国際 「そんなの聞いてない!」

「自ら正しく行動するべき」 ルビオ国務長官に放った王毅外相の警告はハッタリ?

2025/02/02 更新: 2025/02/02

このごろ、中国の巷で熱い話題「王毅がルビオを脅した件」は、急展開を迎えた。

中国の王毅外相は1月24日、マルコ・ルビオ米国務長官と初めて電話会談で言及した四字熟語「好自為之」がこのごろ、話題になっている。

この「好自為之」は日本語で「自分を律しなさい 」「間違った立場を正しなさい」「あなたが自ら正しく行動することを希望する」「うまく行動すべき」「自ら正しく行動するべき」などと訳される。いずれにしても大人が後輩に婉曲に警告、訓戒する時によく使用され、訓戒や脅しのニュアンスを持っている言葉である。

中国官製メディアによれば、この四字熟語は、王外相がルビオ長官に対して、「大国が大国の姿を備えるには国際的な責任を果たさなければいけない」と発言した後に使用された。

官製メディアは「ルビオ氏が反中国的な行動を続ければ、どのような結果になるか覚悟しろ」という意味だなどとも解説している。

複数の官製メディアによる大々的な報道により、戦狼と名高い・王外相の「好自為之」発言は大きな話題になった。

中国のネットでは王外相の「覇気」を高評価する声が広がり、「ピンクちゃん」たちは大いに興奮したのだった。「ピンクちゃん」とは強い愛国心を持ち、過激な主張を繰り返す華人・小粉紅(しょうふんこう)のこと。

だが、この件はこの後、急展開を迎える。

 

2020年2月、独ミュンヘン・セキュリティ会議に出席した中国の王毅外相(Johannes Simon/Getty Images)

 

「そんな発言は聞いてない」

ルビオ氏は1月30日、衛星ラジオ放送大手・米シリウスによる独占インタビューのなかで、「『好自為之』の発言なんて、通話中に聞いていない」と反論した。

ルビオ氏は「自分は(王外相との)通話中では、相手の通訳の口からいかなる行き過ぎた言葉も聞いていない。もし、本当にあの時『好自為之』のようなワードを聞いたならば、自分はすぐに反撃しただろう」と説明した。

また、「これは中国がよく使う手口だ。中国側は英語の翻訳を発表した後に中国語の翻訳を発表するが、両者は必ずしも一致しない」などと批判した。

ルビオ氏はさらに、こう付け足した。「もしかしたら王外相は当時、そのように言ったのかもしれないが、少なくとも中国側の通訳はその言葉を翻訳するのを望まなかった」

中国の巷で話題の「好自為之」事件について説明しながら、中国に対する強硬姿勢を貫くルビオ氏はインタビューのなかで30回以上「中国」について言及し、中国共産党がアメリカにもたらす脅威およびアメリカの対応について述べていた。

 

第72代国務長官に正式就任した米共和党のマルコ・ルビオ氏(53)、2025年1月21日。(Alex Wong/Getty Images)

 

結局、王外相はルビオ氏に対して、あの脅し言葉を言ったのだろうか。

真相を求めるべく、華人圏では「通話を公開しろ!」という声も上がっている。

「今回の『王毅がルビオを脅した件』は、結局中国国内の世論を騙して、ピンクちゃんたちを発奮させるための中国当局のトリックだけなのではないか」とする指摘する声や、「王外相は心の中では絶対言った、しかし口には出して言う勇気はなかったんじゃないか? 結局中国は張り子のトラだ」といった皮肉も多く上がっている。

 

背景

なぜ今回の「王毅がルビオを脅した件」が中国国内で伝わっているのか。

その背景としては、中国入国禁止の制裁リストに載るルビオ氏に対する中国当局による公式な改名をきっかけとして、「ピンクちゃん」を中心とした世論のプレッシャーを受けたのではないかと指摘する声が上がっている。

アメリカは人権侵害などで問題視する中共当局者に制裁を科したら、対抗措置として中国共産党は代わりに適当な人物(おそらく中共にとって目障りな人物)を制裁リストに掲載している。そして米国政府内でも対中強硬論者で名高いマルコ・ルビオ氏は連邦議会議員だった時代に制裁リストに載せられていた。

しかしトランプ氏が大統領に選出され、そのマルコ・ルビオ氏が、よりによってアメリカ外交のトップである国務長官に抜擢されてしまった。この事態に慌てたのか、中国当局は、ルビオ氏の名前(中国語の漢字表記)を以前使用していた当て字を 「盧比奧(ルビオ)」から「鲁比奧(ルビオ)」に直した。つまり、中国語の当て字を変えて、「新・アメリカ国務長官」と「制裁リストに載る米議員」は同一人物ではなくなるという効果を狙ったものと思われる。

当局のこの行動に関しては、「要するに、中国人民さえ騙せればオーケーということか」「見え見えの詐欺」などと中国国内からも非難が殺到していた。

焼け石に水のごとく、中国外交部は定例記者会見で繰り返し聞かれる「中国によるルビオ氏の制裁問題」について、中国側はあいまいな回答している。

制裁の継続を主張し、当局の煮え切らない態度に発狂する「ピンクちゃん」も多いようだ。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
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