日本の防衛 進む国産スタンド・オフ・ミサイル開発

防衛省 12式地対艦誘導弾能力向上型の開発に目途 米国での発射試験成功

2025/12/20 更新: 2025/12/20

防衛省は2025年12月19日、開発中の「12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)」について、米国での発射試験を経て開発完了の目途が得られたと発表した。これに先立つ同年8月の発表では、配備先の具体化や、艦発型・空発型の運用開始時期の前倒しが明らかにされており、日本のスタンド・オフ防衛能力は構築に向けた大きな転換点を迎えている。

米国での発射試験と成果

今回の発表によると、発射試験は米国カリフォルニア州において実施された。2025年10月8日の第1回試験を皮切りに、11月27日の第7回まで計7回にわたる発射が行われ、予定されていた飛しょうが確認された。

試験の主な目的はデータの取得であり、一連の試験を通じて開発完了の目途が立ったことで、本年度中(令和7年度内)の開発完了に向けた計画は着実に進んでいるといえる。

12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)発射試験(出典:防衛装備庁Xアカウント)

スタンド・オフ防衛能力の強化

本事業の背景には、日本への侵攻を試みる部隊を、早期かつ遠方から阻止・排除するという防衛上の喫緊の課題がある。

自衛隊が推進する「スタンド・オフ防衛能力」とは、相手の脅威圏外(射程外)から対処できる能力を指す。12式地対艦誘導弾能力向上型は、既存の誘導弾の射程を大幅に延伸し、敵の攻撃が届かない位置から反撃することを可能にする、国産ミサイルの中心的な存在である。

配備計画の具体化と運用開始の前倒し

2025年8月の発表によれば、防衛省は厳しい安全保障環境に対応するため、配備場所の選定とスケジュールの前倒しを決定している。

1. 地上発射型の配備スケジュール

  • 令和7年度・8年度: 健軍駐屯地(熊本県)の第5地対艦ミサイル連隊へ配備。
  • 令和9年度: 富士駐屯地(静岡県)の特科教導隊へ配備。

2. 艦発型・空発型の運用前倒し 当初、令和10年度以降に計画されていた艦艇発射型および航空機発射型の運用開始は、令和9年度に前倒しされる。

  • 艦発型: 改修後の護衛艦「てるづき」で運用予定。
  • 空発型: 百里基地(茨城県)のF-2能力向上型で運用予定。

また、島嶼防衛用高速滑空弾についても、当初の令和8年度からの配備計画を前倒しし、令和7年度に富士駐屯地の特科教導隊で実践的な運用を開始する方針である。

背景と統合的な抑止力の構築

これらの動向の背景には、侵攻部隊を早期かつ遠方で阻止・排除するという「スタンド・オフ防衛能力」を、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境下でいかに迅速に構築するかという課題がある。

今後は、令和7年度の「12式地対艦誘導弾能力向上型(地発型)」の開発完了を皮切りに、日本の防衛体制は多角的な運用の開始と部隊新編の加速という新たな局面を迎える。これにより陸・海・空の全てのプラットフォームからスタンド・オフ・ミサイルを展開できる統合的な運用体制が整い始める。

また、ミサイル運用の根幹を支える部隊整備も急速に進展する。島嶼防衛用高速滑空弾については、令和7年度に富士駐屯地(静岡県)で実践的な運用を開始した後、令和8年度には北海道の上富良野駐屯地や宮崎県のえびの駐屯地において、これを運用する新部隊が創設される計画だ。これらの取り組みにより、地理的空白を埋める形での全国的な即応態勢の整備が一段と進むことになる。

今回の進展により、日本の防衛は「届かなかった距離」を克服し、周辺環境の変化に対してより柔軟かつ強力な抑止力を保持するフェーズへと移行していくと考えられる。

大紀元エポックタイムズジャパンの速報記者。主に軍事・防衛、安全保障関係を担当。その他、政治・経済・社会など幅広く執筆。
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