中共スパイの脅威 MI5が英国議会議員に警告

2025/11/19 更新: 2025/11/19

イギリスの議員らは今週、同国の情報機関MI5から、LinkedIn上での中国の安全保障機関がもたらすスパイの脅威について警告を受けた。

下院議長リンジー・ホイル卿は火曜日(11月18日)、MI5が発した「スパイ警報」について議員に知らせるため書簡を送った。MI5は、中国国家安全省(MSS)がウェストミンスターへの浸透を試みていると述べている。

「彼らの目的は、情報を収集し、長期的な関係の基盤を築くことであり、職業上のネットワーキングサイト、リクルートエージェント、そして彼らの代わりに行動するコンサルタントを利用している」とホイル卿は述べた。

警報では2人の「ヘッドハンター」の名前が挙げられている。アマンダ・チウ氏は、2019年3月以来、北京に拠点を置くBR-YRエグゼクティブサーチの最高経営責任者(CEO)を務めており、香港拠点のシャーリー・シェン氏は10年以上前に中国杭州でInternship Unionを設立した人物だ。MI5は、彼女らが中国MSSの代理としてLinkedInを利用して接触を図っていると述べており、ホイル卿のメールは議員にそのことを知らせた。彼女らのLinkedInプロフィールは火曜日に削除されたようだ。

エポックタイムズはチウ氏およびシェン氏にコメントを求めたが得られなかった。

MI5の警報は、中国の情報機関がどのように対象者をリクルートしようとするかの詳細を示している。「中国国家安全省(MSS)は、戦略的優位性を得るために、イギリスに関する機密情報を収集しようとしている」と述べている。

「最近の、イギリス議会を情報収集の標的とする試みの例に続き、このスパイ警報は、非常に活発な一部の将校グループによる典型的なMSSの手法と方法論を明らかにすることを目的としている」と警報は付け加える。

また、外国の工作員は政治的および経済的情報、特に機密性のある情報を標的とし、イギリスの民主制度に関する情報へ直接アクセスできる人物や、その近しい関係者がMSSにとって優先的な標的と見なされると警告している。

議会スタッフ、シンクタンクの職員、経済学者、そして政府とともに働くその他の人々(議員や貴族院議員も含む)が、その人的ネットワークのために標的にされてきたと警報は述べている。

ホイル卿は「この活動がどのように行われ、どのように防御するかを全員が理解することが極めて重要である。議会を安全に保つ責任は我々全員にある」と述べた。

「貴族院の議長も、同様の内容を貴族院議員のスタッフに書面で伝えている」

イギリスの野党の安全保障相のアリシア・カーンス氏は、MI5の明らかにした内容は「驚くべきことではない」と述べ「中国共産党が我々の主権に干渉し、我々の民主主義と国家を弱体化させようとする行動リストが増え続ける中の最新のものだ」と付け加えた。

中国は「低い閾値」

ダン・ジャービス安全保障担当大臣は火曜日の午後、MI5の警報について議員に説明し、議員のすべてのスタッフや多くの関係者が標的となりうると警告した。

彼は全スタッフに対し「中国は、どの情報を価値があると見なすかの閾値(ある判断を下すための基準点や限界値を指す)が低く、より広い全体像を構築するため断片的な情報を収集する」と認識するよう促した。

ジャービス大臣は、MI5が特定した活動について、「外国勢力による、我々の主権的事柄に自国の利益のため干渉しようとする秘匿かつ計画的な試みを含むものであり、この政府は容認しない」と述べた。

さらに彼は「これは、中国国家関係者による2021年の議会メールを標的としたサイバー作戦、および2022年のクリスティン・リーによる外国干渉の試み、そしてさらに最近の事例など、我々が見てきた活動のパターンに基づくものだ」と述べた。

クリスティン・リーは香港生まれの弁護士・活動家で、イギリスに居住している。リーは中国共産党のためのスパイであるとMI5により主張され、彼女の活動を通じて「イギリスにおける政治的干渉活動」に密かに関与したと告発された。

リーは不正行為を否定し、2023年7月、MI5が彼女に関する情報機関メモを公表したことが人権侵害であると主張して提訴した。2024年12月、3人の判事は彼女の訴えを棄却し、「正当な理由」があったと判断した。

