キヤノン 中国広東省の工場閉鎖 プリンター市場縮小

2025/12/02 更新: 2025/12/02

中国経済の減速と中国共産党(中共)政権による統制強化を背景に、日本の大手メーカーが中国事業を縮小し始めている。映像・情報機器メーカーのキヤノンは今月、中国中山市にある工場を閉鎖し、全従業員との労働契約を解除した。中山工場は中国におけるレーザープリンター生産の中核拠点だったが、閉鎖を機に日本企業の「脱中国」の動きがさらに進むと指摘する。

広東省中山市にある「キヤノン(中山)オフィス機器有限公司」(以下、中山工場)は最近、全従業員に通知を出し、レーザープリンター市場の縮小などを理由に生産・事業活動を終了すると発表した。この通知を受け、11月24~28日、工場は臨時休業に入り、この期間に会社側と労働組合か協議を行った。

12月1日には正式な補償案が提示され、一部従業員は退職証明書の写真をSNSに投稿し、工場で過ごした年月への惜別の思いをつづった。投稿内容によれば、補償は中共政府の労働法に基づく基準を大幅に上回る手厚いものであったという。

労働法を超える補償、「最大限の誠意」の声も

補償案は以下の三つの主要項目で構成。

工齢に応じた「2.5N+1」方式の補償(工齢×2.5か月+1か月分の給与)

在籍年数に関わらず全従業員に給与5か月分の再就職支援金

感謝貢献賞として1万元、新たな旅立ち奮闘賞として5千元の支給

中共の労働法では補償に用いる工齢は最大12年までだが、キヤノンはこれを超える実際の勤務年数に基づいて支払いを行った。中には18年勤務し、総額40万元(約800万円)もの補償を受け取った従業員もいる。

【輝かしい生産実績と市場縮小】
中山工場は2001年6月に設立、複数種のレーザープリンターを生産してきた。2022年4月までの累計生産台数は約1億1千万台に達し、その年の工業産出額は約32億元に上った。

しかし近年、従業員数は減少を続けている。
2022年は3372人
2023年は2031人
2024年は1656人
2025年9月末時点では約1400人
となっている。

一方、中国市場におけるキヤノンのシェアも下がり続けている。
2018年は7.7%
2024年は6.4%
2025年第3四半期時点で3.9%

一方で、世界市場におけるキヤノンのシェアは2024年時点で22.9%と高い水準にあり、中国市場の停滞ぶりが際立っている。

中山工場の関係者によると、製品はすでに中国国内向けではなく、現在は全て輸出向けだという。

公開情報によると、2023年時点でキヤノンは中国本土に6つの製造子会社を有していたが、現在稼働しているのは大連と蘇州にある3拠点のみとなっている。

日本企業の脱中国が続々

キヤノンに限らず、中国で長年操業してきた日本企業の多くが事業を縮小または撤退している。

三菱自動車は湖南省長沙の合弁工場を閉鎖
パナソニックは天津や杭州などで生産ラインを停止
東芝は2018年にテレビブランドを売却し、現在は事実上のOEM(他社ブランドの製品を製造することやその企業)生産のみ。

こうした動きは、中国のビジネス環境が企業にとってリスクを増大させていることを示すものといえる。

中共の政策リスクが企業判断に影響

中国経済の低迷に加え、中共政権による突然の政策変更や規制強化は企業活動の予見可能性を損なっている。複数の専門家は、中国での事業継続は政治的・経済的リスクの両面で負担が重くなっていると指摘する。

今回の中山工場閉鎖は単に一企業の経営判断にとどまらず、日本を含む海外企業が中国市場から戦略的後退を進めている潮流の一端と位置づけられる。

世界のサプライチェーンは今、大きな再編期を迎えており、中国への過度な依存から脱却する動きは今後さらに加速するとみられる。

新唐人
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