【プレミアムレポート】激しい口論のトランプ・ゼレンスキー会談からわかる5つのこと

2025/03/02 更新: 2025/03/03

2月28日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ホワイトハウスでのドナルド・トランプ大統領、JD・ヴァンス副大統領との会談が激しい口論に発展した後、予定より早く退席した。

この会談は、米国がウクライナの豊富な天然資源へ、アクセスを得るためのパートナーシップ協定を締結する機会として設けられていた。

トランプ氏は、現在進行中のロシア・ウクライナ戦争を早期終結させる交渉を進めようとしており、またウクライナの資源開発に関与することで、これまで拠出した支援資金の一部を回収する狙いがあった。

しかし、会談前から両首脳は資源取引の目的や和平交渉の方針をめぐり対立していた。

先週、トランプ氏はゼレンスキー氏を「独裁者」と批判し、ゼレンスキー氏もトランプ氏の和平交渉へのアプローチに不満を示していた。

米国は2022年のロシア侵攻以来、ウクライナの最大支援国として、これまで1740億ドル以上を拠出してきた。一方、ゼレンスキー氏は、天然資源取引には米国による新たな「安全保障」に対する保証が不可欠だと主張した。

両者の溝は、オーバルオフィス(大統領執務室)での記者会見で鮮明になった。
トランプ氏は、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で次のように投稿した。

「ゼレンスキー氏は平和の準備ができていない。米国の関与が交渉での優位性をもたらすと考えているからだ」

さらに、「私は優位を求めているのではなく、平和を求めている。彼は米国の大統領執務室を侮辱した。平和に向けた準備が整ったら、再び来ることを許す」と述べた。

ゼレンスキー氏、武器支援と安全保障を請け負うことを要求

記者会見の冒頭、トランプ氏はゼレンスキー氏との過去の摩擦について「交渉上の口論はあったが、うまくいった」と振り返った。

その後、トランプ氏はウクライナの天然資源取引について、「米国にとって大きなコミットメントになる」と説明した。

また、安全保障の議論よりも先に資源取引をまとめることを優先したいとの考えを示した。

一方、ゼレンスキー氏は追加の軍事支援を求め、特に米国の防空システム提供を強く要請。

また、ウクライナが自国のドローン生産ライセンスを米国と共有する代わりに、米国の防空システムのライセンスを取得する可能性についても言及した。

ゼレンスキー氏は「戦争が終わった後も、我が国が安心できる状態でなければならない。そのためには、『エアシールド』(防空システム)が必要だ」と語った。

欧州諸国もウクライナへの「安全保障」の請け負うことの意思を示しているが、ゼレンスキー氏は「米国の追加保証がなければ、それらの欧州の誓約は十分に強固とは言えない」と主張した。

トランプ氏は、ウクライナへのさらなる武器供給を支持する姿勢を示しつつも、ロシアとの和平合意が成立すれば、こうした供給は最小限で済むことを望んでいると述べた。

「できるだけ武器供与を控えたい。なぜなら、我々はこの戦争を終わらせるつもりだからだ」

兵士らは、2023年2月22日、ウクライナのリヴィウ州で、地元の準軍事組織TSELが主催した戦闘訓練日中に、ドローンの飛行を練習している(Sean Gallup/Getty Images)

ゼレンスキー氏「妥協はしない」トランプ氏の停戦提案を拒否

大統領執務室での議論の中で、ゼレンスキー氏は、プーチン氏を「殺人者でありテロリスト」と呼んだ。ロシアとの停戦に向けて、プーチン大統領と妥協する意向がないことを明確にした。

2月26日に、トランプ氏は、ロシアとの平和を達成するためには、何らかの妥協が必要になるだろうと、予想を述べた。大統領執務室でのゼレンスキー氏の発言を受けて、トランプ氏は改めて「どんな交渉にも妥協はつきものだ」と強調した。

「どんな交渉にも妥協はつきものだ。確かに彼(ゼレンスキー)もいくつかの妥協をしなければならないだろう。ただ、それが人々が想像しているほど大きなものにならないことを願っている」

しかし、ゼレンスキー氏はこれに反論し、2022年のロシア侵攻以前にロシアとウクライナの間で和平交渉が25回行われたが、すべてモスクワによって反故にされたと指摘した。

