トランプ氏関税に違法判断 米控訴裁 大統領権限逸脱

2025/08/30 更新: 2025/08/30

米連邦巡回控訴裁判所は8月29日、トランプ大統領が発動した関税の大部分について「違法」との判断を示した。ただし判決の効力は10月14日まで発生せず、その間に関税は維持される。政権は最高裁に上訴することが可能だ。

判決は7対4の多数意見で、4月に発表された対等関税の大半を違法と結論づけた。大統領が1977年制定の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、非常事態権限を誤って用いたと指摘した。

裁判所は「国際緊急経済権限法は大統領に国家緊急事態への対応で幅広い権限を与えているが、関税や課税を課す権限は明確に含まれていない」と判断。議会が同法で従来の慣行を改め、大統領に無制限の関税賦課権を与える意図があったとは「考えにくい」とした。

判事らは29日、「この法律は関税(あるいはその類義語)に言及しておらず、大統領が関税を課す権限を明確に制限する手続き上の歯止めも設けられていない」と付け加えた。

トランプ氏は関税を通商政策の柱に据え、中国をはじめとする輸入国に圧力をかけてきた。関税は交渉の切り札となる一方、金融市場の混乱要因にもなっている。

トランプ氏は判決後、自身のSNSトゥルース・ソーシャルに関税撤廃は「アメリカを破滅する」と投稿。「最終的にアメリカが勝利する」と最高裁での逆転に自信を示した。

すべての関税は有効だ。きょう、極めて党派的な控訴裁判所が我々の関税は撤廃されるべきだと誤った判断を下したが、最終的に米国が勝利することを彼らもわかっている」

また、「アメリカはもはや、敵味方を問わず、製造業者や農家、国民全体を苦しめる巨額の貿易赤字や不公正な関税・非関税障壁を容認しない」と強調した。

労働者の日を前に「関税こそが労働者を守り、アメリカ製品を支える最良の手段だ」とも訴えた。

トランプ氏は8月にも、関税が無効になれば「1929年の大恐慌の再来になる」と警告。関税収入が失われれば経済が打撃を受けると主張していた。

同氏は4月、長年続く貿易赤字を理由に国家非常事態を宣言。中国共産党政権、カナダ、メキシコに対する関税は、フェンタニル流入や不法移民の阻止にも必要だと説明していた。

今回の判断は、鉄鋼やアルミ輸入への課税など、他の法的根拠に基づく関税には影響しない。ニューヨークの国際貿易裁判所は5月、大統領が権限を逸脱したとしてすでに違法判決を下しており、控訴裁は6月にその執行を一時的に差し止めた。

ニューヨークを拠点とするエポック タイムズの速報記者。