【秦鵬觀察】パウエルFRB議長「辞任すべき8つの理由」 金融学者・賀江兵が徹底解説

2025/07/16 更新: 2025/07/16

FRB議長パウエル氏が辞任を検討。25億ドルの本部改修問題や金融政策への批判が背景。金融学者・賀江兵氏が「原油価格軽視や高金利政策」など、パウエル氏が辞任すべき8つの理由を詳しく解説する。

アメリカの複数の官僚が、連邦準備制度理事会(FRB)議長ジェローム・パウエル氏が辞任を検討していると証言した。その背景には、25億ドルをかけた豪華な「ヴェルサイユ宮殿」風の本部改修が重荷となっている事情がある。

この報道と重なるように、中国の著名な金融学者・賀江兵氏もパウエル氏を厳しく批判し、辞任すべき八つの理由を提示した。

パウエル氏の辞任検討と官僚の反応

トランプ政権に属する官僚が、一連のメディア報道において、ワシントン本部の改修工事に伴う圧力により、パウエル氏が辞任を考慮していると証言した。別の高官も、政府内の信頼性の高い情報源を通じて、パウエル氏が厳しい批判を受けて辞任に傾いている状況を指摘した。

7月10日、トランプ政権は予算局長ラッセル・ヴォート氏の書簡を通じて、FRBに対する新たな調査を開始した。ヴォートはこの手紙で、パウエル氏が25億ドル規模の本部改修について議会に虚偽の説明を行ったか、あるいは首都圏の建築規定を無視した可能性があると指摘した。

かつてトランプ大統領は、パウエル氏の任期満了(来春)前に解任する意図がないと公言していたが、ホワイトハウスの調査が進むにつれ、早期交代を狙っているとの憶測が再燃している。

パウエル氏の二度の過ちと専門家の指摘

パウエル氏の最終的な去就は依然として不透明である。FRB元チーフ法律顧問のスコット・アルバレス氏は、職権乱用や犯罪、職務怠慢の証拠がなければ、正当な理由による解任は困難であるとの見方を示している。一方で、多くの指摘があるように、改修工事におけるコスト超過は歴史的建造物では珍しくない。

しかし、経済的視点に立てば、パウエル氏には辞任の正当性がある。今年、彼はトランプ政権下の経済に問題があると判断し、利下げを拒否して中小企業や不動産市場に深刻な圧力を加えた。これは二度目の重大な判断ミスである。一度目はバイデン政権時代で、政府の大規模支出によるインフレを否定し、その後インフレ率が7〜9%に達したにもかかわらず、財務長官イエレン氏と共に「一時的」との認識を繰り返した。

専門家たちは立場やイデオロギーによって異なる見解を持つことで、時に現実を見誤る。トランプ政権以降、その傾向は一層顕著になっている。

たとえば2016年、ニューヨーク・タイムズのトーマス・フリードマン氏は、千人超の経済学者の署名を集め、「トランプが大統領になればアメリカ経済は崩壊する」と主張した。だが、実際にはトランプ政権の時、アメリカ経済は最近の数十年間で最良の3年間を経験した。ノーベル賞受賞者たちも「対中貿易戦争によってインフレが進行する」と予測したが、結局はCPIは1.4%にとどまった。

これらの専門家はまた、トランプ大統領の減税政策についても「財政赤字を悪化させる」と非難した。しかし主流の経済学では減税による経済成長効果を十分に教えておらず、レーガノミクスの理論にも理解が乏しい。

こうした風潮の中で、ウォール街の代表格であるJPモルガンCEO、ジェイミー・ダイモン氏は、「リベラル派の友人の多くは心は広いが頭が小さい」と痛烈に批判している。

7月10日、ダイモン氏はさらに、バイデン前政権には「ビジネス界の人間で、バイデンにアドバイスをしている者が一人もいない」と批判し、また前大統領の「知識のなさ」に対して「言葉も出ない」と嘆いた。また、ニューヨーク市長の有力候補者を「共産主義者」と断じ、「現実からかけ離れた極端な理想主義は現実世界では通用しない」と明言した。