「単なる停戦の話し合いを重ねるだけでは意味がない」と主張した。

また、「戦争を始めたのはプーチンであり、戦争の損害を賠償するのは当然の原則だ」とも述べた。

議論の最中、記者から「トランプ氏の交渉姿勢はプーチン寄りではないか」との質問が飛んだ。

これに対し、トランプ氏は「どちらの側にもつこうとはしていない」と反論。

「君たちは、私にプーチンの悪口を言わせたいのか? その上で、『やあ、ウラジーミル、この交渉はどう進んでいる?』と言えると思うか? そんなやり方はうまくいかない]

プーチン氏の行動を非難しながらロシアとの和平交渉を、進めることは期待できないと強調した。

プーチン大統領は2022年10月19日、安全保障理事会の会議を主宰(Sergei Ilyin/SPUTNIK/AFP via Getty Images)

ゼレンスキー氏とヴァンス氏が衝突、米国の外交姿勢に疑問

JD・ヴァンス副大統領は、トランプ政権の和平交渉の取り組みを擁護した。

しかし、ゼレンスキー大統領は過去の外交努力が失敗に終わったことを指摘し、2019年にロシアとウクライナの間で結ばれた停戦合意と捕虜交換協定を例に挙げた。「ロシアは過去の合意を一度も守らなかった」と指摘。

「ヴァンス氏、一体どんな『外交』のことを言っているんだ?」

これに対し、ヴァンス氏は「私は、あなたの国の破壊を止めるための外交のことを言っている。大統領。失礼ながら、大統領執務室に来て、この問題をアメリカのメディアの前で公然と議論するのは、いささか礼を欠いていると思う」と述べた。

その後、両氏の間で、ウクライナがさらなる支援を米国に求めることの是非について応酬が続いた。

ゼレンスキー氏が「この戦争の影響は、いずれ米国にも及ぶ」と警告すると、トランプ氏が不快感を示し、口を挟んだ。

「そんなことは君には分からない。我々が何を感じることになるかなんて、君が決めることじゃない」

トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が、2025年2月28日に大統領執務室で、J・D・ヴァンス副大統領(右)の話を聞いている( Saul Loeb/AFP via Getty Images)

ゼレンスキー氏に「交渉の主導権なし」

ゼレンスキー氏が外交の有効性に疑問を呈すると、トランプ大統領は「ゼレンスキー氏には強硬な交渉を進めるだけの主導権(レバレッジ)がない」と改めて警告した。

「今の君には切り札がない。我々と組めば、カードを持ち始める」と述べた。

ゼレンスキー氏は「私はカードゲームをしているわけじゃない。本気で言っている」と口を挟んだ。

トランプ氏は「君は何百万人の命を危険にさらし、第三次世界大戦のリスクを冒しているんだ。そして、君の態度は、君を支援してきたこの国(アメリカ)に対して極めて無礼だ」と続いた。

トランプ氏は、ウクライナ軍が激戦の中で戦い続けていることを評価しつつ、その成功は米国の支援によるものだと主張した。

「もし我々の軍事装備がなかったら、この戦争は2週間で終わっていただろう」。

トランプ大統領は2025年2月28日、ワシントンのホワイトハウスでゼレンスキー大統領に挨拶した(Madalina Vasiliu/The Epoch Times)

トランプ氏、合意しなければ米国の支援を撤回と警告

議論が激化する中、ヴァンス副大統領は「このような議論は記者の前ではなく、非公開で行うべきだ」と提案した。

「アメリカのメディアの前で対立を見せつけるのではなく、意見の相違を協議で解決しよう」

トランプ氏は、記者団の前で繰り広げてきた理由の一つが、「交渉がどのように行き詰まっているのかを国民に見せるためだった」と説明した。

ホワイトハウス職員が記者を退室させる前、トランプ氏はゼレンスキー氏に最後の警告を発した。

「君の国民は勇敢だ。しかし、君は合意するか、さもなければ我々は撤退する」

「我々が撤退すれば、君たちは自力で戦うしかない。その結果は、想像に難くない」

この後、ゼレンスキー氏は経済協力協定に署名することなく、ホワイトハウスを予定より早く退去するよう求められた。

 

軍事と外交問題を専門とするエポックタイムズの記者
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