半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、最先端の2ナノメートル(2nm)半導体の量産を開始した。2025年第4四半期に量産段階へ移行したことで、TSMCは先端ロジック半導体における技術的主導権を一段と固め、ポストAI時代を見据えた半導体競争の主戦場を明確にした形だ。
今回量産が始まった2nmプロセス(N2)は、高雄市のFab22を中核拠点とし、TSMCとして初めて第1世代のナノシートトランジスタ構造を全面的に採用している。従来の微細化延長線上ではなく、トランジスタ構造そのものを刷新することで、性能向上と消費電力削減を同時に達成する設計となった。2nmは単なる寸法競争ではなく、電力制約がボトルネックとなりつつあるAI・HPC時代への解答として位置づけられている。
現在スマートフォン、AI、そしてハイパフォーマンス・コンピューティングなどの分野で2nm世代の半導体の技術はなくてはならないものとなっている。特にスマートフォンでは、クラウド依存を減らし端末内でAI処理を完結させる「オンデバイスAI」の高度化が進んでおり、データセンター向けでは、演算性能そのものよりも電力効率が競争力を左右する局面に入っている。2nmの省電力性は生成AIや大規模学習用途で不可欠な基盤となる。
こうした中、日本も2nm世代を巡る競争に再参入を図っている。その中核が、北海道千歳市を拠点とするラピダスである。ラピダスは2025年4月にパイロットラインを稼働させ、2027年度中の量産開始を目標に掲げる。
日本国内では、自動車産業も2nm世代の重要な受け皿となる。トヨタ、日産、ホンダなどが参加する技術研究組合ASRAは、自動車向け最先端半導体開発を進めており、2nmクラスの高性能・低消費電力半導体は不可欠な要素である。
また、2nm世代のCPUと光伝送を組み合わせ、より高効率で高速なコンピューティングを実現する次世代技術、光電融合技術の研究も進行しており、データセンターの抜本的な省エネ化を視野に入れた取り組みが始まっている。
2nmを巡る競争は、すでにその先を見据えた国家・企業戦略の段階へと移行している。
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