アメリカの電気自動車バッテリー工場建設現場で違法就労とされて拘束された韓国人労働者約300人が、大韓航空の専用機で帰国する運びとなった。韓国政府は強制送還ではなく自主的帰国を重視し、今後の再入国にも配慮した対応を進めている。
大韓航空の広報担当者は9月9日、専用機をアメリカ・アトランタに派遣し、米移民税関執行局(ICE)の拘置下にある韓国人労働者を最速で9月10日夜に帰国させる予定であると明らかにした。
広報担当者によれば、派遣される航空機はボーイング747-8i型旅客機で座席数は368席である。同機は韓国・仁川から米ジョージア州アトランタまで飛行し、その後仁川へ戻る計画である。
アメリカ国土安全保障省(DHS)は9月4日、現代自動車とLGエナジーソリューションが投資する電気自動車(EV)用バッテリー工場の建設現場に抜き打ち捜査を行い、475人を逮捕した。そのうち約300人が韓国籍である。ICEによれば、逮捕者はいずれもアメリカ国内で違法に就労しており、多くは就労を認められない短期滞在ビザや観光ビザで滞在していたという。
韓国の趙顕(Cho Hyun)外相はすでにワシントンを訪れ、この問題についてアメリカ側と協議した。韓国政府は労働者が強制送還ではなく自主的に出国する形を確保し、将来の合法的な再入国を可能とするよう求めている。韓国・聯合ニュースによれば、アメリカ移民当局は当初、即時送還と5年間の再入国禁止、もしくは拘留のうえ数か月間の審理、といった二つの選択肢を提示していたとされる。
韓国政府高官はジョージア州で拘束された韓国人らと面会した後、ロイター通信に対し「政府は労働者の帰国手続きを開始した」と述べた。
労働者らはジョージア州フォークストンのICE拘置センターに収容されている。同施設はアトランタから約428キロ離れた場所にある。問題となったEVバッテリー工場は同州ブライアン郡サバンナ近郊に所在する。

アメリカ
逮捕された技術者や設置作業員の多くはB-1ビジネスビザで短期滞在中であった。韓国人4人を弁護している移民弁護士チャールズ・クック氏によれば、拘束された労働者の多くはB-1ビザで認められる業務に従事しており、本来は数週間の滞在で「75日を超えることはなかった」と述べている。クック弁護士は「ICEの拘置下にある韓国人の大多数は技術者、あるいはアフターサービスや設置業務に従事する人々である」と説明した。
さらにクック氏は指摘する。アメリカには当該工場で使用する機械設備を製造できる企業が存在せず、海外から輸入した機材を現地で設置・修理する必要がある。アメリカ人がこうした業務を独自に担えるようになるには3〜5年の訓練が必要であるという。
米韓両政府は拘束された労働者のビザ詳細を公表していない。だが米リショアリング研究所のローズマリー・コーツ所長は「外国企業が自国の従業員を派遣して設備設置を行い、その後アメリカ人を育成する方式は、時間とコストの節約のため一般的に採用される」と述べた。
B-1ビジネス訪問者ビザは外国人に最長6か月間の滞在を認め、この間は費用精算も可能で、給与は現地ではなく母国企業から支払われる。ロサンゼルスの移民弁護士アンジェロ・パパレリ氏によれば、B-1ビザでは監督業務は認められるが自ら建設作業に従事することはできない。ただし契約に明記していれば機械設置作業は許可されるという。
さらに韓国はアメリカ電子渡航認証システム(ESTA)利用可能な41か国の一つである。ロサンゼルスの移民弁護士リタ・ソストリン氏は「ESTAを利用すれば正当な理由がある場合、最大90日間までビザなしで入国でき、その間はB-1ビザに準じた活動が可能である」と説明した。
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