アメリカ政治 マーチャン判事はトランプ氏に無条件放免を言い渡した。つまり、懲役は課されない。

ニューヨーク州最高裁 トランプ氏無条件放免 「有罪判決」維持

2025/01/11 更新: 2025/01/11

ニューヨーク州最高裁のフアン・マーチャン判事は1月10日、トランプ次期大統領に対し、業務記録改ざん事件において無条件放免の判決を下した。この判決は象徴的な意味合いが強く、トランプ氏の法的記録に有罪を記載する以外の制裁は科さない。マーチャン判事は禁錮刑や罰金を課さない判断を示した。

マーチャン判事は「特別なのはアメリカ合衆国大統領という職務に付与される法的保護であり、その職に就く人物ではない」と述べ、トランプ氏がオンラインで出席する中で裁定を下した。

検察側の主張とトランプ氏の反応

検察官ジョシュア・スタイングラス氏は、事件を通じたトランプ氏の行動を「法の支配そのものへの直接的な挑戦」と形容した。さらに、トランプ氏が法的問題で自身を不当に扱った者への報復をほのめかしていると批判した。

これに対し、トランプ氏は検察の主張に同意せず、頭を振って否定した。検察は、トランプ氏は制度への不信感を示し、根拠のない攻撃を執拗に行った点を強調。検察は次期大統領による脅迫は抑圧的な効果を狙ったものであると論じた。

スタイングラス氏はそれでも無条件放免が「就任前における最も現実的な判決」と述べた。

弁護側の主張

トランプ氏とその弁護士トッド・ブランシェ氏はフロリダからオンラインで出席。

弁護側も無条件釈放の判決を支持したが、ブランシュ氏は検察側の主張に反論した。「この裁判中に法廷で起こったことの正当性について、そしてこの事件と戦うトランプ前大統領の行動について、政府が今述べたことの多くに私は反対する」

さらに、自分のチームは控訴するつもりであり、訴訟を起こすのは適切な時期ではないと述べ、今回の審理を「国にとって悲しい日」と表現した。

トランプ氏は「この経験は非常にひどいものだった。ニューヨーク州やその司法制度にとって大きな後退だ」と述べ、事件を「政治的な魔女狩り(迫害)」と断じた。

トランプ氏は、訴訟のきっかけとなった記録には関与しておらず、支払いは訴訟費用であり、自身の会社がそのように表記したと主張。

「私は全く無実だ。何も悪いことはしていない」と述べ、「今回の裁判は政治的な弾圧であり、私の評判を傷つけることを目的としている。明らかにそれはうまくいかなかった」と反論した。

判決の背景とその影響

今回の裁判の判決はトランプ氏の1月20日の就任式のわずか10日前に行われた。この日をもって、トランプ氏は追加訴訟から憲法上の保護を受けることになる。トランプ氏はこれまでも多くの法的問題を抱え、今回の業務記録改ざん事件を含めた4件の刑事訴追を受けている。その中でトランプ氏は法官や弁護士と公然と対立し、訴訟を「政治的な法戦」と批判してきた。

マーチャン判事は法廷で、トランプ氏に対し複数の報道制限命令を出し、10回の法廷侮辱罪を適用した。5月の陪審裁判では、業務記録改ざんの重罪34件で有罪判決を下した。

マーチャン判事は「大統領職のみが、判決の重大な影響からトランプ氏を唯一保護するものだ」と述べ、一般市民としてのトランプ氏が同じ保護を受けることはないと指摘した。

トランプ氏は、娘が民主党系グループと関係を持つことを理由にマーチャン判事の辞任を求め、判事の公正性に疑問を呈した点でも注目を集めた。

判決の後、トランプ氏は事件そのものを「政府の武器化」と批判し、自身の行動が完全に正当だったと主張した。同氏が大統領特権をめぐる論点を用いて上訴を試みる可能性は高い。

トランプ氏はニューヨークの裁判所やアメリカ最高裁に繰り返し上訴し、判決の差し止めを試みたものの、いずれの裁判所も最終的に彼の要求を却下した。それでも、この事件は将来的に新たな上訴が行われ、有罪判決が覆る可能性を残している。

これまでトランプ氏は自身に対する一連の訴訟に多くの異議を唱え、特に大統領免責特権が1期目の任期中の行動を保護しているという主張に力を入れてきた。

具体的には、不倫関係にあったとされるアダルト映画女優ステファニー・クリフォード(通称ストーミー・ダニエルズ)氏に対する口止め料を「弁護士費用」として虚偽計上した疑いで業務記録改ざんの罪に問われた。この口止め料問題は、マンハッタン地方検事アルビン・ブラッグ氏による起訴の中心的な争点となっている。検察側は、この虚偽計上が選挙期間中に有権者への影響を狙った違法行為に該当すると主張。

マーチャン判事は1月3日の命令で量刑を決定するにあたり、大統領免責特権を含むさまざまな懸念から禁錮刑を科さない方針を示した。

さらに、昨年12月、マーチャン判事はブラッグ氏が提示した証拠が大統領免責特権に反して無効であるというトランプ氏の主張を退け、その論拠に基づく訴訟の却下要求も認めなかった。

トランプ氏は、大統領免責特権がマンハッタン地方検事アルビン・ブラッグ氏が使用した証拠を無効にすると主張し、この問題を理由に訴訟を取り下げるべきだと訴えていた。

 

ニューヨーク州のマーチャン判事は、トランプ氏が証拠に対する異議申し立てを行うのが遅すぎた、あるいは異議を適切に保存しなかったと判断した。そして、保存された異議と保存されなかった異議の両方に関連する証拠が、大統領免責特権の保護対象には該当しないとの結論を下した。

「本裁判所は、保存された異議に関連する証拠がすべて非公的な行為に関するものであり、免責特権による保護を受けることはできないと判断する」と、マーチャン判事は意見書に記した。また、保存されなかった異議についても同様に免責特権の適用外であると結論づけた。

12月17日、トランプ氏はTruth Socialへの投稿で、マーチャン判事の決定を強く批判した。トランプ氏は、「マーチャン判事は合衆国最高裁とその歴史的な免責に関する判決を完全に無視した」と述べた。

さらにトランプ氏は、訴訟そのものが不当であると主張し、マーチャン判事の意見書について「我々の憲法に反するものであり、もしこのまま認められれば、大統領職の存在そのものが危機に瀕するだろう」と述べた。

エポック・タイムズで国家政治、航空宇宙、航空業界を担当する記者である。以前は「サラソタ・ヘラルド・トリビューン」でスポーツ、地域政治、速報ニュースを担当していた。
ワシントン特派員 サム・ドーマンは、エポックタイムズの裁判と政治を担当するワシントン特派員です。X で @EpochofDorman をフォローできます。
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