米国 中国資本船に高額港湾料の導入迫る 日本にチャンス?

2025/10/08 更新: 2025/10/08

アメリカが中国関連船舶に対して港湾使用料の徴収を開始するまで、残り1週間となった。トランプ大統領によるこの措置は、中国造船業の支配的地位を弱めることを目的としており、来年には世界の主要海運会社上位10社に対して合計32億ドルの費用負担が発生すると見込まれている。

米格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)は今週公表した報告書において、港湾使用料の発効日である10月14日が延期される可能性をめぐり、業界が様子見の姿勢を示していると指摘した。その一方で、この不確実性がすでに海運会社に不安を与え、船隊運営戦略に地政学的リスクを加えていると述べた。

トランプ政権は、中国企業が建造・所有・運航する船舶に対する料金徴収がアメリカ造船業の再興資金の確保に寄与すると説明している。アメリカ議会では、この長期的資金の運用方針を定める法案が審議中であり、与野党双方から強い支持を受けている。

米中両国の造船能力には大きな差がある。昨年、アメリカの造船所が建造した商用船はわずか10隻未満であったのに対し、中国の造船所は1千隻を大幅に上回る生産量を記録した。イギリスのクラークソンズ・リサーチ社のデータによれば、中国造船所が新たに受注した契約量は世界の約70%を占め、中国は世界最大の造船国の地位を確立している。

アメリカ通商代表部(USTR)は、船主や運航事業者に対し、自船が港湾使用料の対象となるか否かを確認する責任があると通告した。料金は米財務省の「Pay.gov」サイト経由で支払いが必要となる。

中国船舶への費用負担内容と基準

今回の港湾使用料の規定は以下の通りである。

2026年の初期料金(年間最大5回徴収)は、中国資本または中国運航の船舶の場合、貨物積載容量1総トンあたり80ドルを基準とし、毎年引き上げられ、2028年には1総トンあたり140ドルとなる。

中国資本ではないが中国で建造された船舶の場合、2026年における初期料金は1総トンあたり23ドル、または荷卸しコンテナ1本あたり154ドル(いずれか高額の方を適用)とし、毎年引き上げられ、最終的には1総トンあたり33ドル、または荷卸しコンテナ1本あたり250ドルに達する。

業界からの反対を受け、USTRは当初案の料金基準を緩和し、多くの米国内運航事業者を免除するとともに、液化天然ガス(LNG)輸送船の課金期限を延長した。一方で、徴収範囲を拡大し、米国外建造の全ての自動車運搬船(ロールオン・ロールオフ船)を、米国旗を掲げる船舶を除き新たに課金対象とした。

ロイター通信によれば、海事データ会社アルファライナー(Alphaliner)は、中国遠洋運輸(COSCO)グループ(傘下にオリエント・オーバーシーズ⦅OOCL⦆船隊を含む)が最も高い料金負担リスクに直面すると予測している。報告書によれば、COSCOグループの2026年の費用負担は最大15.3億ドルに達する可能性があり、これは上位10社の合計負担額32億ドルのほぼ半分に相当する。

海運会社の対応と戦略変更

この負担を回避するため、フランスのCMA CGMなど他の海運会社は、中国建造船舶の再配備や航路変更を既に実施している。

世界の海運業が中国造船所への依存度を高めている現状を踏まえ、商業海運は中国共産党(中共)にとって重要な外交手段とみなされている。日本船主協会の長澤仁志会長は、船主らが中国造船所への発注を再考し、代替策を積極的に模索し始めたと述べた。

トランプ大統領による今回の措置は、かつて世界一の造船国であった日本の造船業の再興を後押しする可能性があり、日本政府は70億ドル規模の基金設立を提案している。

一方、中共も対抗姿勢を強めている。中国共産党の李強首相は、中国船舶や船員への「差別的措置」に対抗する方針を明記した政令に署名した。

トランプ大統領と中国共産党の習近平は、10月末から11月1日にかけて韓国で開催予定のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で会談する予定であり、関連する貿易摩擦が主要議題となる見通しである。

李言