賀江兵氏が挙げる8つの辞任理由

中国の金融学者・賀江兵氏は、パウエル氏が辞任すべき8つの理由を提示した。私はその分析に賛同する。以下にその要点を示す。

第一の理由として、賀江兵氏は2020年に公開した論考で、バイデン政権がインフレを招き、その影響で同政権および与党が敗北すると予見した。実際、バイデン政権のエネルギー政策によって原油価格が高騰し、それに伴い物価も上昇した。COVID-19の影響下で現金給付が行われたことも物価上昇に拍車をかけた。

この論文に影響を受けた米国通信産業の人物が、フロリダで不動産を7軒購入し、資産価値を倍増させたという実例もある。

さらに賀江兵氏は次のように述べた。「さらに、昨年12月に私は公開の場で記事を発表し、トランプが貿易戦争を起こして原油価格を下げると予測した。実際に原油価格は88ドルから66ドルに下落した。原油価格が下がれば、あらゆる物価が連動して下がり、特にアメリカにとって大きな影響を及ぼす」

原油価格の重要性と物価との関係については記事内で詳細に論じられており、2本の記事はいずれもこの点を出発点としている。金利の引き上げや引き下げはインフレを抑制できるが、それは主要因ではない。物価変動の根本的な原因は原油価格にある。この本質をパウエル氏は理解していない。「最初の記事を2020年12月に公表した後、2021年にインフレが起こったにもかかわらず、パウエルはなおインフレは一時的だと主張し続けた。彼は愚か者ではないのか」

私はその見解を確信している。比較として、前財務長官かつ連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めたイエレン氏は、2021年に「インフレは一時的である」と断言したが、後に自身の発言について後悔の意を示した。一方、パウエル氏は未だに謝罪や修正を行っていない。

賀江兵はさらに次のように述べた。「一連の経緯の中で、私は昨年12月の記事において、トランプが貿易戦争を開始すると予測した。その中で、貿易戦争がインフレを引き起こさない理由を論理的に示した。続く文章の末尾では、減税が税収を押し上げ、財政赤字の縮小につながることを説明した。これらの予測はいずれも現実となり、貿易戦争の勃発、原油価格と物価の下落が生じた結果、アメリカ財政は4月に2,000億ドルを超える黒字を計上するだろう。(注:実際の数字はさらに大きく、『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、4月の財政黒字は3,080億ドルに達している)」

賀江兵氏は、インフレの根本原因を原油価格に求め、利上げは対処法の一つにすぎないと述べた。パウエル氏はこの基本的な理解を欠いている。減税が税収増につながるという事実も、賀江兵氏は早期に指摘しており、それも現実となった。

このように、賀江兵氏の指摘は理論と実績に基づき、極めて説得力がある。パウエル氏は、その数々の失策に対する責任を果たすべきである。

パウエル氏が辞職すべき第二の理由

賀江兵氏は、パウエル氏の辞職が必要であるとする第二の理由について次のように述べている。
「過去2年間、FRB(米連邦準備制度)の基準金利とインフレ率のゴールデンクロスについて講義で説明してきた。ゴールデンクロスが発生した後、1四半期以内に利下げを検討すべきである。金融政策の観点から見れば、ゴールデンクロスは利上げ効果の顕在化を意味し、利下げへの備えを始める時期を示す」

第三の理由:インフレと金利の乖離

現在のFRBのフェデラルファンド金利とインフレ率は大きく乖離している。基準金利は4.25~4.5%の間で推移しており、インフレ率は2.3~2.4%と低い。このインフレは良性であり、経済成長、旺盛な消費、繁栄の結果といえる。バイデン政権の4年間に発生した悪性インフレとは本質が異なり、当時は物価が急騰し、卵やガソリンの高騰により国民が生活苦を感じていた。

賀江兵氏は、6月のCPIが若干反発すると予測している。これは原油価格の上昇による一時的な現象にすぎず、その後は再び低下し、インフレ率は2%前後に落ち着く見通しである。

第四の理由:実質金利の過剰な高さ

実質金利はインフレ率をはるかに上回っている。ローン金利は7~8%、預金金利も3~4%と高水準にある。フェデラルファンド金利をはじめ、貸出・預金金利、債券利回りのすべてがインフレ率を上回っている。特にトランプ大統領が再び政権に就いて以降、この傾向がより顕著となっている。

