日本製鉄によるUSスチールの買収計画に対し、バイデン大統領が禁止命令を出したことについて、日本製鉄とUSスチールは「法的権利を守るために適切な措置」を全て講じると表明した。複数のメディアが報じた。
日本経済新聞によると日本製鉄はUSスチール買収計画を巡り、米政府を相手取り訴訟を提起する方針を固めたとしている。
日本製鉄は9月に声明で、本買収により、USスチールとそのアメリカ国内生産能力を強化し、最先端の技術をアメリカ国内に導入することで、米国の産業基盤およびサプライチェーンをより強靭化し、アメリカの国家安全保障を強化するものと確信していると述べ、並々ならぬ意気込みを見せていた。
日本製鉄の買収提案は、USスチールの株主には、圧倒的な賛成を得ていたものの、全米鉄鋼労働組合(USW・全米の鉄鋼他に従事する労働者による労働組合)が強く反対しており、買収作業の障害となっていた。
同声明では、USスチールはアメリカ法人として50年以上事業を展開してきた日本製鉄の子会社であるNippon Steel North America, Inc.NSNAの下で、ペンシルベニア州ピッツバーグに本社を維持し、取締役の過半数および主要経営陣をアメリカ国籍とするガバナンス体制を構築し、取締役会には少なくとも3名のアメリカ国籍の独立取締役を含める方針と表明していた。
また2024年12月31日付けの米紙ワシントン・ポストの報道によると、日本製鉄はUSスチールの生産能力削減に対する拒否権を米政府に与えることを提案するなど、配慮を見せていた。
しかし今回バイデン大統領が中止命令を出して買収を阻止し、またトランプ次期大統領も反対の意思を表明していることから、訴訟が成功する見込みは低いと考えられる。
バイデン大統領がUSスチール買収を阻止した背景
バイデン大統領は、この買収が「アメリカの国家安全保障とサプライチェーンにリスクをもたらす」と主張し、声明では、「鉄鋼生産はわが国の基幹産業。国内で所有・運営される強い鉄鋼業は、国家安全保障上、不可欠」と強調していた。またバイデン大統領の有力な支持基盤である全米鉄鋼労働組合(USW)が買収に反対しており、労働組合の意向に配慮したとも考えられる。
アナリストのマイク・フレデンバーグ氏は「日本製鉄がUSスチールを買収することを許可することは、短期的な経済的観点からは良いことかもしれないが、そうすることはアメリカの防衛産業基盤の弱体化を加速させ、国家防衛戦略に反することになる」と述べている。
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