米FRBに迫る中国共産党スパイ アメリカの金融中枢を揺るがす長期浸透の実態

2025/08/07 更新: 2025/08/07

中国共産党(中共)があらゆる手段を使って、米連邦準備制度(FRB)に対する長期的な浸透を図っていたことが、調査報告書によって明らかになった。一部のFRB職員はすでに中共の影響下にあり、専門家は「インサイダー取引」の形で中共がアメリカの金融政策に関与・干渉しようとしていると警鐘を鳴らしている。こうした動きはアメリカの国家安全保障にも関わるものであり、FRBには中共のスパイ活動を厳格に防止する対応が求められている。

「中共がFRBに潜入」 ナタリー・ウィンターズ氏の調査報告書

8月4日、保守系ジャーナリストのナタリー・ウィンターズ氏は、自身のサイト上に「中共はすでにFRBに潜入 米中央銀行への中共の浸透に関する衝撃的な新証拠」と題する調査報告書を発表した。

報告書では「中共による10年以上にわたる浸透活動は、すでにFRBにまで及んでいる。彼らは職員を脅迫し、機密情報を盗み取り、アメリカの金融中枢を危険にさらしている」と指摘されている。

一般のアメリカ人は中共スパイが軍や民間企業を標的としている話には馴染みがあるが、実はもう一つあまり知られていない「戦線」が存在する。それがFRBに対する長期的な浸透と操作の試みだ。FRBは「中共スパイ活動の最優先ターゲット」であるという。

FRBはアメリカ経済の心臓部であり、その政策判断は世界市場や国際的な資本の流れを左右し、世界の通貨体制にまで影響を及ぼす。「FRBに浸透することによって、中共は単に情報を得るだけでなく、その影響力を増大させることができる」と報告書は警告する。

ウィンターズ氏はこれを「経済戦争」と捉えており、アメリカが有効な対策を講じなければ、「世界の金融システムの鍵を中共に渡すことになる」として、国家緊急事態に相当する事態だと主張している。

専門家:「インサイダー取引」による政策影響の狙い

サウスカロライナ大学エイキン校ビジネススクール教授の謝田(しゃ でん)氏は、「中共がFRBへ系統的に浸透し影響力を強めている」との報道について、「驚きではない」と述べた。大紀元へのコメントで、「FRBはアメリカの中央銀行であり、世界最大かつ最も重要な金融機関だ。中共がその内部事情を知りたがるのは当然であり、あらゆる手段でそれを達成しようとするだろう」と語った。

セント・トーマス大学国際関係学部の葉耀元(よう ようげん)教授も大紀元の取材に応じ、中共の狙いについて次のように分析した。

「第一の目的は、FRB関係者との頻繁な接触を通じて、機密情報を引き出すこと。第二に、関係者との協力や交流を通じて、アメリカの為替政策に影響を及ぼそうとすること」

葉氏はその一例として、中国はアメリカ国債などを保有する国家ファンドを持っているため、もし中共がアメリカの利上げや利下げのタイミングを事前に知っていれば、それに合わせてアメリカの国債や株への投資から多くの利益を得ることができる」とし、これは「事実上のインサイダー取引」だと指摘した。

さらに葉氏は、「中共はこうした『インサイダー』を通じてアメリカの内部情報を得たうえで、それを使ってアメリカに対抗し、不公平な形で市場競争を行おうとしている」と指摘した。

FRB政策が世界経済に与える影響

謝田氏は、FRBが四半期ごと、あるいは毎月発表する連邦公開市場委員会(FOMC,Federal Open Market Committee)の報告や金利の決定は、「世界中の中央銀行に多大な影響を与える」と指摘する。中共がその内容を事前に把握できれば、中国人民銀行の政策運営や外貨準備の戦略にも好影響を与える可能性がある。

