米国防総省 レアアース企業に出資  中国依存脱却へ戦略的一手

2025/08/06 更新: 2025/08/06

米国防総省が、国内のレアアース鉱業大手「マウンテンパス・マテリアルズ」社に直接出資し、同社株式の15%を取得したことが明らかになった。この措置は、米国の防衛産業に不可欠なレアアースのサプライチェーンを中国への依存から脱却させ、国内で安定的に確保するための戦略的な動きと見られている。

マウンテンパス社は、カリフォルニア州に数十年の歴史を持つ米国で極めて重要なレアアース鉱山を所有している。レアアース・磁石製造会社「リアロイズ」のデービッド・アルガイアー最高経営責任者(CEO)は、新唐人テレビのインタビューに対し、「米国は中国に依存しないレアアースのサプライチェーン構築を切実に必要としており、今回の国防総省との取引で、同社は国防産業の需要に応え、戦略物資の備蓄体制を支援することが可能になる」と、その重要性を強調した。

アルガイアー氏は、今回の措置の核心は単なる資金提供ではなく、国防総省が同社と結んだ「最低価格を保障した長期調達契約」にあると指摘する。「これにより、中国の安価な磁石が米国の国防分野へ流入するのを防ぐことができる」と述べ、市場競争における国内企業の保護と育成が真の狙いであるとの見方を示した。

国防総省による民間企業への直接出資は異例であり、アルガイアー氏も「これは特別な投資だ」と語る。この背景には、政府がレアアース分野を「危機的な状況にある」と認識していることがある。

この動きは、トランプ前政権下で始まった重要資源のサプライチェーンを国内に再構築する政策の一環だ。アルガイアー氏が率いるリアロイズ社も、国防総省やエネルギー省と契約を結び、オハイオ州の施設を拡張するなど、業界全体で国内生産能力の強化が加速している。

レアアースは採掘から加工、金属化、そして最終製品である磁石の製造まで多段階の工程を要する。今回の国防総省の動きは、この複雑なサプライチェーン全体を米国内で完結させるための、経済安全保障上の重要な一歩と言えるだろう。

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