一年かけて育てた果実は、収穫されることもなく地面に転がり腐っていく。一方で都市のスーパーでは、その果実が何倍もの価格で売られていた。売っても損、買っても損──それでも「誰か」は太った。これが今の中国、壊れた経済の現実だ。
「ライチが売れない」「収穫するだけ損」「摘むだけ無駄」今、中国南部・広東省と広西チワン族自治区の果樹農家から、そんな絶望の声が噴き出した。
今年6月、豊作にもかかわらずライチの価格は崩壊。産地では500gあたり0.5〜1元(約10〜20円)という捨て値が横行し、それでも売れない。路上には売れ残りのライチが山積みになり、農民は泣く泣く家畜のエサにするか、畑にばら撒くしかない。「ゴミ」になったライチの映像がSNSに溢れた。
(ライチの産地、広東省や広西省、果樹農家は涙を呑む惨状)
一方、都市では同じライチが500gあたり8〜16元(約160〜320円)の高値で売られ、消費者の不満は頂点に。「なぜ産地で捨てられ、都市では高く買わされるのか」。
背景には、配送コストの高騰や買い取り業者による過度な値下げ要求があるとされ、農家と消費者の双方が損をする一方で、中間業者だけが利益を得ているという市場構造の歪みが、改めて浮き彫りになった。
結果として、「作っても損」「売っても損」という悪夢のような市場が形成された。
(産地では家畜のエサ)
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