上海日本人学校に脅迫メッセージ 日本大使館が中国在留邦人に向け注意喚起を発出

2025/11/21 更新: 2025/11/21

日本人学校を標的とした暴力的なメッセージは、最近の攻撃と国家主義的な言説の高まりを受けて、日本政府が国民に警戒を呼びかけている。

中国・上海の日本人学校が暴力的な内容のオンライン脅迫を受け、日本人の安全に対する懸念が新たに高まっている。これを受け、日本大使館は中国在留邦人に向けて警戒レベルを引き上げた注意喚起を発出した。その背景には、両国の外交関係が悪化するなか、中国国内で極端なナショナリズムが高まっている状況がある。

事件の発端は先週、中国で厳しく検閲されているソーシャルメディア「微信(WeChat)」のグループチャットで、あるユーザーが「月曜日に日本人学校へ行くつもりだ」と書き込み、続けて「待ちきれない」と述べ、さらに「殺す、殺す、殺す」と繰り返した投稿のスクリーンショットが拡散したことだった。

本人はその後警察の事情聴取を受け、実行する意図はなかったと主張した。それでも、この脅迫は時期的な偶然と、同校が過去にも安全上の事件に直面してきた経緯から大きな注目を集めた。

上海の日本人学校は、海外にある日本人学校の中でも最大規模の一つで、過去にも中国各地で日本人が襲撃された事件を受けて、警備強化やオンライン授業への切り替えを行ったことがある。

中国の日本国民に警告を発出

11月17日、在北京日本大使館は中国全土の日本人に対し、中国人との接触時には注意を払い、単独での移動を避け、周囲の状況に細心の注意を払うよう呼びかけた。特に子供連れの渡航者に対しては特別な警戒を強調した。

大使館関係者は、この警告の一因には最近の中国国内の日本関連報道があり、それは高まる極端なナショナリスト的言説や、今月初めの高市早苗首相による台湾に関する発言への反応を指していると述べた。

反日的な言説はオンラインで一般的

上海の多くの人にとって、この脅迫メッセージは不穏ではあったが驚きではなかった。

上海で働く徐さん(仮名)は安全上の懸念から実名非公開を条件にエポックタイムズに対し、日本やアメリカに対する敵対的なコメントがオンラインのグループチャットで広く出回っていると語った。

「共産党を批判すると、アカウントはすぐに凍結されるが、反日や反米の発言はそのまま流されている」と徐さんは話す。

上海在住で中国の法制度に詳しい劉さん(仮名)も、同じく実名非公開を条件に、中国当局は扇動的な言論を扱う際に二重基準を適用していると語った。

「もし同じ暴力的な言葉が中国の指導者に向けられて投稿されたら、警察の対応は全く違うものになるだろう」と彼は言った。

日本人学校を標的にした脅しに対する当局の対応は、反日的な言説が長年オンライン上に流通してきた現状を反映している。

極端な民族主義教育が世論を形成

専門家によれば、こうしたネット上の敵対的な口調は、国家主導の極端な民族主義教育と厳格に管理された政治言論が長年続いた結果だという。

中国の情報統治を研究する趙さん(仮名)は、実名非公開の条件でエポックタイムズに対し、極端なナショナリズム的言語は中国の人々が日常的に議論する場に深く根付いていると述べた。

「(中国の)人々が外国の話をするとき、感情的なトーンが自然に出てくる。長年の(極端な民族主義の)教化によって、特定の表現がオンラインでの標準的な話し方になっている」と趙さんは語った。

また、国内の政治への批判はリスクが高く、検閲体制のために多くのユーザーは外国に対してより攻撃的な表現を使うようになっているとも付け加えた。

「人々はどこにレッドラインがあるのか分からないことが多い」と趙さんは言った。

また元上海の教師である顧さん(仮名)は、学生たちはオンラインや歴史の授業で目にするレトリック(実質を伴わない表現上だけの言葉)を模倣することがよくあると語る。

「そのような言葉はネット上に常に出てくるので、生徒たちも繰り返している。歴史の授業では反日・反西洋的テーマが強調されることが多い。私はこのやり方に賛同したことはないが、それは(上の当局)から来ているものだ」と顧さんは述べた。

現実の暴力事件の背景

今回のオンライン脅迫は、中国で日本人を標的にした一連の暴力事件が既に発生している状況下で起きた。6月には、蘇州市の日本人学校付近で日本人の母子が刺され、彼らを守ろうとした中国人職員が死亡した。9月には、深セン市で10歳の日本人男児が登校中に刺され死亡した。

日本の外務省は繰り返し北京に抗議し、日本人の安全確保を求めている。上海の日本人学校はこれまでにも臨時のオンライン授業などの安全対策を取ってきた。

外交緊張の高まり

この脅迫は、両国間の外交的緊張が高まる中で発生した。高市首相は最近の国会答弁で、台湾海峡での衝突は日本にとって「存立危機事態」になり得ると述べ、それに対し中国側が強く反発した。中国外交部はその後、リスクの高まりを理由に日本への渡航を控えるよう国民に勧告した。

日本は複数回抗議しており、大阪の中国総領事が日本の首相の「斬首」を示唆する投稿(後に削除)をXに投稿したことに対しても抗議した。

現在の中国のオンライン言論は、この外交的対立が極端なナショナリズム表現を増幅させ、中国に暮らす日本人に対するリスクを高めていることを示している。

中国関連の話題に焦点を当てる大紀元の寄稿者です。
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