第2期トランプ政権が進める「常識の革命」 

2025/12/26 更新: 2025/12/26

トランプ米大統領は2期目の政権発足以来、制度や手続き、権力構造の要所に直接メスを入れ、アメリカ社会に深く根を張る極左進歩主義の牙城に対して強力な攻勢をかけてきた。「常識による統治」を掲げ、アメリカを伝統へと回帰させ、信仰と価値観の復興を推し進めるこの動きは、まさに「常識の革命」と言える。

政府機関やメディア、大学、博物館を問わず、トランプ氏はあらゆる分野で攻勢に出ており、すでに目に見える成果を挙げている。

3月4日の初の議会演説で、トランプ氏は一連の政策を「常識の革命」と位置づけ、学校から批判的人種理論を一掃するとともに、性別は男性と女性の二つのみであると明言した。

ヘリテージ財団のマイク・ゴンザレス上級研究員は、第2期トランプ政権について、1933年のルーズベルト・ニューディール以来初めての本格的な権力交代であり、国家の根本的転換を目指す歴史的試みだと評価している。

トランプ政権による米国伝統復興の主なタイムライン

トランプ政権と「アメリカを再び偉大に(MAGA)」運動の重要な目標の一つは、文化戦争に勝利することである。就任後数か月間、トランプ氏は連邦政府、軍、大学、企業に巣食う極左思想を一掃するため、矢継ぎ早に大統領令を発動した。

1月20日

・第14148号大統領令
 バイデン政権のDEI(多様性、公平性、包括性)国境開放、過激な気候政策に関連する命令を撤回。DEIを「違法かつ不道徳な差別事業」「公的資源の浪費」と断じた。

・第14151号大統領令
 DEI、DEIAおよび「環境正義」に関するすべての部署と職位を廃止したほか、「公平行動計画」や「公平」を掲げた各種施策・プロジェクト、「公平」に関連する補助金や契約もすべて終了した。

さらに、政府職員、連邦契約業者、補助金受給者に課されていたDEIやDEIAに関する業績評価要件も撤廃され、連邦政府から「多様性・公平性・包括性」を名目とした制度は一掃された。

政府は各省庁に対し、DEI関連組織への調査を命じた。対象には病院、大学、連邦政府の請負業者、さらにメディア企業も含まれる。また、米政府と契約を結ぶ外国企業にもこの命令を遵守するよう求めている。

・第14172号大統領令
 アメリカの偉大な功績を顕彰する名称を復活させ、北米最高峰の名称を第25代大統領ウィリアム・マッキンリーにちなんだ「マッキンリー山」に戻すとともに、従来の「メキシコ湾」を「アメリカ湾」と改称した。

1月21日

・第14173号大統領令
 違法な差別を終わらせ、能力主義に基づく機会を回復する。

1月24日

・第14182号大統領令
 ハイド修正条項を実施し、連邦政府の資金が選択的中絶に充てられることを禁止し、納税者の資金が中絶に使われるのを防ぐ。

1月28日

・第14187号大統領令
 子どもを化学的・外科的処置から守る。未成年者の性別移行を目的としたホルモン療法、思春期抑制剤の処方、性別適合手術などに対し、資金提供・支援・促進を一切行わない。

1月29日

・第14188号大統領令
 大学や学校で深刻化する反ユダヤ主義への対策を強化する。

・第14190号大統領令
 小中高校教育における急進的思想の刷り込みを終結させると宣言。反米的で、破壊的かつ有害な虚偽のイデオロギーを教え込むことを禁止する。

・第14189号大統領令
 アメリカ建国250周年事業を開始し、「アメリカ英雄国家庭園」の建設を進め、記念碑や歴史的モニュメントを破壊から守る。

・第14191号大統領令
 家庭の教育の自由と機会を拡大し、教育における選択権を親に戻す。

2月5日

・第14201号大統領令
 男性を女子スポーツ競技から排除する。

2月6日

・第14202号大統領令
 アメリカ社会に根付く反キリスト教的偏見を是正する。

2月7日

・第14205号大統領令
 ホワイトハウス信仰局を設立する。

2月9日

・政策措置
 ケネディ・センターの複数の理事を解任し、トランプ大統領自らが会長に就任。センターで行われていたドラァグショーを終了させた。

2月10日

・第14207号大統領令
 連邦行政学院を廃止する。

2月19日

・第14217号大統領令
 肥大化した連邦官僚機構の縮小に着手する。

3月1日

・第14224号大統領令
 英語をアメリカの公用語に指定する。

3月10日

・政府通達
 アイビーリーグを含む60の大学に書簡を送り、公民権法第6章に違反する差別行為について是正を求め、従わない場合は連邦政府が法執行措置を取る可能性があると警告した。

