イスラエルとハマス 停戦と人質解放の第1段階合意に署名

2025/10/10 更新: 2025/10/10

イスラエルとイスラム組織ハマスは10月9日、ガザ地区での停戦と人質解放を柱とする「第1段階の合意文書」に署名した。イスラエル政府は同日夜、合意を正式に承認し、24時間以内に停戦が発効する見通し。これにより、2年に及ぶガザでの戦闘が終結に向けて大きく前進した。

ネタニヤフ氏はXで、「政府は生存者および死亡した全ての人質の解放に向けた枠組みを承認した」と発表した。

政府報道官によると、停戦は24時間以内に発効し、ハマスは72時間以内に人質を解放する見通し。すべての人質が解放されるのは13日になるとみられている。

合意の一環として、イスラエルは終身刑を含む約2千人のパレスチナ人受刑者を釈放する。このうち約250人は重罪で服役中とされる。また、イスラエル国防軍(IDF)はガザ地区の53%を引き続き掌握するラインまで撤退する計画だ。

今回の発表は、トランプ米大統領が前日に、イスラエルとハマスがアメリカ主導の和平案に合意したと表明した直後に行われた。トランプ氏は「両者が我々の平和計画の第一段階に署名した。これにより全ての人質が間もなく解放され、イスラエルは合意されたラインまで部隊を撤退させる」とSNSに投稿し、「強固で永続的な平和への第一歩」と強調した。

英BBCによると、米政府高官は、停戦の履行を監視するため米軍主導の約200人規模の多国籍部隊が編成されると明らかにした。部隊はエジプト、カタール、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)などの兵士で構成される見通しで、役割は「監視・確認し、停戦違反を防ぐこと」だという。

別の米高官は、米兵がガザ地区内に駐留することはないと説明。その代わり、米側が共同統制センターを設置し、ガザに入る多国籍部隊の指揮と連携を担う。

ネタニヤフ氏は、今回の合意に向けて尽力したトランプ大統領とアメリカの交渉チームに謝意を示した。

同首相は「私たちは今、重要な局面にある。2年間にわたる戦いの目的の一つは、生死を問わず全ての人質を取り戻すことだった。その目標がまもなく実現しようとしている」と述べた。

さらに、「トランプ大統領とそのチームの支援なしには、この成果は得られなかった。彼らの努力と、ガザで戦うイスラエル兵の勇気が軍事的・外交的圧力となり、ハマスを孤立させた」と強調した。

トランプ氏は今週末にも中東を訪れ、ハマスによる最後の人質20人の解放の場に立ち会う意向を示している。

米ホワイトハウスによると、今回の合意には、カタールを仲介役とした数か月にわたる交渉の結果が反映されている。米政府高官は「過去の人質交換の事例を基に原則を整理し、停戦やガザ統治の在り方、イスラエル軍の再配置などを協議した」と説明した。

停戦の枠組みが承認される前から、イスラエルとガザでは喜びの声が広がっていた。

ガザ南部ハンユニスでは多くの住民が通りに繰り出し、歌や歓声で合意を祝った。イスラエルでは人質の家族がトランプ氏やイスラエル政府に感謝を表明。テルアビブ中心部の「人質広場」には多くの市民が集まり、合意成立を喜んだ。

エルサレムの市民は「人質が帰ってくると聞いて本当にうれしい」と語った。専門家は「今回の合意は、2年に及ぶガザ戦争終結への最大の一歩」と評価している。

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