トランプ氏が少額輸入免税廃止の大統領令 8月末から全世界に適用

2025/07/31 更新: 2025/07/31

アメリカは、これまで中国と香港からの貨物に限定していた少額輸入品の免税措置を全世界に拡大して廃止する。トランプ米大統領は7月30日、800ドル以下の商用貨物に適用されていた「少額免税制度(デ・ミニミス)」を停止する大統領令に署名した。8月29日以降、全ての小口輸入品が関税・通関手数料の対象となる。

ホワイトハウスは声明で「関税回避や危険な合成麻薬の流入、アメリカの産業を脅かす粗悪品を招いてきた重大な抜け穴を塞ぐ措置だ」と説明した。

税関・国境警備局によると、2024年には少額免税制度を利用した輸入が13億件を超え、1日400万件以上がアメリカに届いた。2025年は6月末までに3億900万件と、前年度の年間総数を大きく上回っている。

新制度では、国際宅配便で届く小口貨物も大型貨物と同じ扱いとなり、自動的な免税は認められない。国際郵便経由の荷物は、当初6か月間は原産国に応じて1品目80〜200ドルの定額課税を選択できるが、その後はすべて従価税(価格に応じた税率)方式に一本化される。

ホワイトハウスは、今回の措置が「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づく大統領の緊急権限によって発動されたと説明。違法薬物、貿易不均衡、国内産業への経済的影響といった国家安全保障上の脅威が根拠とされている。2025年に入り、大統領はフェンタニル危機と貿易赤字を理由に国家非常事態を宣言している。旅行者の免税枠(200ドル)や郵便での100ドル以下の贈答品には影響しない。

少額免税制度は1930年の関税法321条に基づき導入されたもので、2016年に上限額が200ドルから800ドルへ引き上げられた。これは海外から消費者へ直接商品を届ける越境ECの拡大に拍車をかけた。

大紀元はこれまで、TemuやSheinといった中国発の小売業者がこの制度の恩恵を大きく受けてきたと報じている。国際貿易の専門家は、これら企業が関税だけでなく、労働・環境基準や製品安全規制も回避できると指摘してきた。

一方で、制度変更によって通関の遅延、消費者コストの上昇、税関当局への負担増を招くとの懸念も出ている。

ホワイトハウスは声明で、今回の措置が最近成立した「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(One Big Beautiful Bill Act)」と足並みを揃えるものだと強調した。同法は2027年から少額免税制度を法的に撤廃する内容を含むが、今回の大統領令によりその実施時期が前倒しされる。これはトランプ政権が進める世界的な貿易秩序再編の一環とされる。

ミズーリ大学卒業。米国の政治および国内ニュースを執筆している。2012年からミズーリ州カンザスシティで、地域、ビジネス、農業ニュースを担当している。