香港大火で146人死亡 親中派議員に不正業者擁護の疑い

2025/12/01 更新: 2025/12/01

香港・宏福苑で発生した大規模火災による死亡者数が146人に達した。高額改修工事の入札を巡る不透明な実態が明らかになる中、親中派議員による不正業者の擁護や、住民からの警告を監督機関が軽視した可能性が浮上している。香港社会では、「一党独裁」が司法の独立性を損ない、「愛国者が香港を統治する」が深刻な腐敗を生んだとの批判が強まっている。

現地時間11月30日午後5時、香港警察は記者会見で、火災による死者数が146人に増加し、そのうち54体は身元確認が必要な状態だと発表した。負傷者は79人、約100人が依然として行方不明となっている。

火災発生当時、宏福苑では外壁改修工事が進められていた。入札に関する情報が相次いで明るみに出るにつれ、今回の火災は自然災害ではなく、官民の癒着や腐敗、監督不備が重なった「人災」であるとの見方が広がっている。

最近、SNS上では「宏業建築は140回もルール違反+最薄・非難燃ネット使用、3億3千万香港ドルの改修契約の打ち切りを強く要求」と題する投稿が拡散されている。

これは2024年2月20日にフェイスブックの「宏福苑住民交流グループ」に投稿されたもので、外壁改修を請け負った宏業建築工程有限公司は、違法行為や不正の前歴が多い業者であることを記している。当初から入札には強い反対意見があり、議論を呼んだものの、民建連系の区議員が主導する業主委員会は同社を選定した。さらに、工事費が市場相場の約2倍に膨らんだとの指摘もある。

投稿者は、屋宇署が公開した資料や罰金・登録取消し記録のほか、現場で撮影された「薄く、透けて見え、防火表示のない」防護ネットの写真を提示し、「このネットは燃えるとすぐ溶ける。団地8棟全体を覆っており、夏場に風が吹けば大惨事になる」と警告していた。

しかし当時の大埔区親中派議員・黄碧嬌氏は2024年2月22日の公開コメントで、「ネットが燃える、宏業に問題があるなどと不安を煽るデマが流れている。こうした噂を信じないでほしい」と反論し、「工事は入札済みで契約は有効。政府部門が監督しており、適正な資材を使用しているので安心してほしい」と強調していた。

それだけに今回の大火災と甚大な被害を受け、入札の背後に業者と政府関係者の癒着や利益供与があったのではないかとの疑念が、さらに強まっている。

Xでは、「香港/中国ニュース」アカウントが、「なぜ最も高額で評価の低い業者が選ばれたのか。法団(所有者による管理組合)顧問の2人が親中派最大政党である民主建港協進連盟の議員で、前法団メンバーとともに工事から利益を得ようとしていたためだ」 と投稿した。

投稿では、住民がテレビ局や汚職捜査機関(ICAC)に汚職疑惑を訴えたにもかかわらず、ICACは実質的に対応しなかったとも指摘している。住民が管理組合の解任を求めた際には、区議員が業者を擁護し、住民側に暴力団による威嚇があったとの証言もある。結果として、住民の反対運動は挫折した。

また、今年半ばに住民が旧法団を解任したものの、当初の契約には法的に解約不能となる条項が盛り込まれており、新法団でも工事契約を撤回できない状態が続いているという。

防護ネットの防火性を巡って労工処や消防処に通報した住民もいたが、「防火性能は必要ない」 との回答があった。

Xユーザー韓連潮さんは、宏福苑の大火は単なる事故ではなく、香港が「党国化」した結果として起きた制度的な人災だと指摘。香港政府が異論の排除やいわゆる「国家安全」の維持に注力する一方、市民の命に関わる公共安全を軽視してきたと批判した。

同氏はさらに、「問題は安価な可燃素材だけではない。社会全体の監視機能が麻痺した結果でもある。かつての『香港基準』は、『上の意向を優先し実務が軽視される』官僚主義と、本土で見られる粗悪な施工慣行に取って代わられた。反対勢力が排除されれば、権力は必ず暴走する」とした。

11月28日、「大埔宏福苑火災関注組」は、

  • 被災者の住居確保と生活再建の支援
  • 独立調査委員会の設置
  • 工事監督制度の見直し
  • 監督不備に関する政府政府関係者の責任追及

の4項目を求める声明を発表し、29日までにネット上で5千件以上の署名が集まった。

しかし同日夜、署名の発起人が警察に「煽動の意図」で拘束された。中国共産党(中共)政権の駐香港国家安全公署も声明を出し、「反中乱港勢力が災害に乗じて社会を分断し、行政長官と特区政府への憎悪を煽っている。災害を利用して香港を混乱させる者は国安法に基づき厳しく処罰される」と表明した。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、事情に詳しい関係者の話として、香港警察の国家安全部門が、火災の徹底調査と責任追及を求めるオンライン署名を立ち上げた男性を拘束し、取り調べたと報じた。

時事評論家の王友群氏も、「香港で百年に一度の大火災が起きた理由」と題するオピニオン記事で、このような悲劇の原因を個別の事象だけで議論していては、対症療法的な対応に終始し、根本的な問題解決につながらないと述べた。

より広い視点で見ると、今回の大火災は、中共が「一国二制度」を形骸化させ、「一党独裁」を香港に持ち込んだことに起因する重大な人災だとの見解を示した。

王氏は、2020年の国家安全法の導入以降、区議会と立法会の選挙制度が変更され、民主派が徹底的に排除され、「愛党者」が議会の大半を占めるようになった現状に言及。本来の「一国二制度」は有名無実化し、香港は事実上「一党独裁」の統治下に置かれているという。

また、「党がすべてを指導する」という原則は、党に絶対的な権力を集中させ、その結果として腐敗を不可避にすると指摘した。

王氏は、今回の火災に対し、香港政府は中共が本土で用いてきた「体制維持を最優先する対応」を採る可能性が高いと指摘。つまり、党に関連する失策や職務怠慢、中共幹部や「愛党派」官僚による不正利益などについては、隠蔽や責任回避が図られ、問題は過小評価され、最終的には責任を負うべき人物が処罰されないまま、別の人物がスケープゴートとして責任を押し付けられる可能性が高いと述べた。

新唐人
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