ロイター通信は15日、米IT大手メタ社が、巨額の広告収入を維持するため、中国から配信される詐欺広告に対して長期間、目をつぶってきたと報じた。
ロイターが入手したメタ社の内部資料によると、同社は昨年だけで、詐欺、ギャンブル、ポルノ関連を含む中国発の広告から30億ドル以上の収益を得ていた。この金額は、中国関連広告収入のおよそ2割にあたる。
背景には、中国共産党(中共)政府の特殊なインターネット規制がある。中国国内ではFacebookやInstagram、WhatsAppの利用が禁止されている一方、中国企業がこれらのプラットフォームを使い、海外向けに広告を出すことは認められている。この結果、メタ社の中国向け広告事業は急成長し、2024年の広告収入は180億ドルを超え、全体の1割以上を占めるまでになった。
一方で、問題は深刻化している。メタ社の社内分析によると、プラットフォーム上の詐欺や規約違反広告の約4分の1が中国に由来するとされる。被害は世界各地に広がり、台湾では偽の健康食品、北米では投資詐欺による被害が確認されている。。
メタ社内でも危機感は共有されていた。2024年4月、社員が経営陣に対し、大規模な詐欺対策を行わなければプラットフォームの信頼性がさらに損なわれると警告する報告書を提出した。
同社は一時的に対策を強化し、反詐欺チームを設置して中国広告の審査を厳格化した。その結果、問題広告の割合は2024年後半に19%から9%まで低下した。
しかし、内部資料によると、メタ社は同年末に方針を転換。ザッカーバーグ最高経営責任者の指示のもと、中国広告の審査業務は停止され、関連する反詐欺担当者は解雇された。さらに、効果が確認されていた一部の対策も理由が示されないまま中止されたという。
ロイターは、詐欺対策と広告収益が対立した場合、メタ社が収益を優先してきた実態が浮き彫りになったと指摘している。
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