葉氏もまた、FRB議長が政策を決定する際には、周囲の意見を参考にしていることから、中共は浸透させた職員を通じて「アメリカの金融市場や通貨政策の方向性に影響を与えようとするだろう」「中共は今のところ直接的なコントロールまではできていないが、それを目指していることは明らかです。こうした浸透と影響の積み重ねが、最終的にはFRBの政策決定に影響を与えることになるかもしれない」と語った。

中共は学術協力と米中交流を利用しスパイ活動

ウィンターズ氏の報告書によると、中共がFRBに浸透する手口の多くは、「中国の学術機関やシンクタンクの背後に巧妙に隠されている」という。

同報告書はまた、FRBの経済学者が中国の大学と共同で研究論文を執筆しているケースが複数あると指摘しており、その多くが「中共およびアメリカに対する経済戦略」と直接関連している。ウィンターズ氏はこれを「学術を装った浸透」と呼び、学術協力は「中共の影響力がFRB内部に入り込むための『トロイの木馬』だ」と警告している。

謝田氏は、「中共による米国への浸透は、学術機関から研究機関、企業、政府機関、そしてFRBに至るまで一貫している」と述べた。「中共は統一戦線という戦略のもと、公的・非公的を問わず、あらゆる手段を組み合わせて浸透を図っている」と指摘する。

葉氏も、「アメリカはもともと米中の学術交流に対して友好的な姿勢を取っていた。アメリカ側は、政府の性質にかかわらず、相互理解は有益だと考えていた」と語った。

しかし、中共の考え方はまったく異なるという。葉氏は、「中共は学術交流や一般的な交流を通じて、実際にはスパイ活動を行っている」と述べ、「最初から交流を目的として接触してくるのではなく、相手を買収し、浸透することを狙っている。その動機が根本的に違う」と指摘した。

元FRB顧問が起訴 中共と学術連携の過去も

2025年1月31日、米司法省は、FRB国際金融部の元上級顧問ジョン・ハロルド・ロジャース氏を起訴した。容疑は、アメリカの機密経済データを中共政府と関係のある人物に提供したというものだ。

ロジャース氏は中共側と長年にわたり学術的な協力関係にあり、これまでに北京大学、清華大学、上海財経大学で講演を行っている。現在も、上海の復旦大学国際金融学院で教授職に就いている。

米上院の報告書によれば、FRBの内部スパイ対策チームは、全米にある8つの地区連邦銀行のうち13人の職員が中共と密接な関係を持っていることを突き止めている。

中共の「経済戦争」 FRBに求められるスパイ対策の強化

葉氏は、「もしFRBの政策決定が中共に筒抜けになれば、中共は米中経済競争で優位に立ち、アメリカに対する圧力を強めるだろう。まさに経済戦争そのものだ」と警鐘を鳴らした。

謝氏も同意し、「これは中共が対米戦略で進める『超限戦』の一部だ。中共の超限戦には金融や通貨を利用する手段も含まれており、FRBを標的とする理由はそこにある」と述べた。

「米ドルの強さは、アメリカの経済力そのものであり、国力を支える重要な柱でもある。中共はアメリカの敵対勢力として、当然そこを標的にしようとする。もしFRBの内部情報を手に入れられれば、ドルを弱体化させたり、信用を失わせたりするために、金融操作を仕掛ける可能性がある」

謝氏はさらに、中共がBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカ)に対して、ドルに代わる「BRICS通貨」の構想を推進していると指摘。中共は他通貨を用いてドルに代わる国際基軸通貨を目指しており、アメリカ側もこれを厳重に監視しているという。トランプ氏も「もし他国が自国通貨を操作してドルの地位を脅かすようなことをすれば、100%の懲罰関税を課す」と明言している。

葉氏は「FRBは中共のスパイ活動を封じるために、より厳格かつ実質的な対応を取るべきだ」「まずは、スパイ行為そのものを徹底的に防ぐことが必要だ。FRBのように巨大で極めて重要な機関において、スパイが自由に動き回れるような状況を放置すれば、それはアメリカの国家安全保障そのものを脅かす重大な問題なのだ」と訴えた。

易如
程雯
関連特集: 浸透工作