ブラジル警察が大規模な麻薬掃討作戦を展開 119人が死亡

2025/10/30 更新: 2025/10/30

ブラジル当局は、リオデジャネイロで行われた麻薬組織を標的とした大規模な警察作戦により、少なくとも119人が死亡したことを確認した。事件現場の住民たちは10月29日、数十体の遺体を街頭に並べて暴力に抗議した。

大規模な麻薬掃討作戦が惨事に

今回の作戦は28日に開始され、複数のスラム街で麻薬取引を行う「赤の司令部(Comando Vermelho)」ギャングの制圧を目的としていた。計画は2か月以上前から準備し、敵を誘い出して森林地帯に追い込み、特殊部隊が待ち伏せするという戦術を採った。警察によれば、これは同州史上最大規模の麻薬掃討作戦であるという。

リオ州公安局長ヴィクトル・サントス氏は記者会見で「今回の作戦が高い致死性を伴うことは予想していたが、望んでいた結果ではない」と認めた。警察は、死亡者119人のうち警察官4人を含むと発表したが、公的弁護機関は最終的な死者数は132人を超える可能性があるとしている。また、警察は113人を逮捕し、118丁の銃器を押収した。

クラウディオ・カストロ州知事は作戦を擁護し「死亡者は全員武装した犯罪者だ」と主張し、「麻薬テロリズムへの反撃である」と述べた。

遺体が街頭に並ぶ 警察暴力への抗議

事件が起きたのはリオ北部のペーニャ地区のスラム街である。住民たちは夜通しで森林から遺体を運び出し、少なくとも70体が幹線道路上に並べられた。午後には数百人の住民がバイクで州政府庁舎前に集まり、血の手形が付いたブラジル国旗を掲げて警察の暴力を非難した。

人権派弁護士ギリェルメ・ピメンテル氏は、多くの遺体に「縛られていた痕跡、刃物による傷、至近距離での銃撃」など処刑の兆候が見られると指摘し「複数の家族が遺体に拷問の跡があったと報告している」と述べた。

国連人権高等弁務官事務所は声明を出し、今回の虐殺は「ブラジルにおける周縁化された地域で警察による過剰な暴力の傾向を引き継ぐものだ」と非難し、国際人権法に則った迅速かつ効果的な調査を行うよう当局に求めた。

連邦政府の対応と今後の影響

ブラジルのリカルド・レヴァンドフスキ司法相が、ルラ大統領は作戦の詳細を事前に知らされておらず「極めて衝撃を受けている」と明かした。司法相は、リオ州政府との協議を行い、連邦の治安部隊を追加派遣する可能性を検討すると述べた。

ルラ大統領は28日、マレーシア訪問を終えてブラジリアに帰国後、すぐに緊急閣議を招集し、ジェラウド・アルクミン副大統領や複数の閣僚と今後の対応を協議した。

今回の事件はリオ史上最も深刻な警察作戦とみなされている。2021年にはリオのジャカレジーニョ地区での突入作戦で28人が死亡しており、さらに遡る1992年にはサンパウロのカランジル刑務所暴動鎮圧で111人の受刑者が命を落としている。

王君宜
王君宜
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