米中貿易摩擦が再燃するなか、中国最大の輸出商談会「広州交易会(第138回)」が10月15日に開幕した。アメリカのドナルド・トランプ大統領が中国製品への「100%関税」を11月に実施すると警告した直後で、会場は例年の熱気とは対照的に重苦しい空気に包まれた。
もっとも、官製メディアが「盛況」と伝える一方で、実際の会場は年々冷え込みが目立つ。かつては海外バイヤーで通路が埋まったというが、今年は人の流れもまばらだ。
中国共産党系の経済紙「証券時報(人民日報社傘下)」は、今回の展示会について「ブースは7万4600区画、出展企業は約3万2千社、来場登録者は24万人を超えた」と報じ、表向きの規模を強調した。
しかし、香港紙「南華早報」によれば、会場全体には不安と焦燥が漂っており、出展業者の多くがアメリカ市場から撤退し、東南アジアやヨーロッパ市場への転換を模索しているという。
本紙の取材に応じた広東省の輸出業者は「アメリカ向けの注文はもうほとんどない」と語る。浙江省の照明メーカー代表も「アメリカの注文が減り、これ以上ヨーロッパ市場まで失えばもう立ち直れない」と危機感を示した。
関税リスクを避けようと、ベトナムやマレーシアに工場を移す企業も増えている。広東の家電メーカー担当者は「移転すれば関税は避けられるが、利益率は下がり、資金繰りは限界に近い」と明かす。
一方で、会場内では企業同士の過剰な競争が激化している。出展登録や通訳資格の条件が厳しくなり、ブース料は1区画8万元(約160万円)に跳ね上がった。参加条件の厳格化により、多くの中小企業が締め出されており、残った企業は「出展をやめれば取引先を失う」との不安から、高額を支払ってでも出展を続けている。
欧米の大口バイヤーは姿を消し、業者同士の値下げ合戦が常態化している。原料を落とした低品質の品も増え、現場からは「このままでは共倒れだ」との悲鳴が上がる。
アメリカ在住の経済学者・黄大衛氏は「100%関税が現実化すれば、中国の中小輸出企業は一気に崩壊しかねない」と警鐘を鳴らす。
中国税関の統計によれば、9月の対米輸出は前年同月比で27%減。華やかな展示会の裏で「世界の工場」と呼ばれた中国の輸出モデルは深刻な転換期を迎えている。
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