どうなるトランプ関税 インフレ抑制を目的に、特定の農産品関税を引き下げ

トランプ氏 ブラジル産牛肉とコーヒー輸入関税撤廃

2025/11/22 更新: 2025/11/22

ドナルド・トランプ米大統領は、かつて自らが導入した40%の関税政策の対象となっていたブラジル産牛肉やコーヒー、およびその他の農産品の輸入関税を撤廃する大統領令に署名したとホワイトハウスが発表した。この大統領令は2025年11月13日以降に輸入された商品に適用され、それまでに徴収された関税の返還も視野に入れている。

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領は15日、報道陣に対し「本日、トランプ大統領がいくつかのブラジル産品に課されていた関税引き下げを開始したことを喜ばしく思う」と述べた。

11月14日、トランプ大統領は複数国を対象とし牛肉、コーヒー、バナナ、トマト、トロピカルフルーツなど200品目以上の食料品を関税から免除する包括的な大統領令を発出。この措置も11月13日に遡って適用される。

トランプ政権は7月、国際緊急経済権限法(IEEPA:International Emergency Economic Powers Act)を発動し、ブラジル政府からの脅威や人権侵害、法の支配を損なう行為への懸念を理由に国家非常事態を宣言。その後、既存の相互関税に加えてブラジル製品に40%の追加関税を課す措置を8月初旬より実施した。

10月28日、米上院はボルソナロ前ブラジル大統領の訴追などを理由とした国家非常事態を終了し、トランプ氏による対ブラジル関税撤廃を求める超党派法案を可決した。法案は現在下院で審議中である。

トランプ氏は7月、ルーラ大統領宛てに書簡を送り、ボルソナロ氏へのクーデター計画容疑の裁判は「魔女狩り」であり、ブラジルは「国際的な恥」だと非難した。また、同裁判の行方を注視すると表明した。

同書簡でトランプ氏は「この裁判は本来行われるべきではない」とし、米国のSNS企業に対しブラジルが罰金や禁止措置を課し、言論の自由を損なっているとも指摘した。ルーラ大統領はこれに対し、報復関税を検討すると応じた。

ホワイトハウスは7月30日、ブラジル産の半製品銅およびその加工品の輸入に50%の関税を課すと発表。政策の目的は「ブラジル政府による異例かつ重大な政策が米国企業に被害を与えていることへの対応」にあるとされた。ただし精錬金属は対象外とされた。

7月30日の大統領令により、小額貨物の関税免除も廃止され、全輸入銅への関税が50%に引き上げられたほか、ブラジルからのその他の輸入品への追加関税も決定。さらに10月には、ブラジルを含む18カ国のアルミ板製品に対し関税措置を講じた。

10月26日には、トランプ大統領とルーラ大統領がクアラルンプールで開催された第47回ASEAN首脳会議で会談し、両国の代表団による関税・制裁の緩和に向けた協議を開始することで一致した。

ブラジル牛肉輸出業協会(ABIEC)は、「今回の関税撤廃決定は通商交渉の効果を示すものだ」と評価している。コモディティ分析のJ. Ganes Consulting社のジュディス・ガネス代表は「ボンデッド倉庫(保税倉庫)に保管されていたブラジル産コーヒーが、関税撤廃を受けて一斉に米国の焙煎業者(ロースター)向けに出荷され始めるだろう」と述べている。

エポックタイムズの記者。カリフォルニアのニュースを担当。2018年の移民キャラバン危機の際には編集者として米国とメキシコの国境の現場を報道。