3月14日

・第14236号大統領令
 有害と判断された78件の大統領令および覚書を追加で撤回する。

・第14238号大統領令
 連邦官僚機構の整理を継続し、米グローバルメディア局、スミソニアン協会ウッドロウ・ウィルソン国際学者センター、博物館・図書館サービス協会、アメリカ省庁横断型ホームレス対策評議会、コミュニティ開発金融機関基金、少数民族企業開発局など、7つの連邦機関を廃止対象とする。

3月20日

・第14242号大統領令
 教育省の閉鎖を提起し、権限を各州に戻すことで、保護者・州政府・地域社会の権利を回復する。

3月27日

・第14252号大統領令
 ワシントンD.C.を「安全で美しい都市」にする施策を推進する。

・第14253号大統領令
 史実と理性に基づくアメリカの歴史叙述を再構築し、スミソニアン協会およびその管轄下の国立公園・記念施設から、不適切で分断的、反米的なイデオロギーを排除する。

4月14日以降

・対ハーバード大学措置
 連邦補助金および契約の凍結、免税資格の撤回、外国人留学生の受け入れ停止を実施。理由は学内での暴力助長、反ユダヤ主義、中国共産党との協力関係とされた。

4月23日

・第14279号大統領令
 認証制度を改革し、高等教育の質を高める。DEIという差別的イデオロギーの強制と基準乱用を是正する。

・第14280号大統領令
 常識に基づく学校規律方針を復活させる。

・第14281号大統領令
 機会の平等と能力本位の制度を回復し、結果の平等を押し付ける差別的制度を廃止。能力主義と機会均等というアメリカン・ドリームの基礎を守る。

5月1日

・第14291号大統領令
 宗教自由委員会を設立し、アメリカにおける宗教の自由の伝統を守る。礼拝施設への攻撃、宗教団体への銀行サービス停止、宗教学校への就学妨害、宗教機関への資金供与や税制優遇の剥奪、政府事業からの宗教団体排除などに対処する。

5月23日

・第14303号大統領令
 科学の「黄金標準」を回復し、科学の計画・実施・発信の各段階に入り込んでいたDEI要素を排除する。

6月

・議会措置
 米下院は、公共放送公社(CPB)に割り当てられていた11億ドル(約1720億円)の補助金を撤回した。CPBはNPRやPBSなどの公共放送局に納税者の資金を配分する非営利組織であり、この決定は画期的とされた。

7月1日以降

・USAID閉鎖措置
 トランプ政権は就任直後から米国際開発庁(USAID)の見直しに着手し、7月1日から対外援助業務を正式に停止した。USAIDは反米思想の拡散や、世界的なDEI推進の拠点と見なされていた。

7月23日

・第14319号大統領令
 連邦政府に「覚醒AI」が導入されるのを防止する。

8月25日

・第14341号大統領令
 星条旗を焼く行為を処罰の対象とする。

8月28日

・第14344号大統領令
 アメリカの公共建築を古代ギリシャ・ローマの古典建築様式を手本として再建し、連邦建築に再び威厳と美を取り戻す。

9月10日

アメリカの若手保守団体「ターニング・ポイントUSA」の創設者チャーリー・カーク氏が暗殺された。カーク氏は18歳の頃から全米の大学キャンパスで保守主義の理念を広め、多くの若者や大人を神、家庭、そして常識へと立ち返らせてきた。こうした活動の影響で、トランプ大統領は18〜29歳の年齢層における支持率を大きく伸ばしていた。

カーク氏の死去を受け、トランプ氏は全米で半旗掲揚を命じ、カーク氏に「大統領自由勲章」を授与した。全米各地で大規模な追悼行事が行われ、草の根の保守主義運動の広がりを後押しする結果となった。

9月30日

・国防省声明
ヘグセス国防長官は、米軍から社会正義や政治的正しさといった有害なイデオロギーを一掃したと発表した。「アイデンティティ月間は廃止し、DEI事務所も設けない。男性がスカートを履くこともなく、気候変動崇拝や分断、性別幻想、無意味な施策も終わらせる」と述べた。

これに先立ち、ヘグセス氏は少なくとも20人以上の、いわゆる「覚醒」派とされる将軍や提督を解任、または実権のない立場に退かせていた。

12月4日

トランプ政権は「アメリカ国家安全戦略」を発表した。文書は、アメリカが能力本位の文化を再構築し、いわゆるDEI(多様性・公平性・包括性)や制度を損ない発展を阻害する差別的かつ反競争的行為を一掃していくと明記している。

また、「アメリカの比類なきソフトパワーを維持すること」「国家が生まれながらに備える偉大さと高尚さを深く信じること」を強調した。さらに「歴史の栄光と英雄の事績を尊重し、新たな黄金時代を見据えたアメリカを築く」と掲げ、その実現には「健全な子どもを育てるため、堅固な伝統的家庭がこれまで以上に必要である」と指摘している。

宋唐