アメリカの新たな「国防権限法(NDAA)」には、中国共産党(中共)の脅威に対抗し、台湾防衛を強化する条項が多数盛り込まれている。このほか、国家情報長官に対し、中共高官の資産状況を公開するよう求める条項も含まれており、ネット上で大きな話題となっている。
中共外交部は12月19日、「法案には中国に関する否定的な条項が含まれている」と主張し、アメリカが実施に踏み切れば、中国は報復措置を取ると反発した。評論家らは以前から、中共高官が資産の公開を余儀なくされる事態の危機について指摘している。
中共外交部の強い反発と「報復措置」警告
新華社英語版によると、中共外交部報道官の郭嘉昆は19日午後の定例記者会見で質問に答え、アメリカの「2026会計年度国防権限法案」について「中国の脅威を誇張し、中国の内政に干渉し、中国の主権、安全、発展利益を損なうものだ」と述べた。中国側は強い不満と断固たる反対を表明し、すでに何度も米側に厳正な抗議を行ったと強調した。
この日の質問を行った中共中央テレビ(CCTV)の記者は、アメリカの新たな国防権限法案に含まれる対中関連条項について「中国に関する否定的な内容を含む」と表現するにとどまり、中共高層の資産公開が対象となっている点には言及を避けた。
郭嘉昆は「米側は法案に含まれる対中否定的条項を実施してはならず、その負の影響を取り除くべきだ」と述べ、さらに「もし米側が独断専行するなら、中国は断固かつ有力な措置を取る」と警告した。
中共高官資産の公開要求 対象範囲と調査内容
トランプ大統領は18日、上下両院を通過した「2026会計年度国防権限法(National Defense Authorization Act, NDAA)」に署名し、総額9010億ドル(約135兆1500億円)に上る軍事・国家安全保障関連事業の権限を正式に承認した。ホワイトハウスは、この毎年恒例の法案が大統領の「力による平和維持」戦略を推進し、米本土防衛と軍需産業基盤を強化するものだと説明している。
注目すべきは、この改定法案が米国家情報長官に対し、中国共産党指導部の財産状況に関する報告をウェブサイト上で公開し、また議会の関連委員会に提出するよう求めている点である。報告内容には個人資産、金融資産、商業的利益の評価が含まれ、対象は中共党首、中央政治局常務委員、中央政治局委員らを網羅している。
この国防権限法案の重点項目には、中共の脅威に対抗すること、インド太平洋地域での任務の成功確保、同盟国やパートナー国の支援などが含まれている。また、台湾防衛の強化を求める規定や「台湾差別撤廃法案(Taiwan Non-Discrimination Act)」も併せて盛り込まれ、台湾の国際通貨基金(IMF)加盟を支持する内容となっている。
これに先立ち、米国家情報長官が中共上層部の資産状況を公開するよう求たとの報道はSNS(X)上で大きな反響を呼んだ。
SNSでの反響 「アメリカが中共の紀律委員会に」
投稿欄には次のようなコメントが並んだ――
「中共の官僚は絶対に自ら資産を公表しないが、今回はアメリカが代わりにやってくれた。これまで最も秘密にされてきた一族の財産が、いまや『反腐敗のダモクレスの剣(常に身に迫る一触即発の危険な状態のこと・紀元前4世紀初頭のこと、古代ギリシアの植民都市シラクサの僭主ディオニシオス2世⦅B.C.397年~B.C.343年⦆の廷臣ダモクレス⦅Damocles⦆が王者の幸福をほめそやしたので、王がある宴席でダモクレスを王座につかせ、その頭上に髪の毛1本で抜き身の剣を吊るし、王者には常に危険が付きまとっていることを悟らせたという故事)』として彼らの頭上に垂れ下がっている」
「まず公表してから、次に凍結だ」
「これは国内外を問わず注目と期待を集める唯一の法案かもしれない。『小粉紅(中国の親共支持者)』と『反体制派』が初めて同じ声で称賛した出来事でもある」
「台湾に攻撃を仕掛けてみろ。権力者たちは止めに入り、内紛が激化して中共崩壊の速度がさらに速まるだろう」
「アメリカはまるで中共の紀律委員会になったようだ」
「すべてはすでに始まっている。中共支配の『延長戦のごみ時間』も、そろそろ終わりを迎える」
資産公開が中共体制に与える打撃とその背景
評論家の唐浩氏は番組『十字路口』で次のように述べた。アメリカの国防権限法によれば、調査対象となる中共高官の財産には「彼らが直接または間接的に保有・支配するあらゆる法人および金融資産」が含まれる。つまり、中国本土・香港・マカオで保有する不動産のほか、海外の不動産、高額個人資産、国外の商業持株、投資、金融口座などが対象となる。また、法案は「これらの資産の所有権を隠すために使われる金融代理人、事業パートナー、その他の組織」を特定するよう求めており、いわゆる「隠れた代理人」や「名義人」の存在も明らかにされる見通しである。
唐氏は、この報告書の多くは機密扱いを必要とせず、公開可能な内容だと指摘した。中共上層部はすでに背筋に冷たいものを感じ始めているという。
さらに同氏は、アメリカがこの法案を制定した背景について説明した。それによると、中共高官による資産の越境移転は違法なマネーロンダリングや金融犯罪に関係する恐れがあり、アメリカの金融秩序を脅かす可能性があるためである。加えて、対台湾武力行使を抑止する圧力カードとしての狙いもあり、高官の腐敗を公にすることで中国国民の覚醒を促し、党幹部の移民ルートと海外逃避の道を断つ意図もあるという。
主要な民主国家では上級官僚に資産の公開を義務づける法制度を整備しているが、中共はこれまで一度も官僚の資産を公表したことがない。
この点について唐氏は三つの理由を挙げた。第一に、巨額の財産を公表すれば民衆の中で「党への憎悪」や「党への不信」が広がり、政権の安定が揺らぐ恐れがあること。第二に、個人資産が露見すれば政治的な敵対勢力による攻撃の口実になること。第三に、海外勢力に党幹部の個人情報を知られたくないという事情である。
現在、世界中がトランプ政権による中共高層の財産と腐敗の実態解明に期待を寄せている。唐氏は「これは中共に打撃を与え、中国人民を束縛から解き放つ義挙(ぎきょ・正義のために起こす企てや行動)となるだろう」と述べた。
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