中国・湖北省武漢市で8月19日、1日に2人が相次いで橋から飛び降りる事件が発生した。場所は鸚鵡洲大橋と長江大橋で、1人は救助されたが、もう1人はいまだ行方不明である。
現地当局によると、当日夜に2件の通報があり、救助艇が出動した。現場の動画には、川岸に多くの市民が集まり、不安げに見守る姿が映っていた。この事態を受け、武漢市では夜間に救援隊が巡回するほか、橋の上に地域住民を立たせ監視にあたるなど、異常な体制が敷かれ始めている。
こうした光景は武漢に限らない。四川省宜賓市の長江大橋では、昨年わずか半月で12人が飛び降り、助かったのは4人にとどまった。このため「橋監視員」が常駐するようになったが、自殺は止まらなかった。
山西省太原市の迎澤(げいさく)大橋でも、連日のように人が身を投げる事態が続き、「飛び降り名所」として中国SNSで広く知られるようになった。関連の話題はたびたびトレンド入りし、ついには橋全体が封鎖され、防護ネットが設置されるに至った。SNS上では「飛び降りリレー」と揶揄され、絶望の連鎖が拡散している。
大型ショッピングモールも例外ではない。吹き抜けからの飛び降りが相次いだ南京市のショッピングモールでは各階に「(飛び降り防止のための)監視員」が常駐するようになった。こうして、今や橋やモールといった公共空間は、監視員と防護ネットに囲まれた「自殺現場の待機所」と化している。

ネット上には「失業と住宅ローンで未来がない」「飛び降り禁止の看板より、まともな仕事を用意しろ」といった声が相次ぐ。だが当局が強化するのは監視体制やバリケードであり、肝心の生活苦や社会不安への対策は放置されたままだ。
人と人を結ぶはずの橋が、多くの自殺志願者を集める「絶望の舞台」と化している。これを防ごうと当局は監視員を配置し、防護ネットを設置するが、専門家は「死を望む者は別の手段を選ぶ」と指摘する。つまり、応急的な監視や設備強化では根本の解決にはならず、貧困・孤立・社会的圧迫といった背景要因、問題の本質に向き合わぬ限り、「飛び降りリレー」と呼ばれる悲劇の連鎖は終わらない。


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