【ワシントン】米下院は7月3日、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」を可決し、ドナルド・トランプ大統領の政策実現に向けて法案を大統領の机上に送付した。
この法案は218対214の僅差で下院を通過した。共和党は、940ページに及ぶこの法案の採決を前に、反対派議員を説得するため徹夜の審議を行った。
法案は、トランプ大統領が自ら課した7月4日までの期限に先立ち、彼の机上に送られることとなった。大統領は金曜日に署名する見込みである。この法案は、減税、国境警備と国防費の増額、クリーンエネルギー税控除の段階的廃止など、トランプ大統領の国内政策の多くを実現する内容となっている。
この可決は、共和党指導部およびトランプ大統領にとって大きな勝利である。財政赤字への影響やメディケイドへの更なる削減など、様々な理由で上院案に反対していた多様な反対派への対応が求められていた。
最終的に、トーマス・マッシー(共和党、ケンタッキー州選出)およびブライアン・フィッツパトリック(共和党、ペンシルベニア州選出)の2人の共和党議員が、全ての民主党議員とともに法案に反対票を投じた。
投票を遅らせるため、下院少数党院内総務のハキーム・ジェフリーズ氏(民主党、ニューヨーク州選出)は、「マジック・ミニット」と呼ばれる特別な議会ルールを用い、記録的な8時間44分にわたる法案への抗議演説を行った。ジェフリーズ氏はこの法案を「社会的セーフティネットへの前例のない攻撃」と表現した。
ジェフリーズ氏の演説後、下院議長のマイク・ジョンソン氏(共和党、ルイジアナ州選出)は、冗談交じりに大きなバインダーを演壇に置き、民主党指導者の長時間演説を皮肉った。「今日は我が国の歴史において極めて重要な日である」とジョンソン氏は述べた。
徹夜の票固め
法案の本採決に先立ち、その法案をどのような手続き・ルールで審議・採決するかを決めるための事前の採決「ルールズ・ボート(rules vote)」と呼ばれる手続き上の採決は、207対217で膠着し、5時間以上も夜通し開かれていた。この採決では5人の共和党議員が法案の進行に反対票を投じ、さらに8人の共和党議員が棄権し支持を留保した。
こうした事態は、実はその前にも起こっていた。指導部が法案への支持を集めようと奔走する中、直前の別の手続き投票も過去最長となる7時間半にわたって投票が続けられていたのである。
午前1時45分(東部標準時)頃、ジョンソン議長は、上院による法案修正の多さが困難の原因であったと記者団に語った。
「私は上院の同僚たちに、できるだけ修正を少なくするよう促したが、率直に言って予想以上に多く修正された」とジョンソン氏は述べた。「私たちは7月4日の期限を守る。私がそう言ったとき、みんなは嘲笑したが」とジョンソン氏は付け加えた。これはトランプ大統領が独立記念日までに法案を可決するよう議会に求めたことを指している。
保守派のキース・セルフ氏(共和党、テキサス州)、ヴィクトリア・スパーツ氏(共和党、インディアナ州)、アンドリュー・クライド氏(共和党、ジョージア州)、マッシー氏の4人と、中道派のフィッツパトリック氏が当初は法案進行に反対票を投じた。保守派はこの法案について、歳出削減が不十分であり、国家債務が過度に増加すると批判している。議会予算局(CBO)は、この法案が今後10年間で3兆3,000億ドルの赤字増加につながると試算している。
最終的に4人の共和党議員が賛成に転じ、8人の棄権議員も賛成票を投じた。フィッツパトリック氏だけが法案進行に反対票を投じた共和党議員であった。議員たちは午前3時30分(東部標準時)頃に法案を進めた。
当初、法案進行に棄権していたボブ・オンダー氏(共和党、ミズーリ州選出)は、午前3時頃、トランプ政権の説得により法案支持に回ったとエポックタイムズ紙に語った。
メディケイド
民主党は法案の税制条項を一貫して非難し、その主な焦点をメディケイドへの影響に当てているが、メディケイド条項は多くの中道派議員にとっても重要な争点であった。法案には、加入者資格の厳格な確認や、健康で子供のいない成人に週20時間の就労または社会奉仕を義務付けるなど、メディケイドへの連邦支出削減を目的とした措置が盛り込まれている。
中道派議員連盟「メインストリート・コーカス」議長のダスティ・ジョンソン氏(共和党、サウスダコタ州選出)は、7月2日にホワイトハウスで行われた会合が中道派の支持取り付けに効果的だったと示唆した。
会合について問われたジョンソン氏は、トランプ大統領とメディケア・メディケイドサービス局長のメフメト・オズ医師が「具体的な懸念点にうまく対応した」と述べ、法案がメディケイドに与える実際の影響について中道派の懸念に応えたことを示した。
「大統領はこの分野で最高のクロージャー(説得者)であり、その会合で多くの議員を賛成に導いた」と彼は語った。
州・地方税控除(SALT)上限引き上げを求める主にニューヨーク州とカリフォルニア州の共和党議員連盟「SALTコーカス」のメンバーは、上院案で上限が5年間4万ドルに引き上げられたことに概ね満足している様子だった。
法案支持派のジョン・マグワイア氏(共和党、バージニア州選出)は、「今のままでは制度は持続できないが、共和党による今回の見直しで、本当に必要な人が将来もこの制度を利用できるようになる」と述べた。
グレッグ・マーフィー氏(共和党、ノースカロライナ州選出)は記者団に「私たちは無駄、不正、悪用を排除する。資格のない人が制度に残るべきではない」と語った。
ジェフリーズ氏は7月1日、「この法案はメディケイドを骨抜きにし、子どもたちから食べ物を奪い、億万長者に巨額の減税を与える」と述べた。一部の共和党議員も、法案がメディケイド加入者に与える潜在的な影響について懸念を示した。
上院案に最後まで反対していたリサ・マーカウスキー氏(共和党、アラスカ州選出)は、最終的に賛成票を投じたが、それは下院でさらなる改善がなされることを期待してのことだったと述べた。「私は指導部やホワイトハウスに、より良い結果を得るためにこの法案にはさらなるプロセスが必要だと訴えてきた」とマーカウスキー氏は語った。
議会予算局(CBO)は、この法案により2034年までに無保険者が780万人増加すると試算している。共和党はこの試算の正確性に異議を唱えている。
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