

市民が撮影した映像が、ネットに多く投稿されており、地獄絵図と化していた。制服姿の学生も大勢被害に遭い、少なくとも数十人は轢かれて地面に横たわっている。地面は鮮血だらけで、実に凄惨な光景だったという。

 

「計画的犯行」 

犯行に使われた大型SUVは、容疑者が事件1週間前にローン(販売価格約430万円)で購入し、事件前日に納車されたばかりだったことがわかった。

車販売店の店員によれば、犯行に使用された車を購入しに店に来た容疑者はいたって正常で、他の客と何ら変わりはなかったという。「まさかそういうことに車を使うとは」と当時販売した店員は嘆いている。

また、事件現場の警備員によれば、問題のSUVは「事件前日に現場へ下見に来ていた」という。

 

事件が起きた体育館の外の地面に置かれた市民が手向けた追悼の花束 (動画よりスクリーンショット)

 

情報封鎖

事件の後、中国のSNSに投稿された大量な事件関連情報や写真・映像は封殺に遭い、警察の声明を転載した官製メディアの報道記事まで、公開後に削除される事態となった。

現在中国のネット上では、官製メディアによる公式報道など、当局が許可する情報しか見ることができない。

厳しい検閲により、事件関連トピックスはSNSトレンド入りはできず、「(操作された)ホットな話題」は「航空ショー」ばかりだ。

なかでも、官製メディアが報じた「航空ショーで海軍のお姉さんの腰に停まった蝶」の話題が中国SNSウェイボー(微博)トレンド2位だ。この事態に、「数十人の命でも蝶には叶わなかったということか」「事件後まるで何も起こらなかったかのような静けさ、そして平和、あの国どうかしてる!」などと華人圏では罵声が響き渡っている。

画像(左)は凄惨な事件現場。画像(右)は中国SNSウェイボー(微博)トレンド2位の「航空ショーで海軍のお姉さんの腰に停まった蝶」(中国のネットより)

 

検閲を受けながらも、中国SNSには事件被害者の遺族や友人による「当局の冷血な事件処理」に対する「怒り」と「不満」が相次いで投稿されている。

ある事件負傷者の家族によれば、「負傷した家族は病院へ着いても、大混乱しているから治療が始まるまで2〜3時間待たされた。待機中に血圧が下がり、そのまま集中治療室入りになった。事件発生から数時間経っても警察も、メディア記者も誰一人姿を見せていない。死傷者の統計もなく、ネットで検索しても情報がほとんど得られなかった」という。

別の市民は「当局が情報封鎖を行っているため、会社に対して休暇を申請する時、会社の人たちは何が起きたのかすら知らなかったよ」と明かした。

 

事件があった(営業停止中の)体育館、「まるで何事もなかったかのように静かだ」と投稿者はいう。11月13日夜撮影(中国SNSより)

取材妨害

いっぽう、事件現場での取材や報道を試みる複数の外国メディア記者らが「警備員」や「熱心な市民(?)」らによって撮影を妨害されたこともわかった。

英BBC記者は「中国市民」を名乗る男から撮影を妨害され、現地で取材しているTBSテレビの記者も「近所の住民」を名乗る人に取り囲まれた上、警察を呼ばれ、派出所に連れて行かれて、全ての素材を削除させられたとXに書いている。

(TBSテレビ記者・室谷陽太氏によるX投稿)

 

「追悼品撤去」

事件後、多くの市民は自発的に事件現場へ花を手向けに訪れている。また、事件を知った遠方のユーザーはネットで花などを注文して現場へ届けさせているが、追悼品の花やロウソクはすぐさま現場のスタッフによってすぐに撤去されている。

「すぐに撤去するなんであんまりだ! 政府はこうも冷たいのか?」

とネット上では非難が殺到している。

中国当局の「冷たい」態度とは対照的に、西側諸国の在中国大使館は、相次いで犠牲者に対する哀悼の意を表している。

 

事件が起きた体育館の外に手向けられた追悼ロウソクを消す職員。2024年11月12日撮影(MICHAEL ZHANG/AFP via Getty Images)

動機

犯行動機は容疑者が受けた司法の不公と関係しているものとされている。

「現地公安局から聞いた」というユーザーによれば、容疑者は不倫した妻と離婚し、離婚後の財産分与をめぐって訴訟を起こすも不当な判決を受けたと考え、長年陳情してきたが、問題をいっこうに解決できなかったため犯行に及んだという。

別の現地市民は「容疑者の元妻はランニンググループのリーダーで、グループ内の引退した官僚と浮気していた」と明かす。

ネットに伝わる説によれば、容疑者が受けた司法の不公(裁判所による判決)は、その元妻の恋人(引退した中共官僚)がツテを使い、裏から手をまわしたためという。

容疑者は事件現場へ車を突入させた後、真っ先にその元妻とその恋人を轢き殺したという説もある。

 

画像(左)は犯行に使われたSUV(赤い輪)。画像(右)は事件当日、現場でランニングをしていたグループの写真。容疑者の元妻とその恋人もこのようなランニンググループに所属し、当日現場でも活動していたといわれている(動画よりスクリーンショット)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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