中国当局が、スパイ罪で実刑判決を受けたアステラス製薬の日本人男性社員に対し、取り調べ時に自白を促し、その見返りとして量刑の軽減を示唆していたことが関係者への取材で明らかになった。複数の大手報道機関や共同通信などの情報によれば、今回の事例は中国における「司法取引」の実態が報道機関を通じて詳しく判明した、きわめて異例のケースとされている。
この男性社員は、中国でスパイ活動を行ったとして2025年7月16日、北京市の裁判所から懲役3年6月の実刑判決を受けた。判決理由として、中国の裁判所は男性が日本の情報機関の依頼に応じて中国国内情報を提供し、その報酬を受け取っていたと認定した。取り調べの際、中国当局は2018年に導入された刑事訴訟法の新たな規定を根拠に、自白すれば量刑が軽くなる制度について説明したという。
関係筋の話では、こうした自白と引き換えの量刑軽減は「事実上の司法取引」とみなすことができるが、中国国内の有識者からは「強制的な自白につながる恐れがある」との指摘も上がっているという。この新制度は適用例自体が少なく、邦人拘束事案でその実態が明らかになるのは非常に珍しいとして各報道機関も報じている。
また、中国政府の司法判断過程は不透明だという懸念も根強く、今後国際社会や日本国内でも一層の注目が集まる見通しである。今回の量刑が、過去の同種事件と比べて比較的軽いものとなった背景には、対日関係の安定を図りたい中国共産党政権の思惑があったのではないかと指摘する報道も存在する。
一方、当事者の詳細な供述や当局側の事情聴取の具体的な経緯など、現時点で判明していない点も残されている。
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