サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子が11月18日にホワイトハウスを訪問する。これは7年ぶりのことであり、アメリカとサウジの関係はこの間、緊張と摩擦の時期を経てきた。しかし、トランプ米大統領による招請は、両国関係の再出発への期待を呼び起こしている。
今回の訪問は公式の国賓訪問ではないが、トランプ大統領は到着式を設けて王太子を出迎える予定で、その後、両首脳による二国間会談と公式晩餐会が行われる見通しである。以下に、会談で取り上げられると見られる主要テーマを示す。
防衛協定と武器取引
サルマン王太子は米サウジ間の防衛協力を主要議題として取り上げる見込みである。
サウジのハーリド・ビン・サルマン国防相は先週、マルコ・ルビオ米国務長官や他の高官と会談した後、Xへの投稿で「サウジと米国の関係を見直し、戦略的協力を強化する方法について議論した」と述べた。
トランプ大統領は今年5月のサウジ訪問時、経済関係を拡大する6000億ドル規模の包括的協定の一環として、1420億ドル規模の武器取引に署名している。さらにホワイトハウス会談を控えた11月17日、トランプ大統領は最新鋭のF-35ステルス戦闘機をサウジに売却する方針を明らかにした。
安全保障協力に関する対話は、単なる武器取引を超える内容となる見通しである。トランプ大統領は9月、カタールが攻撃を受けた場合に米国が防衛を保証するという大統領令を発しており、サウジ側も同様の安全保障上の確約を求める可能性がある。
前駐サウジ米大使マイケル・ラトニー氏は11月17日、カーネギー国際平和基金での討論会で、サウジがF-35を購入することは、国内防衛産業を発展させるという長期目標と矛盾する可能性があると指摘した。ラトニー氏は、サウジがむしろ米国との長期的で安定した安全保障パートナーシップに関心を持っていると述べた。
さらに、トランプ大統領がカタールと同様に大統領令による安全保障協定を提示する可能性があるが、上院批准を経ないそのような協定は、トランプ政権終了後に効力を失う恐れもあると警告した。「彼らが本質的に求めているのは、長期的で予測可能な関係だ」とラトニー氏は語った。
サウジとイスラエルの関係正常化
トランプ大統領は今回の訪問に先立ち、サウジアラビアがアブラハム合意の枠組みの下でイスラエルと国交を正常化することへの期待を表明した。「サウジが近くアブラハム合意に参加することを望んでいる」とトランプ大統領は11月14日、専用機内で記者団に語った。
トランプ政権第1期以降、いくつかのアラブ諸国がこの合意に加わってきたが、サウジの参加は依然として実現していない。イスラエルのネタニヤフ首相は2023年9月の国連演説で、リヤドとの外交的突破口が近いと発言したが、同年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃と、その後のガザ攻撃によって交渉は停滞している。
サウジ政府は、パレスチナ国家樹立への具体的な道筋が明確でない限り、イスラエルとの関係正常化交渉を再開しない方針を繰り返し表明しており、この立場はネタニヤフ首相の方針と対立している。
米国のシンクタンク「中東フォーラム」のグレッグ・ローマン事務局長は、トランプ大統領が武器供与を外交的圧力としてサウジに対しイスラエルとの和解を促すとみている。「大統領が武器売却を進める姿勢は、サウジが少なくとも水面下でアブラハム合意への参加を約束することを条件としているだろう」とローマン氏は語った。
AI分野における経済協力
トランプ大統領は第1期と同様、再任後最初の訪問先としてサウジアラビアを選び、同国との関係を重視する姿勢を示した。
同年5月の訪問時に発表された6000億ドル規模の経済協力は、人工知能(AI)データセンター、エネルギーインフラ、医療など幅広い分野での相互投資を含む。この枠組みを具体化するため、新たな発表が今回の会談で行われる可能性がある。
サウジアラビアは長年にわたり「脱石油」経済の実現を掲げており、AIや先端技術分野への外国投資誘致がその中心的柱となっている。ラトニー氏によると、サウジは米国が最新半導体技術の輸出管理体制を十分に整備していないことに不満を抱いているという。同氏は11月6日、米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」とのインタビューで、「サウジは巨大なAI産業構想を抱いており、米国の大企業によるデータセンター建設投資を待ち望んでいる」と語った。「彼らはAI産業を自国で創出し、その知的基盤も自ら育成したいと考えている」と述べた。
中国との軍事協力
サウジアラビアの対中関係の深化は、アメリカにとって懸念材料となっている。
10月には、中国とサウジが合同海軍演習「ブルーソード2025」を実施した。これは両国にとって3度目の共同軍事演習であり、両国は今後も軍事協力を強化すると表明した。
こうした中、トランプ政権がサウジにF-35を売却すれば、中国共産党がその技術を入手するリスクがあるとの懸念も出ている。米国のシンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」の軍事・政治力センター上級局長ブラッドリー・ボウマン氏は、「最新鋭のF-35を求めながら、中国と軍事訓練を続けるのは望ましい姿ではない」と述べ、サウジがF-35取得を目指すならば中国との軍事協力を中止すべきだと強調した。
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