トランプ氏再選後 韓国企業の米国投資加速 中国撤退進行中

2025/01/14 更新: 2025/01/14

2024年11月、トランプ氏が大統領選挙で勝利した後、韓国企業はアメリカへの大規模な投資計画を次々と発表している。アメリカでの新たな生産拠点の設立や既存設備の拡張が進む一方、中国ではコスト増加や経営環境の悪化を背景に撤退や事業縮小が加速している。

トランプ氏返り咲き 韓国企業が「大規模投資計画」を続々発表

「朝鮮日報」によると、韓国最大のパン製造・販売企業SPCグループは、1月2日に米テキサス州で初のパン工場を建設するため、1億6千万ドル(約252億円)を投資する計画を発表した。同グループは2030年までに北米地域で運営する店舗数を現在の200店から1千店に増やすことを目指している。

また、2024年11月13日、トランプ氏の当選から1週間後、韓国食品大手のCJ第一製糖は、南ダコタ州における北米最大のアジア食品生産基地を建設する。約7千億ウォン(約700億円)を投資する計画だという。

食品業界のほか、韓国の製造業はアメリカへの投資を加速している。現代製鉄は、数兆ウォン規模の投資でアメリカ初の製鉄所を建設する予定だ。これは現代自動車がアメリカでの生産を拡大する計画との相乗効果が期待されている。現代自動車は、米ジョージア州にあるEV工場「Metaplant America」の生産能力を年30万台から50万台に増やす計画を立てている。

さらに、LS電線は約1兆ウォン(約1千億円)を投じ、2024年4月にバージニア州でアメリカ最大の海底ケーブル工場を建設する予定だ。

すでにアメリカに進出している韓国企業も生産規模の拡大を検討中。LG電子は、米テネシー州の洗濯機工場で冷蔵庫やテレビの生産を追加する計画を検討している。また、関係者によると、サムスン電子の電池事業は一時的な需要停滞に直面しているものの、現地での合弁会社設立や新工場建設など複数の方向性が検討されているという。

韓国企業が米国への投資を加速させる背景について、韓国メディアは「韓国国内の低い出生率や内需の停滞、企業にとって不利な投資環境に加え、トランプ氏の再選が決定的となり、アメリカへの投資が企業にとって不可避となった」と財界関係者の意見を引用している。

中国市場からの撤退加速

これに対し、中国に進出している韓国企業は、撤退や事業縮小の動きを強めている。

韓国産業研究院、大韓商工会議所北京事務所、在中国韓国商工会議所が2024年12月末に発表した報告によれば、中国に進出している韓国企業の4割が、今後5年間で撤退や移転、事業縮小を検討していることが明らかになった。

調査では、回答企業の37%が5年以内の撤退(8.8%)、移転(3.6%)、事業縮小(24.6%)を検討中であると回答。さらに、2~3年以内に同様の計画を考える企業は31%に達している。また、67%の企業が「中国の経営環境は悪化している」と認識しているという。

韓国聯合ニュースの2024年12月の報道によれば、LG電子は2024年9月に約2兆ウォンで広州の大型液晶ディスプレイ工場を売却。これにより、韓国企業は大画面LCD事業から全面撤退することとなった。

サムスン電子も2019年に広東省恵州にある最後のスマートフォン工場を閉鎖し、生産拠点をベトナムやインドに移転した。

自動車業界でも同様の動きがみられ、現代自動車の中国国内生産拠点は5か所から2か所に減少。起亜自動車の中国合弁会社である東風悦達起亜も3か所の工場のうち1か所を現地メーカーに譲渡した。

化粧品業界でも撤退が相次いでおり、アモーレパシフィックの「エチュード」や「ヘラ」などのブランドが中国市場から撤退。さらに、ロッテマートは2018年に中国市場から全面撤退し、百貨店事業も2022年に終了している。

韓国対外経済政策研究院の分析では、中国国内の人件費上昇や外資優遇政策の減少に加え、地元企業の競争力向上が要因となり、韓国企業がベトナムなどの新興市場への投資を選ぶ動きが加速している。

韓国企業は国際市場の変化に対応し、経営戦略を再構築している。アメリカへの投資は企業成長に新たな活路を開くと期待される一方、中国市場からの撤退は今後のリスク管理の重要性を浮き彫りにしている。
 

楊旭
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