小野田紀美科学技術相は5日の記者会見で、南鳥島沖で進められる国産レアアース採掘に向けた深海試験について「我が国の経済安全保障上、極めて重要な取り組みだ」と述べ、研究開発への期待を示した。
事業は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として実施されており、来月には地球深部探査船「ちきゅう」が出航。深さ約6千メートルの海底に揚泥管を接続し、開発機器の動作確認を行う予定だ。
小野田氏は「まずはこの成功に期待をしている。引き続き国産レアアース生産に向けた研究開発を加速すべく政府として必要な支援を行っていく」と表明した。
記者団から長期的支援の見通しを問われると、小野田氏は「社会実装には多くの試験と相応の費用・時間を要する」としつつ、「現時点で具体的な長期予算を示すことはできないが、関係省庁と連携し検討を進める」と説明した。補正予算案には技術実証の加速を目的に164億円を計上している。
また、別の記者からレアアース使用量削減や代替素材の研究開発について質問が出ると、小野田氏は「資源開発だけでなく、供給源多角化、使用量削減、代替、回収リサイクル、備蓄など、多面的な対応が求められる」と指摘。内閣府ではSIPに加え、経済安保上重要技術育成プログラム(Kプロ)で、レアアースを使わない磁石やレアメタル使用量を抑えた超合金の開発を進めていることを明らかにした。
南鳥島沖の海域には世界最大級とされるレアアース泥が存在するとされ、深海資源の国産化は中国依存度の高いレアアース供給構造を見直す鍵として注目されている。
レアアースで対中依存高まり 国産供給目指す
レアアースは電気自動車向け高性能磁石や半導体、風力発電設備など、先端産業を支える不可欠の戦略物資だ。世界市場では中国が依然として採掘・供給の主導権を握り、国際的なサプライチェーンに大きな影響力を持つ。
日本は2010年のいわゆる「レアアース・ショック」を教訓に、輸入先の多角化やリサイクル技術の開発を加速させ、一時は中国依存度を大きく引き下げた。もっとも近年は国際需給の変動や市況の悪化を背景に、中国からの輸入比率が再び高まる局面もみられ、供給リスクが改めて意識されている。
こうした状況を踏まえ、政府はレアアース供給網の強靱化を経済安全保障の柱に据える。豪州など第三国からの調達支援や国内での回収・再利用の促進に加え、南鳥島沖のレアアース泥を活用した国産化に向けた深海試験にも本格的に取り組む。
調達先の拡大からリサイクル技術の高度化、さらには深海資源の開発まで、供給リスクの軽減に向けた多層的な戦略が進みつつある。
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