2月18日、連邦判事は、政府効率化省(DOGE)による7つの政府機関のデータアクセスを阻止するよう求めた州の申し立てを却下した。判事は、原告側が救済措置を受けるための条件を満たしていないと判断した。
判決文で「被告側(DOGE)の予測不可能な行動により、原告および多くの政府機関、住民に相当な不確実性と混乱が生じていることは裁判所も認識している」と記されているが「被告が原告に回復不能な損害を与える可能性があるというだけでは不十分だ」と述べ、差し止めを認めなかった。
この訴訟は、ニューメキシコ州など複数の州が、DOGEおよびイーロン・マスク氏が人事管理局、教育省、労働省、保健福祉省、エネルギー省、運輸省、商務省のデータへアクセスすることを阻止するよう求めたもの。
原告側は、DOGEとマスク氏が政府機関の職員を解雇したり、休職処分にしたりすることも禁止するよう要請していた。
州政府側は「マスク氏は米国憲法に違反し、前例のない行政権限を行使している」と主張。「マスク氏は、各省庁の上院承認を受けた指導者の権限を超えて、政府機関の行動を指揮している」と訴えた。
「証拠によると、マスク氏は政府機関の予算を数十億ドル削減し、職員を解雇している。本人の言葉を借りれば『政府機関全体を削除した』、そして今もそれを続けている」と述べ、マスク氏が政府機関の運営に過度な影響を与えていると訴えた。
また「DOGEによるデータアクセスが州の住民の個人情報を危険にさらしている」と懸念を示した。
一方、連邦政府側は「マスク氏はDOGEの職員ではなく、意思決定権も持っていない」と反論。「マスク氏は大統領に助言し、その指示を伝達することしかできない」とする見解を裁判所に提出した。
裁判所の判断:差し止めの条件を満たさず
裁判所一時的差し止め命令を発令するには、原告が訴訟で勝つ可能性が高く、不可逆的な損害を受ける恐れがあるなどの条件を満たす必要がある。
チュトカン判事は、原告側の主張が「もしDOGEとマスク氏が特定の行動を取れば、州に損害が生じる」という仮定に基づいており、回復不能な損害が確実に生じることを示すには不十分だと判断した。
また、原告側が指摘する「マスク氏の行動が憲法の任命条項に違反する可能性がある」という主張についても、一定の正当性は認めつつ「任命条項違反を理由に仮差し止め命令が出された前例はない」と判断し、訴えを退けた。
「原告は、議会の監督を受けない機関と、選挙で選ばれていない個人による、ほぼ無制限の権限行使に疑問を呈している」とチュトカン判事は認めつつも「原告の求める広範な差し止め命令を発令するには、より明確な証拠が必要だ」と結論づけた。
DOGEの設立と他の訴訟の動向
DOGEは、トランプ大統領が就任初日に設立した機関であり「政府の無駄を削減すること」を目的としている。その後、各省庁のトップに対し、DOGEと連携して人事計画を策定するよう指示が出され、政府機関の指導者らもDOGEと協力していると認めている。
DOGEを巡っては、複数の訴訟が提起されており、原告側の主張が認められたケースもあれば、却下されたケースもある。
ニューヨーク州の連邦判事は、DOGEが財務省のデータにアクセスすることを禁じる判決を下した一方、2月18日には、別の連邦判事がDOGEによる教育省データへのアクセスを阻止する要請を却下している。
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