火曜日、ジャービス大臣は、政府は「国家の利益、国民、そして民主的な生活様式を守るため、必要なあらゆる措置を講じる」と述べ、「同盟国やパートナーと協力する」ことも含むとした。

スパイ裁判の崩壊

この警報は、イギリスの主要なスパイ裁判の崩壊に続くものである。この裁判では、2人のイギリス人男性(そのうち1人は議会研究員として働いていた)が中国共産党の工作員に情報を渡したとして告発されていた。

クリストファー・キャッシュ氏とクリストファー・ベリー氏は不正行為を否定した。

キャッシュ氏は保守党のトム・トゥゲンハート議員とカーンスの議会研究員として働き、中国研究グループの元ディレクターであり、ベリー氏は中国で教えていた学者である。

2人は機密保護法違反で告発され、検察は2021〜23年の間に、中国情報機関員と見られる人物に政治的に敏感な情報を渡したと主張した。その人物は中国共産党高官につながりがあるとされている。

議長の警告

イギリス法では、検察はその情報が「敵」に渡されたことを立証しなければならない。王立検察局(CPS)のトップであるスティーブン・パーキンソン氏は、政府が中国を「国家安全保障上の脅威」と認定する声明を得られなかったため、事件は崩壊したと述べた。

裁判中止の余波で、ホイル卿は、この不起訴が議会を外国の干渉に対してより脆弱にすると警告した。彼はロンドンの「タイムズ」紙に「これは外国勢力が議会をスパイしようとする隙を残すことになる。この扉は強固に閉じられねばならない」と述べた。

MI5長官ケン・マッカラム卿も裁判崩壊への不満を示し、中国国家関係者がイギリスにとって日々の国家安全保障上の脅威をもたらしていると主張した。

10月16日、裁判崩壊をめぐる非難の中、政府はマット・コリンズ国家安全保障副補佐官による3つの証言を公表した。その中で彼は、中国共産党の情報機関がイギリスに対して大規模なスパイ活動を行い、「政府関係者、産業界、または中国国家が特に関心を持つ研究に携わる人物」を標的としていると述べた。

中国はMI5の最新の主張を否定し、イギリス政府に対して「厳正な申し入れ」を行ったと大使館の声明は述べている。

大使館はこれらの警告を「完全な捏造で悪意ある中傷」と呼び、情報機関が「中英関係を損なっている」と非難した。

新たな措置

ジャービス大臣は議員に対し、政府が「中国およびより広範な国家主体による脅威を妨害・抑止する」ための「包括的な措置パッケージ」を展開する予定だと述べた。

労働党政権は、代理組織の指定、選挙干渉犯罪の罰則強化、隠れた政治資金対策など、外国干渉に対抗するための新たな手段を検討しているという。

また、政治家が不審な活動を認識しやすくするキャンペーンや、職業ネットワークサイトが外国の工作員を見抜く手助けをする取り組みも開始する。

ジャービス大臣はさらに、政府が重要施設から中国製セキュリティカメラの撤去を完了したとも述べた。

カーンス氏は、イギリスの外国影響力登録制度において中国の分類を変更し、中国の代理人がイギリスでより広範な活動を登録することを義務付けるよう労働党政権に求めた。

2023年8〜9月、イギリス政府は、中国政権が過去5年間で「数千人」の西側関係者を標的にしたと述べた。標的には政治家、軍関係者、特定産業の人々など「要職にある」人物が含まれる。

2023年10月時点で、MI5長官ケン・マッカラム氏は、中国の工作員がLinkedIn上で少なくとも2万人のイギリス人に接触したと述べた。

エポックタイムズはLinkedInにコメントを求めている。

PAメディア(旧プレス・アソシエーション)およびクリス・サマーズが本報告に寄稿した。

Lily Zhou
ロンドンを拠点とするジャーナリストであり、地方紙から全国紙へと活動の場を広げてきた経歴を持つ。主に医療および教育分野を取材対象とし、ワクチンに関する問題や子どもに影響を及ぼす社会的課題に強い関心を寄せている人物である。
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