ミャンマー軍 電信詐欺拠点「KK園区」を爆破 中国共産党の関与に再び注目

2025/10/30 更新: 2025/10/30

ミャンマー東部の電信詐欺拠点「KK園区」が、ミャンマー軍の掃討作戦を受けた。軍は数日間にわたり無人機から爆薬を投下し、建物を次々に爆破した。この攻撃により、園区内の多くの人々がタイ側へ逃走した。中共政府はKK園区の爆破や、アメリカによるカンボジアの太子グループへの制裁について控えめな報道にとどめているが、背後での不透明な関与が改めて注目を集めている。

KK園区爆破 千人以上がタイに逃亡

タイの公共放送によると、ミャンマー軍は10月24日からKK園区の施設への爆撃を開始し、タイ国境付近では連日、爆発音が響いた。情報筋によれば、軍は爆弾を搭載した無人機を使って園区を攻撃し、地上部隊も10月26日には爆薬を用いて施設を破壊した。ミャンマー軍は「タイとミャンマーの国境に位置するこの悪名高い詐欺拠点を制圧した」と発表し「内戦で一時的に失われていた重要な領土を奪還した」と強調している。

10月16日からKK園区への取り締まりが強化され、千人規模の人々が混乱に乗じて逃亡した。タイ当局は24日「すでに千人以上が国境を越えタイに避難しており、その大半は中国人だ」と明らかにした。27日時点のタイ側の集計では、モエイ川を渡ってタイに入った外国人は1525人に達した。

SNSに投稿された動画には、スーツケースを引いて逃げる人々、バイクで移動する者、徒歩で園区を離れる者、さらには川に飛び込んで命懸けで脱出を試みる人々の姿も映っており、戦時中の難民流出を思わせる事態となっている。

タイ陸軍第3軍区のウォラット司令官は「ミャンマー軍が他の詐欺拠点への攻撃を拡大した場合、さらなる越境逃亡者が発生するだろう」と予測している。

東南アジア詐欺拠点に国際社会の批判強まる 韓国人学生死亡事件で注目高まる

国連薬物・犯罪事務所の年初の報告書によれば、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどで犯罪組織による「工業スケールのネット詐欺拠点」が運営されている。国際社会は最近、ミャンマーとカンボジア両国に対し、詐欺組織の取締り強化を強く求めている。

ブルームバーグ誌は、ミャンマー軍政の報道官が「軍と対立するカレン民族同盟(KNU)がKK詐欺園区に土地を貸与し、治安維持まで担ってKNU指導部の利権としている」と非難したと報じた。一方、KNU報道官はこれを否定し「国際社会から軍政に圧力がかかるたびに、責任転嫁のために名指しされる」と反論している。

タイ・ミャンマー国境付近のミャワディ南部にあるKK園区は、近年「ネット詐欺・資金洗浄・人身売買」の温床となっている。何千人もの人々が高収入をうたう求人に誘い込まれ、精巧な詐欺の実行を強いられ、世界中の被害者から数十億ドルが詐取されている。

今年初めには中国人俳優の王星氏がタイで拉致され、ミャンマー・ミャワディに連行された事件が国際的な注目を集めた。その後、タイ側が早い段階で電力や燃料供給を遮断した結果、数千人の中国人労働者が詐欺施設を退去し、チャーター便で中国へ帰国する動きも見られた。

KK園区は現地に複数ある詐欺拠点の一つにすぎない。カンボジアにも大規模な詐欺拠点が存在し、韓国の強い圧力を受けている。20歳の韓国人学生が偽求人でこの地に呼び寄せられ、ネット詐欺業務を拒否したとして拷問を受け、8月8日にカンボジア・コンポー州ボコ山付近で遺体となって発見された。10月21日には遺骨が韓国へ送還された。