インフレの本質的な要因は金利ではなく、むしろ原油価格に起因しており、パウエル氏はまたこの点を見誤ってきた。賀江兵氏は、パウエル氏について、「トランプ氏が『遅すぎる男』と評したが、私は『国を滅ぼす愚か者』と考える」と語っている。

第五の理由:財政政策と社会構造の抑制

現在、アメリカは積極的な財政政策と健全な社会構造の正常化が進行している。しかしパウエル氏は、それを人為的に抑制し、経済と市場に深刻な損失を与えている。定量的に把握可能な損失指標として債券利回りが挙げられるが、現在の利回りはインフレ率を大幅に上回っている。

連邦の債務総額は36.2兆ドルに達しており、仮にFRBの金利が欧州中央銀行並みに2.15%、あるいは2.5%まで下がれば、年初から年末にかけて200ベーシスポイントの利下げで2%程度になり、保守的な試算でも利息支払いは7000億ドル以上削減可能となる。

第六の理由:財政政策と金融政策のミスマッチ

「ビッグ・ビューティフル法案」は本来、積極的な財政政策を示すものであるが、現在の高金利・緊縮的な金融政策がその効果を打ち消している。景気が良い時には、増税と高金利で投資を抑制し、貯蓄を促すべきである。一方、景気後退局面では減税と利下げによって消費と投資を刺激するのが原則であり、この2つが連動して初めて、政策として機能する。

第七の理由:高金利が国際競争力を損なう

FRBの高金利政策は、社会全体の資金調達コストを引き上げている。債券発行による直接金融、銀行融資による間接金融のいずれにおいても利率が高く、アメリカ製品の価格形成に歪みが生じている。この結果、価格引き下げが困難となり、インフレ抑制どころか逆にインフレを誘発している。

資金調達コストの上昇は、アメリカ製品の価格に転嫁され、国際市場での競争力を著しく低下させている。トランプ大統領による貿易戦争や減税は本来、国内産業の保護と企業負担の軽減を目的としているが、金利上昇がこれらの効果を相殺している。

第八の理由:高金利が中小企業を圧迫

いかなる国家の中央銀行も、経済成長を犠牲にしてインフレを抑制すべきではない。FRBの高金利政策は資金調達コストを増加させ、特に未上場の中小企業を倒産の危機に追い込んでいる。迅速な利下げが行われなければ、今後さらに多くの企業が市場から姿を消すだろう。

税負担の軽減ではこの高金利の圧力を十分に吸収できず、一部地域ではすでに中小企業の閉鎖が相次いでいる。この状況は極めて深刻であり、早急な是正が必要である。

総括:パウエル氏は辞職すべきである

賀江兵氏は次のように結論づけている。

「これらすべてが、誰もがパウエル氏を愚か者だと感じていながら言葉にできない理由である。パウエル氏はFRB議長としての資質を欠いており、直ちに辞職すべきだ。能力がなければ、その職に就くべきではない。これが私の忠告である。FRBは過去5年で2度もインフレの落とし穴に陥った。2021年のバイデン政権下のインフレ時、パウエル氏は『一時的』だと主張し、今年は『トランプの貿易戦争がインフレを起こす』と述べた。しかし、3か月以上が経過してもそのインフレは訪れていない。彼の在任が長引けば長引くほど、アメリカ経済への害は深まる。この『国を滅ぼす人物』は早期に退場すべきである」

近年、アメリカ国民の間にもパウエル氏への不満が広がっている。2021年の一年間、パウエル氏がずっと「インフレは一時的」と繰り返したことを嘲笑している。

秦鵬
時事評論家。自身の動画番組「秦鵬政経観察」で国際情勢、米中の政治・経済分野を解説。中国清華大学MBA取得。長年、企業コンサルタントを務めた。米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)、新唐人テレビ(NTD)などにも評論家として出演。 新興プラットフォーム「乾淨世界(Ganjing World)」個人ページに多数動画掲載。
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