野村証券が浙江支店を閉鎖 中国での資産運用業務を縮小する

2025/06/10 更新: 2025/06/10

日本の証券会社・野村ホールディングス(以後、野村HD)は、中国にある4つの支店のうち1つを閉鎖しようとしている。長年にわたる損失を経て、野村HDは中国本土でのウェルスマネジメント(資産管理)事業を縮小している。

ブルームバーグが6月9日に報じたところによると、事情に詳しい関係者の話として、野村HDのブローカレッジ子会社は今年末までに浙江省にある支店を閉鎖する計画だという。この情報はまだ公開されていないため、関係者は匿名を希望している。東京本社の野村HDの広報担当者はコメントを拒否している。

野村HDは4年前の2021年末、この支店を開設したと発表した。当時、同社は中国の富裕層が集中する地域での事業拡大を目指していた。日本最大の証券会社である野村HDは、ウェルスマネジメントを中国での成長戦略の柱と位置づけていたが、中国共産党党首の習近平が掲げる「共同富裕」政策のもと、金融業を含む複数の産業が取り締まりの対象となり、コロナ後の中国経済の減速や激しい競争環境もあいまって、同社の中国での事業は困難を極めている。

2021年8月に中国当局が「共同富裕」政策を打ち出して以降、不動産、学習支援、オンラインゲーム、エンタメ、インターネット大手などの業界が次々と整備・規制対象とされてきた。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の統計によれば、2022年以降、中国当局は金融業界の関係者500人以上を調査しており、その中には規制機関、銀行、保険会社の職員も含まれている。一部はすでに退職して長年たった人物もいた。

上海に本社を置く野村東方国際証券有限公司は2019年の設立以来、毎年赤字を計上してきた。2023年12月31日までの会計年度では、赤字額は前年比で30%減少し、1億2870万元(約1800万ドル)となった。

ブルームバーグが4月に報じたところによれば、野村HDは当初の中国富裕層への重点を縮小し、今後はブローカレッジ業務および資産運用事業の拡充に注力する方針だという。

5年前にはJP・モルガンやスイスの金融大手UBSなどが中国金融サービス市場への投資に熱を上げていたが、現在は多くのグローバル銀行が中国での業務縮小に動いている。

アメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)の就任以降、米中間の貿易摩擦が激化し、中国市場における企業活動の不確実性が高まっている。

なお、野村東方国際証券は浙江省以外にも、上海・北京・深セン市に支店を構えている。

夏宇
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