韓国の李在明大統領は10月13日の幹部会議で「韓国人に手を出すな。さもなくば徹底的に報復する」と強い警告を発した。

10月22日午後、カンボジア警察はプノンペン・プサンチェ区にある詐欺拠点とみられるビルを急襲し、韓国人57人、中国人29人を含む86人の容疑者を逮捕した。韓国国会議員団も現地で調査に立ち会った。

中国共産党のKK園区爆破への消極姿勢 黒幕指摘も

中国国営メディアはKK園区爆破について極めて控えめに報道している。新華社は10月20日に200字足らずの速報を出したのみで、鳳凰網も簡素な報道にとどまり、抖音(Douyin)に投稿されていた現場映像も、記者が確認したところ数時間で削除されていた(理由は不明)。

海外のSNSでは「中国共産党の強国神話に酔いしれている人は、この国が自分たちに本当に何をもたらしているのか冷静に考えるべきだ」といった指摘も見られた。

2025年1月、中国人俳優の王星氏がミャワディ一帯で誘拐され、無事救出された事件では、微博ユーザーが共助ドキュメントを作成し、家族による自助活動のために情報を集めていた。しかし、数日で千件以上の救護要請が寄せられた後、この文書は中国ネットから即座に削除された。

今回のミャワディ詐欺拠点への空爆をめぐり、中国のネットユーザーらは「何年も漢方薬を飲んでも効かなかったのに、アメリカの制裁という西洋薬を一発打ったら即治った」と皮肉を込めて投稿した。すなわち、中国当局が「要請」や「協議」を繰り返しても成果が上がらなかった一方で、アメリカが制裁を科すと、わずか数日で詐欺拠点が解体されたという認識である。

また、X(旧Twitter)上では「中国共産党はミャワディ詐欺を解決できないのではなく、実際は元凶であり黒幕だ」との指摘も相次いでいる。

報道によると、タイ・ミャンマー国境には30余の詐欺団体が存在し、年間数百億ドル規模の詐欺が横行している。これらの詐欺拠点はミャンマーの戦時経済に不可欠とされ、軍政府は各種反政府組織と交戦しながらも、中国共産党の支援によって政権を維持しているとみられる。

内部関係者は「東南アジアの詐欺拠点と中国共産党の『一帯一路』構想は共生関係にあり、この構想を通じて中国共産党は海外での影響力を拡大し、党高官や関係者のビジネス利権にも直結している」と証言している。

米英が制裁した太子グループとは 中共スパイの後方拠点

今回のKK園区爆破の背景には、米英両政府が10月中旬、カンボジアの「太子控股グループ(Prince Holding Group)」および創業者の陳志に制裁を科した事実がある。同グループは国際的な詐欺ネットワークを運営し、電信詐欺、暗号資産の窃盗、性的脅迫など、総額140〜150億ドル規模の犯罪に関与しているとされる。制裁内容には、世界中の資産や128の関連会社、17人に及ぶ口座の凍結が含まれる。

米司法省から正式に起訴された陳志は、その神秘的で強大な背景により大きな注目を浴びている。

海外在住の中国民主活動家・盛雪氏は「陳志は中共官僚の福建派や習近平の姉・斉橋橋の資産管理、マネーロンダリングを担い、詐欺拠点運営は副業にすぎない」とSNSで指摘している。

かつて太子グループに勤め、現在オーストラリアに亡命している元中国スパイのEric氏も「太子グループは中国共産党がカンボジアや東南アジアで秘密活動を展開する最大の代理人であり、資金・人材・物流などあらゆる面で支援している。企業本体は実質的に中国共産党系スパイ組織の資金庫かつ後方拠点である」と証言した。

米司法省によると、陳志は中国国家安全部、公安部、統戦部から庇護を受けているという。

中国のネットユーザーの間では「陳志や太子グループが国際犯罪組織として米英韓など複数国で摘発された後、中国共産党がSNS上の暴露投稿や動画へのコメントを削除している」との報告が出ている。「当局が自ら太子グループを隠蔽し、庇護しているのは明らかだ」との声も上がっている。

寧海鐘
中国語大紀元の記者。