甘粛省天水市の私立幼稚園で、幼児233人が鉛中毒と診断される重大な健康被害が発生した。当局は「食用不可の塗料を食品に混ぜたことが原因」と公式発表したが、検査結果の大きな食い違いや地元政府の圧力行為が明らかになり、隠蔽と汚染の疑惑が広がった。
事件が明らかになった「褐石培心幼稚園」の在園児251人のうち233人から血中鉛濃度の異常値が検出された。公式調査の結果、給食に出された一部の食品で添加剤が過剰に使われていた可能性が大きいと発表した。しかし、該当する添加剤メーカーは「製品に鉛などの重金属は含まれていない」と即座に否定した。
さらなる混乱を招いたのは、検査結果の異常なばらつきである。幼稚園が一括して手配した地元での血液検査と、被害園児の保護者たちが自腹で行った西安市の病院での再検査とで、血中鉛濃度が10倍から20倍も異なった。西安の病院では明確に「鉛中毒」と診断される例が多かった一方、地元検査では「軽度の鉛超過」とされたケースもあった。
天水市の官僚が西安市の病院まで押しかけ、検査結果に干渉しようとする様子(被害園児保護者が投稿)
この矛盾に対し、保護者たちは深刻な不信感を抱いた。彼らによれば、地元政府の職員が西安の病院にまで現れ、「地元に戻れば無料で治療する」「ネットでの発信はやめろ」「医療費は払わない」といった圧力や懐柔を試みたという。一部の保護者は「真実を語っただけで逮捕されかねない」と語り、言葉を慎重に選ばざるを得ない状況を明かした。
さらに疑惑を深めているのが、幼稚園から約1キロの位置に存在する国有企業「白銀有色集団」である。この企業は国務院に直属する特設機関「国資委」の管理下にあり、過去にも周辺で重金属汚染が指摘されてきた。
中国の複数のメディア報道によれば、天水市では約20年前にも児童の集団鉛中毒事件が発生しており、当時は地元工場による有害廃水の違法排出が原因と報じられた。
今回、園長を含む8人が刑事拘束されたが、「責任の押し付けではないか」との見方は強い。
中国問題評論家の唐靖遠氏は「今回の鉛中毒は、鉛鉱山からの地下水や土壌の汚染によるものである可能性が高く、地方政府は経済利益と自身の昇進を優先し、この問題を長年隠してきたのではないか」と分析し、「これだけ多くの検査結果を操作し、病院までも制御できる存在は、ただの幼稚園経営者の手には余り、情報をねじ曲げて平然と発表するような行為は、政府レベルの介入がなければ不可能だ」と指摘した。

汚染の根は深く、真相は未だ闇の中にあるが、沈黙を強いられる保護者たちの言葉こそが、最も信じるに足る「証言」ではないか。
中国では、地方経済と体制維持が優先され、市民の健康被害が見過ごされる構造が温存されてきた。今回の事件は、その構図を浮き彫りにしたにすぎないということだ。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。