中国の結婚登録者数は45年ぶりの新たな低水準を記録し、出生率もかなり悪い状況だ。
人口危機の真っただ中にある中国、最近山東省にある企業は、物議を醸す、ある通達を出した。
「国家の呼びかけに応じるため」という大義名分から始まった通達では「独身の従業員(28~58歳、離婚も含む)は期限内に結婚しないとクビ」と言うのだ。
結婚期限は今年の9月30日までとなっている。つまり、数か月しかない。
なお、同企業(「山東省臨沂舜天化工集団」)は化学原料及び化学製品の製造を主な業務とする会社だ。
関連ニュースには
「こんなことでクビにされてたまるか!」
「人員削減するための口実だろ!」などと非難が殺到している。
世論のプレッシャーによって、同企業は、終に、問題の「結婚しないとクビ」の命令を廃止したという。中国メディアが報じた。
人口危機
近年、中国共産党(中共)当局は、人口減少に歯止めをかけるため、あの手この手を使って結婚・出生率を上げようとありったけの知恵を絞って対策を練っているが、改善の兆しは全くない。
一部の村では、「恋人を連れて帰らないと村に入ることを許さない」と書かれた、目を疑うような垂れ幕までも掲げられている。
軟肋(ルヮンレイ)
「なぜ結婚しないのか?」と街角で出会った若者たちを捕まえては、その本音を聞く動画が多くSNSに流れているが、もっとも印象的な回答はこれだ。
「結婚するお金はないし、なぜあえて軟肋なんかを作る必要がある?」
こんなことを言われると、質問者は返す言葉もない。
軟肋とは本来、肋骨(あばら骨)のことだが、骨折しやすい部位であることから「弱み」の意味でも使われる。
昨今の中国では、この「軟肋」が悪辣な場面で使われる。
例えば、中国共産党(中共)の当局者が、正当な権利を主張する市民を威圧する時に、これを言うのである、「余計な波風を立てるな。おまえは自分の軟肋を考えろ」と。
また実際に起きたことだが、ある学校役人が、地方政府の命を受けて、生徒の保護者に対し「中国選挙民意識」という名のSNSチャットグループからの退出を求めた際に使った脅しが「子供の入党と前途を考えろ」だった。

背景を知らない日本人には、不可解な会話にしか見えない。それもそのはずで、中共統治下の中国では、日本では想像もつかないほどの個人情報を当局が握っており、それをあからさまな脅迫に使うからだ。
海外に出て、中国の民主や人権を主張する中国人にとっては、国内に残留する親族が「軟肋」、つまり「人質」となっている。
上海のロックダウンの際に流行語になった「我々は最後の世代だ」は、もう軟肋(弱み)はないぞという決意の表明である。
つまり、現代中国において、「軟肋がいない」ことは、ある意味「勝ち組」なのだ。
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