中国俳優・于朦朧(ユ・モンロン/アラン・ユー、37歳)の死は、いまや一人の芸能人の悲劇にとどまらない。9月に北京の高級住宅で起きた彼の不審死は、中国社会に巣食う権力の腐敗を白日の下にさらした。
警察はわずか1日で「酒に酔った転落」と発表したが、他殺を疑わせる証拠が相次いで浮上した。監禁や虐待を示す映像には本人の悲鳴や助けを求める声が記録されている。それでも、加害者側(高官の子息や資本家らを含む権力集団)は現場近くの住民を金と脅迫で黙らせ、投稿や映像は次々と削除、発信者の封鎖や拘束も相次ぐなど、事件の真相は徹底的に封じ込められた。
こうした中で「権力者の要求を拒んだ報復」「特権階級による儀式的殺害」「人体標本ビジネスとの関係」など、共産党支配の闇を示す疑惑がネット上で爆発的に広がっている。白を黒と言い張るような隠蔽と冷酷な沈黙が、人々の怒りを頂点へと押し上げた。

かつて中国では、真相を知る前に事件そのものが消されるのが常だった。しかし今回は違う。削除と封鎖を突破し、動画と証言は海外に拡散。彼の死に拷問の疑いがあるとして、独立かつ透明な調査を求める国際署名サイト(AVAAZ)では署名が50万人を超え、今も勢いを増し続けている。
于朦朧事件の真相究明を求める国際署名サイトAVAAZ(クリックで署名ページへ)は、誰でも参加・署名できる。
事件は体制への信頼を根底から揺さぶり、中国社会の意識構造に変化をもたらした。海外の「退党(共産党組織からの脱退)運動」サイトには「于朦朧事件で中国共産党(中共)の邪悪な本性を知った」との声が相次ぎ、わずか1か月で数十万人が脱退声明を発表。台湾メディア各社も、この「覚醒の波」を社会の転換点として大きく報じた。

一人の俳優の死を通して、人々は長年信じてきた国家と党の正体に気づき始めている。封じ込めようとする闇の力と、真実を求める民意。その衝突は今も続いている。
専門家は「于朦朧事件は、中国社会が恐怖による統治から怒りの覚醒へと転じた象徴だ」と指摘する。
白紙運動がコロナ封鎖を終わらせたように、この事件は新たな裂け目を生んだ。かつては情報を握りつぶせた国家も、今はSNS上の連鎖反応を止められない。沈黙を拒む民意は、もはや後戻りできない地点に達している。

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